《SHINJOの信条》大海だけは休ませない。大海が引っ張っていかないと強いチームにならないから

■パ・リーグ25回戦 楽天7-0日本ハム(9月23日、エスコンフィールド北海道)
試合後、取材に応じた新庄剛志監督(53)の一問一答は以下の通り。
―ホーム最終戦。勝つことはできなかったが、明るいセレモニーに。どんな思いでマイクを
「ただ単に負けてしまって整列して『今年1年間、ありがとうございます』と、ほかのチームと一緒のことをしてもファイターズらしくないので。ああいうマイクパフォーマンスで、みんなの顔を見ながら話そうと決めさせてもらいました」
―ファンが盛り上がっていた
「それはライバルのチームが…(笑)。喜んでいませんよ。一緒に負けてしまったという。こればかりはプロ同士の戦いなので、何が起こるか分からない。僕たちはもう全部、勝つしかないので。選手たちは1ミリも諦めていないです」
―宮西が900試合登板を達成
「まず梨田監督が初登板をさせて、そこから栗山さんが300、400、500、600、700と宮西くんを信じて。すごくないですか。僕が800、900。1000、2000といきたいですけどね(笑)。素晴らしいとしか言いようがないし、よくそれだけ投げられたなと。ここからCS(クライマックス・シリーズ)、日本シリーズに向けて宮西くんはちょっと選手登録を外れて。ブルペンで選手たちに声をかけてアドバイスしてもらう役目をしてもらいます」

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―残り6試合で優勝を狙える位置に導いている。就任4年目で選手の姿はどう見えているか
「1年目は80敗(正しくは81敗)でしたっけ。それがこの4年目にして、80勝目前。79勝か。80勝したら9年ぶりでしょ。成長させてくれたのは、コーチのみんなが一日一日、しつこいくらい注意してアドバイスして。その積み重ねがあって、優勝争いできるようなチームになって、感謝しかない。1年目から、きょうまでのレベルアップは計算に入れていたので。自分としては脚本通り。まだ優勝のチャンスもあるし、万が一、逃したとしても次の年、てっぺんに行くぞという気持ちで取り組めるので。あと6試合後には結果が出ますので、お楽しみに」
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―特に成長した選手は
「一番のポイントは投手陣。投げて抹消、投げて抹消、投げて抹消。ただ、伊藤くんだけは休ませない。今年、2回ぐらい投手コーチから『大海を休ませたいので、お願いします』と言われたんですけど、ダメだと。大海だけは休ませないと。肘とか肩とか、どうしようもない時はプレーをさせませんけど、疲れているとか、そういうことでは休ませないよと。1年通して大海が引っ張っていかないと強いチームにならないから。2人でやっていこうと話し合いをしながら。この間、中4日もしてくれて。むちゃくちゃうれしいですね、本当に。レイエスにしても飛行機の気圧の関係で、かかとがしびれはじめる。でも自分から痛いとか言わないし、僕が練習中の走り方、普段の様子を見ながら、出たいかもしれないけど、俺の判断で休ませる。そういうことをして、ホームラン王と打点王を取ってくれて(確定はしていない)。もう少し、来年は痩せたら、かかとに負担はいかないのではないかと思います(笑)」
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―それ以外の選手の活躍も目立った
「名前を挙げたらきりがないですけど、郡司くんのユーティリーティーさというか。どこを守らせても無難にこなしてくれて、どこの打順でもしっかり仕事をしてくれて、給料が3倍、上がりますね(笑)」
―チーム全体で戦ってきた。どういうことを大事にしてきたか
「育成の子、ファームの子にしてもチャンスは必ずあるので。この舞台に立った時にどういう活躍をしてくれるか、(可能性は)無限大にある。僕は映像をしっかり見ていて。コーチから『なんでこの選手を上げるんですか?』と、よく言われるんですけど、いやいや大丈夫、活躍するからと。選手の練習態度とか、ベンチでの声の出し方をしっかり見て、しっかりチェックして上げたらすぐ使う。そこで、モノにできなかったら、もしかしたらユニホームを脱がないといけない、という人生になるかもしれない。でもチャンスはどんどん与えて。今までは成長させながら勝つ野球だったんですけど、今は勝ちながら成長させる。登板機会が少なくても、プレッシャーがかかる試合で投げさせる。そういう舞台で投げさせたら、ほかのマウンドでプレッシャーなんてかからない。ものすごくリラックスして投げられる。そういうところは僕の一つのポイントではありますね」
