高校野球
2022/05/28 23:00

上川 天国の母に贈る無四球初完封 北照8年ぶりV王手

道大会初先発となった北照の2年生エース・上川は東海大札幌高打線を完封した(撮影・小田岳史)

▽春季全道高校野球準決勝(28日、札幌円山)北照6-0東海大札幌高

 準決勝1試合が行われ、北照が6―0で東海大札幌高に勝利。道大会初先発の2年生エース・上川貴之投手が無四球で初完封。3併殺を含む無失策の守備にも助けられ、被安打7も決定打を許さず、優勝した2014年以来の決勝に導いた。準決勝のもう一試合、苫中央―札第一は一回1死、苫中央の攻撃中に雨脚が激しくなり、そのままノーゲーム。29日に再試合が行われ、決勝戦は30日に順延となった。

抜群の制球力 支部予選から24イニングで四球1

 九回1死一塁。北照の上川が直球で二併殺に仕留め、スコアボードに0を並べた。三回に1度だけ、得点圏に走者を背負ったが、四回以降は二塁も踏ませず。「バックが守ってくれる安心感があった。真っすぐがしっかりとコースに行って、ファウルや空振りが取れていたので、楽に進めることができました」と、涼しげな表情で振り返った。

 抜群の制球力だった。小樽支部予選から、24イニング投げて四球はわずか1個。上林弘樹監督(42)は「この試合はどうしても勝ちたかったので任せました。制球に関しては、どんな練習試合でもきょうみたいな投球をしてくれるので、安心して見ていられました」と、最後までエースにマウンドを託した。

 甲子園春夏合わせて10度出場の強豪で、今春からエースナンバーを背負う。昨秋は11番。冬の間の精神的な成長が指揮官の信頼を得た。「エースの自覚が出てきた。ミーティングで話を聞く姿勢が変わってきた。何でも吸収しようという、チームで一番になりたい思いが伝わる」と、目を細めた。

 性格はまじめでコツコツ。上川は「2年生でエースになるという目標があって、上には中鉢さんがいたんですけど、どうしても超えたいという思いで鍛えました」。プロも使用する、ボールの回転数を図る「ラプソード」を用いて試行錯誤。回転数は昨秋の2100から2200回転へ。さらに体を大きく使うためと、体重移動がスムーズにいくように、セットポジションからワインドアップにモーションも変更。上級生を押しのけ背番号1を勝ち取った。

 さらに、今後の成長ために、遺伝子検査も受ける予定。「プロになるのに、そういうところから体を作っていきたい」。遺伝的に弱い部分と強い部分を知ることによって、効率的に鍛えたりすることが目的で、近年スポーツ界から注目を集めている。

中学まではカーリングとの二刀流「リリースが重要」指先の感覚養った

 カーリングの盛んな北見市常呂町出身。父方のいとこ・上川憂竜さん(19)は、昨年の日本選手権で準優勝した常呂ジュニアのサード。上川も常呂小4年から常呂中1年まで夏は野球、冬はカーリングの二刀流だった。「カーリングって難しくて、1センチで展開が変わってくる。そういう集中力はつけられた。野球もカーリングもリリースが重要」と、指先の繊細な感覚を養ってきた。

 今回、常呂ジュニアは予選リーグで敗退。「その分、自分が勝ってやろう」と、刺激を受ける存在だ。3月の北京五輪期間中も、北照の寮では上川の解説付きでロコ・ソラーレの試合をテレビ観戦していたという。5月の小樽支部予選中には、銀メダルメンバーの鈴木夕湖(30)の兄を通じて「貴之君も野球を頑張ってね」と、記されたサイン色紙をもらい、寮に大切に飾ってある。

 一昨年12月2日、53歳で病死した母・雅世さんに成長を誓っている。葬儀に際し「プロ野球選手になるから天国から見ててね」と、ボールに記して棺に納めたという。その夢の実現のためにも、誰にも負けられない。8年ぶりの頂点へ、若きエースが躍動する。

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