Vリーグ
2023/04/25 12:00

【ヴォレアスV1昇格の歩み】下 チームの底上げと絶対的エース・張育陞の存在

苦しかったシーズン序盤

 前年王者として迎えた2022―23年シーズンは25勝2敗と圧倒。前評判通りの実力を示してV2連覇を達成したが、スタートから順調というわけではなかった。初黒星はまさかの開幕3戦目。つくばを相手にフルセットで競り負けた。その後勝ち星を積み上げたが、特にシーズン中盤までは2セット落とすこともあるなど、プレーの安定度は低かった。

 メンバーが大幅に入れ替わったこともあり、エド・クライン監督(41)は「チームで一貫性を保って勝利していくのは難しい」と想定していた通りの序盤だった。それでも指揮官は多くの選手を起用しながら、チーム全体の成長を促した。

全27戦中16通りのスタメン組み合わせ

 現にV2リーグ全27試合中16通りものスタメンを組んだ。オポジット張育陞(23)やセッター山岸隼(23)ら主力に定着した選手もいたが、チーム力全体が着実に向上。試合を追うごとに指揮官も手応えを得ていた。「シーズン後半戦は前半戦よりクオリティーも良くなってきましたし、満足している。6カ月という期間を考慮すると、いい仕事ができた」。

 そして、その成果が表れたのはV1大分三好とのV・チャレンジマッチだった。シーズン中は佐々木博秋主将(28)と戸田拓也(26)の両アウトサイドヒッターを同時起用することは極めて少なかったが、大一番で組ませた。佐々木主将は「大体当日か、前の日の夜のミーティングでスタメン発表されるので、誰が出てもいい状態にはなっている」と、練習から常に緊張感を持っているからこそ、なせる業だ。

 3試合を残してV2連覇を決めるなど、シーズン後半は独走状態で駆け抜けた。一つの不安があるとすれば、V1レベルのチームと定期的に戦えないことだった。常にV1の高さを意識するために、アンテナポールとアンテナポールの間にゴムを引いて基本とする打点の位置を上げたり、ネットに入りすぎないためにラインを引くなど、工夫を凝らしながら練習に臨んだが、高いレベルをなかなか体感できないのも事実だった。

相手監督も舌を巻くOP張育陞の活躍

 その不安をかき消してくれたのが、V2リーグで2年連続MVPを獲得したエース・張育陞だ。入れ替え戦では1戦目36得点、2戦目35得点と〝ビーストモード〟で相手を圧倒。大分三好のムレイ・ポール監督も「V1レベル」と舌を巻く出来だった。クライン監督も「信じられないぐらい良い」と絶賛した。チーム全体のレベルアップ、そして絶対的エースの存在がV1昇格につながった。13日には張育陞の残留が発表されるなど、すでに来季のチーム作りに着手。来季はヴォレアスの新たな挑戦が始まる。

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