―優勝争いが続く中、レギュラーシーズン終了後、すぐにCSがある。そのための準備は
「うーん、優勝してCSがいいですね。2位からCSに出てもテンションが下がるんですけど、そうなった場合はもちろん、ファンのために日本一を目指してやっていきます」
―昨年は2位から
「去年はもう日本一を目指していました。今年は優勝してCS、日本シリーズにいきたいです」
―昨年は伊藤をCSファイナルまで使わなかった。今年は
「それはこれから。シーズンが終わっていないので、これから考えていきたい」
―セレモニーでタイトル獲得を断言していた
「いいじゃないですか。もし変わったら、ごめんなちゃいと言う(笑)。断言していいんですよ」
―大事な試合で孫を先発させた
「可能性ですよね。可能性を見たい。その前にファームでいいピッチングをしていたんですよ。これならいけると。まあ、こういう舞台を経験した。きょうのイーレイにしてもグーリンにしても、成長につながると思う。気持ちのコントロールが大事ですよね。次の登板に向けて。一度、経験しているから、次は違う気持ちでいけると思う」
―ソフトバンクも苦戦している
「プレッシャーはあるでしょうね。まさかね、4連敗? 何が起こるか分からない。で、うちも調子が悪いという。どれだけ盛り上げとんねん(笑)。もっと盛り上げるために勝っていくしかないから。小久保監督、計算しているのかな(笑)。一緒に盛り上げようと、この間も話はしていたので。まあ、そんなことはないでしょうけど」
―セレモニーでマイクパフォーマンス。このような形にしたのは
「なんか嫌じゃないですか。並んで帽子を取って『1年間ありがとうございました』…。もうええってと。僕、しゃべらなくていいくらい。選手がわいわい言いながら『ありがとうございました、ここまで成長しました』みたいな。わいわい言いながら終わる方がいいと思うので。これでエスコンフィールドでの胴上げがなくなったので、僕の企画が全部パーです(笑)」
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―いろいろあったのか
「いろいろあったんですよ。びっくりするくらいの。できなかったですけど。だいたいね、計画立てて準備してもできないことって、人生にはたくさんあるので。切り替えですね。ヨーロッパぐらいまでこの話題、いくと思ったけど(笑)。感動させながら、すげーなという」
―敵地で優勝の時にはできないことか
「ダメです。できないできない。エスコンじゃないとできないです」
―日本シリーズで勝ってやるのは
「ないです。リーグ優勝のみです。やっぱりリーグ優勝が一番、大事ですよ。リーグ優勝できなかったら、2位も6位も一緒という感覚で戦っていたので。2位でCSに行ったとしても、ちょっと表情は暗くなるかなという気持ちはあります。正直に言うと」
―昨年は敵地でのCSで悔しい思いをした
「いや、今もしていますよ。同じような感じ、今の戦い方。でもまだ分からんから(笑)。本当に分からんから」
―きょうはセレモニーのおかげで、重い空気が一変した
「僕の仕事でもありますからね。監督の仕事だけじゃなく、どうみんなを明るく笑顔にさせていくか。去年に引き続き(観客動員が)200万人を突破して。すごいことですよ、200万人。近くに駅があるなら分かるけど、まだ駅がない中で、よく来てくれているなと。きょうも7点差ありましたけど、本当に最後、逆転するかしないかぐらいのすごい応援をしてくれて、ありがたいなと思って。でもそういうふうにさせたのは、選手たちで、高校野球みたいなチーム(笑)。感動を与える、泥だらけになって(笑)。そういうものが、ファンの心も熱くするじゃないですか。エスコンに見に行きたいという気持ちにさせてくれて、選手に感謝ですよね」
―監督の野球観は、高校野球の影響が強いのか
