高校野球
2023/05/14 19:00

【少年野球全国Vナイン 高校最後の夏へ】㊦ 東16丁目フリッパーズで全国優勝した選手たち

㊨㊤札幌大谷・佐々木㊨㊦札幌光星・岡田㊧㊦札幌日大・斉藤

 2017年夏、高円宮賜杯全日本学童軟式野球大会マクドナルドトーナメントで北海道勢初の優勝旗を手にした札幌・東16丁目フリッパーズ。当時のV戦士が高校最後の年を迎えた。その意気込みを伝える最終回。

昨夏、甲子園を経験した佐々木(札幌大谷)

 昨夏、一足先に甲子園の土を踏んだのが、札幌大谷の佐々木涼斗捕手だ。下級生ながら主軸の5番を任され、1回戦の二松学舎戦では初安打も記録したが、サヨナラ負けを喫し大粒の涙を流した。リベンジの夏へ今年も扇の要としてマスクをかぶる。5月11日の今季初戦では2本塁打9打点と持ち前の打力を発揮。「まずは全道行って、全道にたくさんいいピッチャーいると思うんで、そういうピッチャーと対戦して、当然全道一にもなる」と力を込めた。

 全国学童では6試合、全て「4番・捕手」でフル出場し、打率は6割超えをマークした。「2回戦、3回戦と2試合連続ホームランを打ってるので、個人的には全国の舞台で打てたのはすごい覚えてます」。特に2回戦の奈良・常磐ヤンチャーズ戦は2打席連続アーチを放つなど当時から打力は抜きでていた。

 フリッパーズには小学1年の秋から加入した〝生え抜き〟だ。元々は内野手だったが、同3年の時に「自分はキャッチャー結構好きで」と転向した。チームでは「基本を大事にしろっていうことを特に教わった。野球全部に通用する。あれがあったから今がある」。練習は月曜以外、週に6回。「なかなか小学生ではハードなスケジュールだったけど、やっぱり練習しないとやっぱうまくならないことも学びました」。中学硬式野球の札幌新琴似シニアでも主砲を務め、3年時にはコロナ禍で8月に開催された全国選抜で8強入りした。

 この夏は前年王者として追いかけられる立場だ。佐々木が今季初戦を戦った翌日、フリッパーズでバッテリーを組んでいた北海・長内陽大投手が負けじと2本塁打。「速報とか見て、すごいなと思います」。元チームメイトの活躍は自然と目に入ってくるが「どんな相手でも負けたくないっていう気持ちが一番強い。日本一を当然目指しているけど、先走んないで、目の前の敵をまず倒すことをテーマに頑張ってます」。一冬越えて、さらに成長した長距離砲が強力打線をけん引する。

「特別な年、自分たちが一番チャンスがある」斉藤(札幌日大高)

 巻き返しを期すのが、札幌日大高の斉藤隼人一塁手と札幌光星の岡田晴内野手だ。斉藤は昨秋の全道準々決勝で「3番・一塁」で先発も、北海に0-7でコールド負け。「全く歯が立たない感じだった。それを踏まえてとにかくバットを振り込んだ。体も少し大きくなって、振る力はどんどんついてきた」。春先に下半身のコンディション不良で出遅れたが、5月14日の札幌支部準決勝で二塁打を含む2安打をマーク。リベンジの土台はできあがった。

 全国学童では、2枚看板の一人として全6試合に登板。「やっぱり決勝戦が一番印象に残ってます。本当は本格派って感じで上から投げてたけど、疲れからだんだんスリークォーターみたいになってきた」。八回タイブレーク、116球を最後まで投げ抜き、快挙達成の輪の中心でナンバーワンポーズを掲げた。「そこだけを目指してやってきたので、本当にうれしかった」。斉藤も佐々木と同様、札幌新琴似シニアでは主力として活躍した。

 フリッパーズには小学5年で入団。笹谷武士監督(44)から「日本一を目指したことあるかみたいな問いを受けて、そういうとこに来たんだなと。小学生の段階で全国大会で優勝するっていうイメージを全く持ってなくて」。その年は、登録が間に合わなかったが、南北海道大会優勝の金メダルを笹谷監督からプレゼントされ「来年はおまえが取るんだぞみたいな感じで言ってもらったのは覚えてます」。その言葉を忘れず必死に練習に食らいつき、日本一達成の原動力となった。

 今夏、南北北海道大会の準決勝以降は、同校が所在する、北広島市のエスコンフィールド北海道で開催される。「自分自身も最後の年ですし、本当に北広島でもり盛り上げていきたい。特別な年、自分たちが一番チャンスがあると思ってがんばってます」。同校初の夏の甲子園を決めるには最高の舞台を見据える。

「バッティングの波を少なくしたい」岡田(札幌光星)

 岡田は昨夏と秋は三塁でレギュラーだったが、この春2試合を終えて、まだ出番はない。「自分たちの代は全道に出たことないので、絶対この支部を突破して全道の相手と戦って夏につなげたい。持ち味は守備。サードで確実に取れるような守備を心がけている。バッティングにちょっと波があるので、その波を少なくしてアピールしたい」と出場機会を待つ。

 全国学童では主に守備固め。1回戦の長崎・波佐見鴻ノ巣戦に三塁で途中出場。六回1死一塁で三ゴロ併殺を記録した。「結構、ファインプレーみたいな感じで取れて。初めて監督に褒められた」。主にベンチだったが「初戦でいい勝ち方ができた。チームワークが試合重ねるごとに良くなっていったんで優勝する雰囲気はありました。負けてる状況でも声は途切れなかった。負けるような雰囲気じゃなかった」とベンチから優勝の瞬間を見届けた。

 「練習からレベルの高いチームでやれたのは、自分にとってもその分うまくなれたかな」と岡田。ただ大会後、一時チーム内の気持ちが緩み、その後の大会で負けたことがあった。そこで笹谷監督から「日本一になった自覚と責任持て」とゲキが飛んだ。「技術的なことはもちろん、精神的にも学んだ」。中学では札幌手稲ボーイズで主将も務め、チームのまとめ役に成長した。

 当時のメンバーの佐々木や按田とは、通学の地下鉄で一緒になり世間話することもあるそうだが、大会となれば倒すべき相手だ。「甲子園をちっちゃい頃から見てたんで、その甲子園に今の仲間で出たい」。同じ札幌支部でプレーする以上、対戦は避けては通れない。たった1枚の切符を目指し、少年野球全国Vナインの高校最後の夏が、まもなく幕を開ける。


◆東16丁目フリッパーズの全国優勝メンバー(6年のみ)
番 選 手 名(チーム)
① 長内 陽大(北 海-札幌真駒内シニア)
② 佐々木涼斗(札幌大谷-札幌新琴似シニア)
③ 斉藤 隼人(札幌日大高-札幌新琴似シニア)
④ 按田 成琉(東海大札幌高-高知・明徳義塾中)
⑤ 小保内貴堂(北 海-札幌西シニア)
⑦ 大塚 渉夢(東海大札幌高-札幌新琴似シニア)
⑧ 坂本 大河(札幌南-札幌西シニア)
⑨ 植村隆之助(札幌第一-札幌栄シニア)
⑩ 福岡 正規(高知・明徳義塾-同中)
⑪ 園部  新(札幌白石-札幌栄シニア)
⑫ 岡田  晴(札幌光星-札幌手稲ボーイズ)
⑳ 市村 颯唯(道科学大高-札幌真駒内シニア)

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