高校野球
2023/08/10 21:15

北海最強の〝ライパチ〟小保内 公式戦初アーチ&延長の同点打で勝利導く【夏の甲子園】

七回無死一塁、北海・小保内が左越え2点本塁打を放つ(撮影・宮永春希)

■全国高校野球選手権第5日(8月10日、阪神甲子園球場)
▽1回戦 北海9-8明豊(大分)※延長十回タイブレーク

途中出場で2安打3打点

 2年ぶり全国最多40度目出場の北海が、延長十回タイブレークの末に、明豊(大分)を9-8で下し、準優勝した2016年以来の初戦突破を果たした。4点リードされた七回に途中出場した8番・小保内貴堂右翼手(3年)が公式戦初アーチで反撃ののろしを上げると、1点ビハインドの延長十回1死一、三塁から右越えに同点適時打を放つなど2安打3打点。「北海最強のライパチ」が甲子園でも躍動した。8日に甲子園初勝利を収めたクラークとの南北アベック勝利は、1994年夏の北海と砂川北以来29年ぶり。北海は14日の2回戦で、16強入りを懸けて浜松開誠館(静岡)と対戦する。

スタメン落ちの悔しさバットに乗せ「夢だった」甲子園で初本塁打

 南大会準決勝と決勝で先発出場した小保内が、スタメン落ちの悔しさをバットに乗せた。七回無死一塁で迎えた甲子園初打席の初球。得意の内角高め直球に狙いをすまし、打球は左翼ポール際へ。「すごく嬉しいです。打った瞬間は『あっ、切れたか』と思ったんですけど、風もあって良い形で入ってくれた。甲子園で活躍するのが自分の夢だったのでホームランは信じられない。公式戦では(本塁打が)なかったので、それが甲子園になって良かったです」。伏兵の高校初アーチが、チームに勇気と勢いをもたらした。
 

七回無死一塁、左越え2点本塁打を放った北海・小保内

 

七回途中の守備から出場して右邪飛を好捕

 守備からリズムをつくった。平川敦監督(52)から「小保内、キャッチボール」と声が掛かり「出番が来たな」と、七回の4失点直後に右翼の守備に入った。すると右翼ファウルゾーンへの飛球を華麗なスライディングキャッチ。「練習通りやってきたことがそのまま出たので、それがただ甲子園だっただけ。ファインプレーというか、いつも通りのプレー。あのプレーで一気に気が抜けたというか、楽になった」。逆転劇への伏線となった。
 

七回1死三塁、フェンス際に飛んだ右邪飛を捕球する北海・小保内

 

九回2死からドラマは生まれる

 野球界の格言通り、九回2死からドラマが生まれた。1番・片岡誠亮中堅手(2年)が四球で出塁すると、この夏初スタメンの2番・谷川凌駕左翼手(2年)と、主将の今北孝晟二塁手(3年)の連続安打で1点差。さらに2死満塁から6番・幌村魅影遊撃手(2年)が押し出し四球を選び、この試合三度同点に。勝負の行方は延長タイブレークへと持ち込まれた。

延長十回に同点適時打「たまたまポイントを近くで待てて打てた」

 延長十回表を熊谷陽輝投手(3年)が1失点で切り抜けると、1死一、二塁で打席には小保内。お膳立てはできあがった。1-1からの3球目。「ホームランを打つバッターではない。間を抜くことをずっと意識して、たまたまポイントを近くで待てて打てたんで良かった」と、右越えの適時打でまたまた同点。劇的サヨナラ勝利を演出した。
 

延長十回1死一、二塁、北海・小保内が右翼越えに同点の適時打を放つ

 

 平川敦監督(52)は「結果が出ない時もありましたけど、最後の最後まで辛抱強く、我慢強く、一生懸命練習していた子だったので、本当に最後に結果を残してくれて嬉しいです」と目を細めた。

小学生時代の2017年に東16丁目フリッパーズで全国優勝

 強心臓は持って生まれた〝ギフト〟だ。2017年に少年野球の東16丁目フリッパーズで長内陽大投手(3年)とともに学童野球の日本一を経験した。中学硬式の札幌西シニアでも3年春の全国大会に出場。「やってやるぞっていう思いが強くて、大舞台では緊張がいつもよりもない。やっぱそこが良いところ」と胸を張った。

 昨年秋から平川監督の指示でバットは右手だけ素手で握っている。「押し手の感覚を残すために。自分は右手の方が強くて、返ってしまうことが多かったんですけど、右手を少し緩くして、返らないように」。さらに他の選手が打撃練習を10球行うところを小保内はあえて半分の5球に設定。自分なりに工夫して1球への執念と勝負強さを磨いてきた。

もう一度、日本一に挑戦 そのための1勝

 小保内が中学時代にプレーした札幌西シニアの監督は、北海1年時に二塁手で甲子園に出場した田辺翼さん(40)。小保内が中学3年時には、同シニアの先輩で北海でも2016年の甲子園準優勝メンバーの佐藤佑樹さんがコーチをしていた。「その時は、そんなことができるっていうのは思っていなかった。ここでまず1勝できて、それが解けたというか、もう一回、(高校でも)日本一になれるぞ、そのための1勝。そういう思いになりました。次も勝つしかない。優勝まで、16年を超えられるように、チームのミーティングでも毎回確認している」。また一つ、ギリギリの接戦を勝ち上がり、自信を付けた。恐怖の下位打線をけん引し、灼熱のトーナメントを駆け上がる。

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