芸能文化
2023/08/15 19:00

《人ほっとコーナー》木下大サーカス団で唯一の道産子・竹内玲奈さん(29)

木下大サーカス団で唯一の道産子・竹内玲奈さん(撮影・小田岳史)

今公演を最後に退団「けがなく安全に終わりたい」

 現在、札幌公演を行っている木下大サーカス団員の中で唯一の道産子である竹内玲奈さん(29)は、竹渡りなどのパフォーマンスで会場を盛り上げている。竹内さんはこの公演を最後に退団する。「けがなく安全に終わりたいのが一番。まだ実感はないけど、寂しくなると思います」と後悔のないように最後まで全力を尽くす。

『玲奈、募集しているよ』『じゃあ、行ってくるね!』で入団

 高校3年の夏、木下大サーカスを鑑賞し、竹内さんの中で衝撃が走った。元々は理学療法士を志していたが「ここで働きたい」と夢は変わった。「入口のところに新人募集という看板があって、帰る時にそれを母親が見つけて『玲奈、募集しているよ』『じゃあ、行ってくるね!』みたいな感じで、たまたま歩いていたスタッフさんに『入りたいんですけど』と声を掛けました」と入団のきっかけを明かした。「仕組みもよくわかってなくて、舞台と音響、照明と営業っていう部署があることもよくわかってなくて、気が付いたら舞台の方に入ってました」と笑う。

「緊張と照明の光、あの感じは覚えてます」

 最初に取り組んだのは当時必修でもあった吊りロープ。「自分がデビューすると思っていなかったので、最初はすごい緊張しましたね。緊張と照明の光でお客さんの顔とかは見えなかったんですけど、あの感じは覚えてます」。その後、現在も行っている日本の伝統芸・竹渡りに挑戦。「前にやられていた方が引退したタイミングで引き継ぎました」。約3メートル上の高さで、揺れる一本の竹の上を渡っていく繊細な演目は常にけがと隣り合わせ。過去にも落下して骨折を3度経験している。「落ち方次第では折れるかもしれないって思っちゃうと、いつも通りできなかったりもします」と、今でも怖さと戦いながらパフォーマンスに臨んでいる。

「最初はライオンの鳴き声がうるさくて眠れなかった」

 木下大サーカスは団員が自ら設営なども行う。2週間前ぐらいに公演地に入り10日ほどで会場を組み立て本番を迎える。「設営が終わったら、もう初日って感じなので、バタバタのままリハーサルに入ります。結構ハードです」と竹内さん。千秋楽が終わると、その日のうちから解体作業が始まり、翌日には次の公演地に移動する。その繰り返しの生活を送っている。

 サーカスならではの生活の苦労もある。「最初の方はライオンの鳴き声がうるさくて、夜中に眠れないとかありました」と入団当時を振り返った。場所によってはコンビニがないところもあり「札幌は近くにゼビオとかマックとかいろいろある。スーパーもある」と白い歯を見せた。

「次は海外のいろんなところを回ってみたい」

 退団後は海外を回ることを考えている。「日本全国を回ってすごい楽しかったので、次は海外のいろんなところを回ってみたい」と目を輝かせる。特に行きたい国はドイツ。「ミュンヘン・クリスマス市に行った時からミュンヘンに行きたいと思ってました。クリスマスが大好きっていうだけの理由でずっと行きたいです。あとは海がめちゃめちゃ好きなのでニュージーランドとかに行きたいです」と思いを馳せる。

「『会って良かったな』って思われるような人間になりたい」

 11年間で培った貴重な経験は宝物だ。「3カ月ごとに住む場所もアルバイトさんも変わる。いろんな人と関わってきてすごく視野が広くなりました。心を広く持って、これから会う人たちに『会って良かったな』って思われるような人間になりたいです」。感謝の気持ちも込めて、地元・札幌で最高のフィナーレを飾る。

 


■プロフィール 竹内玲奈(たけうち・れな) 1994年8月13日、札幌市生まれ。石狩南高でハンドボール部に所属。同校卒業後、木下大サーカスに入団。吊りロープなどの演目を経て、現在は日本の伝統芸・竹渡りを披露している。家族構成は両親と妹。

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