達孝太 ビッグマウスの真意は? 本当の性格は「誠実で、後輩の面倒見が良くて、プレゼントが好き」
0が並ぶスコアボードを指さす達=撮影・松本奈央
■パ・リーグ23回戦 日本ハム2-0ロッテ(9月27日、ZOZOマリンスタジアム)
種市に投げ勝ってシャットアウト
リーグ優勝は消えても、希望はある。日本ハムの達孝太投手(21)がプロ初完封で8勝目(2敗)を挙げた。
新人王の可能性も残す快投に「やっと(完封)ですね。まだそんなに、完投とあんまり違いは感じていないですけど、点を取られなかったので良かったですね」と安堵の表情を見せた。
完封勝利を飾り、進藤(左)と抱き合う達=撮影・岩崎勝
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大ブレークの2025年シーズン
高卒4年目は、大きな飛躍を遂げる1年となった。前年まで1軍では2試合のみの登板だったが、キャリアハイを大幅に更新。ここまで16試合に先発し、107回⅔を投げ、防御率2.09と急成長を見せた。
なぜ飛躍を遂げられた? 小田2軍打撃コーチが証言
進化には理由がある。生活のすべてを野球に費やしてきた。小田2軍打撃コーチは、達が早朝から鎌ヶ谷の寮でトレーニングをする姿を毎日のように見ていたという。
「僕は毎朝、7時にウエートルームに行くんですけど、もう必ず達がいましたね。常連さんです。それで達を見ていたら毎日、同じルーティンを必ずこなしていて、それも、しっかり気持ち込めてやっているのが伝わるんですよね。だから、話しかけられなかったです。それを見ていたので、今年の活躍に驚きはないですね。後輩にも良い影響を与えてくれていて、今は鎌ケ谷で朝、藤田(琉)とよく会います」

目を見張った出来事 エスコンで…
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小田コーチが、「達はこれからも活躍する」と確信した出来事がある。今年8月にエスコンフィールドで2軍戦が開催された時のこと。ルーキー・柴田の打撃練習に付き合うために、朝早くから球場を訪れた同コーチが目にしたのは、ウエートルームで鎌ケ谷と全く同じようにトレーニングする背番号16の姿だった。
「入ったらいたので、びっくりしました。1軍に行っても、達は変わらなかった。すごいなと思いましたね。エスコンは鎌ケ谷と違って寮からも離れていますけど、達にはそれも関係なかった。当たり前のことと言えば、当たり前のことなんですけど、高卒の選手でそれができる選手は、なかなか少ないですよ」
普段はどんな若者なのか
野球に対してだけではなく、人間性も真面目だ。達が中学生の頃から、マンツーマンでトレーニング指導をしている大阪・豊中市のトレーニングジム「STEP GATE」の久下明範代表は、右腕の性格を「誠実で、後輩の面倒見が良くて、プレゼントが大好き」と明かす。
「達から、いろんなものをもらいましたよ。達自身が自主トレで使いたくて、ジムにくれたものが多いですね。レッドコードもそうですし、ほかにもトレーニング用のツールを置いてくれています。スピードガンもくれましたし、敏しょう性を鍛えるライトもくれました。うちのジムに通っているアメフトをやっている高校生と、同じ時間にトレーニングをすることがあったんですけど、去年、達がアメリカに行った時に、その子のためにNFLの選手のTシャツを買ってきたりもしていましたね。年下の仲が良い子も多くて、『友達だったら、タメ口が良い』と言って、天理高校の後輩と、すごいタメ口でしゃべったりしていますよ。ほかにも、達と同じ場所でトレーニングしている人は、みんなが達のファンになって、ユニホームを買ったり、タオルを買ったり。応援したくなるんでしょうね」

有言実行を自らに課す21歳
今季は時に、発言に注目が集まり、「ビッグマウス」と指摘されることも多かったが、付き合いの長い久下代表は真意を分析する。
「達は、頭の回転は速い方じゃないんです。自分がした発言を、後で考え直しているタイプ。だけど、言霊を信じている。言ったら、それを達成しようとする。彼がビッグマウスと言われるのは、何か相手に対して言っているのではなくて、自分に対して、自分を奮い立たせるために言っている言葉なのかなと思いますね。目標を言っているんですよね。完封したいとか、そういうことは全部、自分に言い聞かせている。自分にプレッシャーをかけて、そういうマインドセットをするためにやっているんだと思います。彼は基本、誠実なんですよ。ただ、語彙(ごい)力がないので、そういう(ビッグマウスと言われるような)発言になることがある」
すでに、最終目標はサイ・ヤング賞と公言している。周りの雑音は関係ない。世界のトップに必ず届くと信じて、達はこれからも腕を振り続ける。
