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2022/04/17 22:10

【西川薫】FC東京の道産子ルーキーMF松木玖生が北海道凱旋

試合前練習では、札幌サポーターから拍手

 この春、青森山田高からFC東京に加入した室蘭出身のMF松木玖生(18)が16日、札幌ドームで行われた北海道コンサドーレ札幌とのリーグ戦に先発フル出場した。試合前の練習では、札幌サポからも拍手を送られるなど、注目を浴びていた。以前、同校で取材したことのある記者は、幸運にも彼の北海道凱旋試合を直接見届けることができた。

 この日の札幌ドームには、松木の両親が室蘭から応援に駆けつけていた。「いい結果を残して恩返ししたい」と話していたものの試合は0-0。勝利にはつながらなかったが、持ち味のメンタルでガツガツいく姿に、恩返しをする〝その時〟はすぐに来ると確信した。

勝利のためには、上級生へも厳しい言葉をかける

 彼に初めて話を聞いたのは、高校2年生だった2020年9月。1年時から主力として活躍し、いきなり全国高校選手権で準優勝。その後は2年生ながら背番号10番を背負い、チームのエース格となった。9月は選手権予選を控えた大事な時期。練習中のグラウンドに近づくと、すぐに彼を発見した。下級生にもかかわらず、プレーに満足がいかないと3年生がいてもお構いなしに厳しい言葉を投げかけていた姿に衝撃を受けた。当時から勝利に懸けるメンタルは、ずば抜けていた印象だ。

 練習が終わった後、大会へ懸ける思いなどをいろいろ聞き、話題は将来の夢にも及んだ。「Jリーグに行くか、海外に行くか分からないけど、活躍して、なおかつ20代で日本代表に呼ばれるように活躍し続けることと、海外のトップの選手と互角以上、もしくは互角にやりあえるように、という夢はあります」。目を輝かせながら、熱く語っていた。

 その冬、フランスの名門・リヨンのアカデミーに挑戦というニュースを目にした。外国語の勉強もしたいと話していただけに、このまま海外のクラブに行くのかな?と勝手に想像していたので、去年10月のFC東京内定のニュースは、正直、びっくりした。同時に、国内でまた彼のプレーを見る機会があるかもとワクワクしたのを覚えている。

 すると、今年2月の北海道コンサドーレ札幌の沖縄キャンプに帯同していた記者は、同5日のFC東京との練習試合の先発メンバーに彼の姿を発見。正直、こんなにすぐに目にするとは思っていなかっただけに、試合前からそわそわしていた。練習試合では室蘭大沢小の先輩で、現札幌の宮沢裕樹主将(32)と何度もマッチアップした。

 公式戦の初対戦も記者が取材を担当した。16日の試合後には、宮沢とユニホームを交換。松木は、ミックスゾーンで「宮沢選手は覚えてないかもしれないですけど、地元のチームに来て、写真を一緒に撮ってくれて。自分もこの舞台に憧れていたので、そういう先輩とできて良かった」と、明かした。

青森山田中への進学理由は、檀崎竜孔の存在

 松木が青森山田中に進学するきっかけになったのは現札幌のMF檀崎竜孔(21)の存在だ。室蘭大沢小6年の時、帯広で行われた全国中学大会で優勝した青森山田中のプレーを見て、進学を決意したという。檀崎は主将を務め、その大会の得点王だった。

 今年2月のキャンプ中にはその檀崎にも松木の話を少しだけ聞くことができた。檀崎自身も青森山田中から青森山田高に進み、1年から出場。3年時には全国選手権で優勝して、卒業後にJクラブに入るという松木と同じ道を先に体現した。松木と出会った当初のことを思い出し、「あいつも(中学)1年生からAチームに帯同していたのも知ってましたし、目に付く選手ではあった。中3になった時も、僕たちの高校に、ちょくちょく交じっていましたからね」と、当時から抜けた存在だったという。記者は、今度は青森山田の先輩後輩対決が見られるかもしれないと、勝手に期待している。

 昨年は飛び級でU-21日本代表にも選出。今年3月のU-23ドバイ杯では優勝に貢献。最初に取材した当時に話していた夢にどんどん近づいていっている。まさに有言実行を地で行くタイプだ。2024年のパリ五輪世代。松木の活躍からますます目が離せない。

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