【西川薫】少年野球の〝飛ぶバット〟規制に道内関係者の反応は…
29年に全面禁止
全日本軟式野球連盟は12月15日、小中学生を対象に選手の安全性を考慮してバット外表面にウレタンやスポンジなど弾性体を取り付けた、いわゆる〝飛ぶバット〟の使用を2029年から禁止することを発表しました。同連盟では今年から小学生が一般用の同バットを使うことを禁止していましたが、29年からは小学生軟式用も禁止となり、これで完全に全面禁止となります。販売開始から約20年以上を経て、少年野球界を取り巻く情勢が大きく変わりそうです。
3年前から禁止していた大会も
NPB主催の12球団ジュニアトーナメントでは同連盟よりも一足早い22年から飛ぶバットの使用が禁止になりました。打球速度の高速化により投手への打球障害の恐れがあることと、21年大会の15試合で51本の本塁打が生まれたことも理由のひとつのようです。昨年、準優勝に輝いた北海道日本ハムファイターズジュニアの大塚豊代表(37)は「我々としても良かった」と、連盟の決断を歓迎しています。
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高額な〝打ち出の小槌〟
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高反発の複合バットは各メーカーから発売されていますが、従来の金属バットと比べて価格は3倍ほどと高価なものです。記者が草野球をやっていた20年ほど前、なけなしの小遣いをはたいて購入したのを思い出します。ちょっと真芯を外しても外野の頭を簡単に越えていく〝打ち出の小槌〟に当時は衝撃を受けました。同連盟が主催する「高円宮賜杯全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメント」で17年に北海道勢初優勝を果たした東16丁目フリッパーズの笹谷武志監督(47)が話す「今は飛距離をお金で買っているようなもの」との表現に、言い得て妙だと感じました。
本来の楽しさを感じるには原点回帰
笹谷監督によると、チーム内の使用率は10割と言います。なので、「親に負担をかけないように」と試合用に1本を購入し、普段の打撃練習では木製バットに限定しています。29年からの全面禁止措置には、「僕は良いことだと思っています。野球って小さい子も大きい子も、スピードがある子もない子も、いろんなタイプの子どもたちが活躍できる。体格差などがあっても、配置とか、巡り合ったメンバーによって、みんなが活躍できるスポーツ」と、賛成しています。さらに現在の状況には、「バットの力を借りたパワー野球っていうのは、せっかくいろんなタイプの子が活躍できるスポーツなのに、足を生かすより飛ばせということ」と嘆き節で、野球本来の楽しみや喜びを感じてもらうためには〝原点回帰〟が重要と訴えています。
芯を捉える能力が身につかないまま
受け皿となる中学世代の指導者はどう考えているのか―。中学硬式日本一を決めるジャイアンツカップで22年に3位に入るなど全国的な強豪チームとなった札幌新琴似リトルシニアの生嶋宏治監督(64)は、「私は複合バット反対派だったので禁止になって良かった」と言い切ります。「(バットの)根っこで詰まっていても打球が飛んでいく。本来の打撃の芯で捉えることが、最近の子供たちはできる子が少ないんです。やっぱり打撃ってバックスイングを大きく取って、フォローも振り幅を大きくして打たなきゃならないと思うんですけど、飛ぶバットの場合だと構えたところからボールにバットをぶつけるだけで、ポーンと飛んでいっちゃう。その打ち方がそのまんまクセになって(中学に)上がってくるんです」。
高校の低反発バットでも芯を食えば
高校野球でも24年春の選抜甲子園大会から低反発の金属バットが導入されました。全国の強豪校とも交流のある生嶋監督は「高校野球も飛ばないバットになったけど、甲子園で上の方に来るチームは関係なく打っている。しっかりしたスイングで、しっかりと芯を食っていれば飛ぶっていうんです。だから全然変わらないですって聞いてます」。野球界を支える少年野球の改革は、将来の高校野球やプロ野球へどんな影響を及ぼすのか、これからも注目していきたいですね。
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