「僕が泥だらけになるのは大っ嫌いですけど(笑)。もうファーストでリードを取って、戻るのも嫌だった(笑)。でも、今のファイターズは泥だらけでいいかなと。かわいらしさもあり、打った時とかファインプレーした時のたくましさもあり。そういうチーム、ワクワクさせるようなチームはでき上がったと言っていいと思いますよ。あとは経験。あとは選手次第ですもんね」
―監督は常々「キャプテン」(高校野球漫画)を小さい頃から読んでいたと
「いいですね。僕は谷口くん。だからずっと野球、タイガースもアメリカも背番号5を着けて、神社で練習して、みたいなね。でもキャプテンになったこと一回もない(笑)。そういうタイプじゃないって(笑)。おまえはやめておいてと(笑)。もう自由に生きてくれたらいいから、というタイプだったから(笑)。引っ張れない。モチベーターですね。キャプテンじゃなくても、モチベーションを上げていましたから。もう小っちゃい頃から」
―インスタグラムの活用や、郡司のサード起用など、モチベーターとしての役割を発揮できたのでは
「できましたね。誰が郡司くんをサードにします? 普通、考えられないですよ。俺も考えられなかった(笑)。とりあえずやらせてみて、できるかできないか、僕があとで判断すればいいわけだし。でも外野を守るにしても、キャッチャーを守るにしても、サード、内野を守ることによって、スローイングが安定してきたんですよね。外野の動きでも、内野手の動きができるので、なんか器用だなと。郡司くんがいなかったら、ゾッとする1年。本当はきょう、キャッチャーでもいこうかなと。田宮くんの調子が良くないから」
―郡司も割り切ってユーティリティーをやってくれた
「でも郡司くん以外でもユーティリティーがたくさんいるので。調子良い悪いとか、体調とかを考えながら。はめていくピースはものすごく増えましたよね。これはもう4年間やってきたこと。ほかのチームではたぶんできないと思う。で、いつかショートを守らせようかと考えています(笑)」
―最後はショートを守らせたい
「ショートでおしまいでしょ、全ポジション」
―監督の話を聞いていると、経験がとても大切だと感じる
「大事、大事。なんでも経験ですよ、経験。でもね、その場面ですね、経験させる場面です。だから今年の優勝争いの中の経験は、ものすごくプラスになったと思いますよ。それは僕がメジャーの時に4番を打たせてもらった経験というのは、ものすごくあります。『なんで?なんで俺を4番で打たせるんだ?』。そこから人生変わりましたね。あの経験以上のものはないから。全部が余裕に感じる。(相手が)ランディ・ジョンソンよ、いきなり(笑)。4打数0安打、タンタンティン(3三振)。その後10日間ベンチだったから(笑)。ただ、その次の登板がまた4番で。カート・シリング。すごいボール投げるんですよ。それで、3安打。そういう経験を僕はさせてもらったので今、選手たちもそういう経験を。いきなり4番で使ったり、打てなかったら一回落として、また使うみたいな。それは経験してきた僕じゃないと分からないですね。なんでやねん、と言われるかもしれないけど、まあまあ見ておいてと。活躍するから」
―監督がメジャーで4番起用された時は、みんながびっくりしていた
「ボビー(・バレンタイン監督)が批判されていた。いや、俺も思ったもん(笑)。だって(1番から順に年俸)9億、7億、18億、2100万(笑)、12億。記念撮影したもんね(笑)」
―スタメン表の前で
「そうそうそう」
―クラッチヒッターと呼ばれていた
「ピアザと一緒です。年間の勝利打点は、僕とピアザが一緒でしたね。チャンスには強かったけど、ランナーがいない時にはまあ集中できない(笑)。その癖を直していたら、ものすごい選手になっていたんだけど」
―勝負強いというのは大事なこと
「クラッチヒッターは大事。今見ていたら、クラッチヒッターが少なくなったような気がしますね。ランナーがいない時にポンポンポンと打って、3割近くは打ちますけど。うちで言ったら、去年でいう水野くんとか。打率は低いけど、得点圏で右中間、左中間に長打を打って。インパクトは残りますもんね。ランナーがいない時は、今年も期待はしていないんだけど(笑)。ランナーがいる時は、いくんちゃう、打つんちゃう?と。ここからの試合はもう清宮くん、万波くん、野村くん、この3人に何かきっかけをつかんでもらって、爆発してほしいですけどね。打ち方が変わったような気がするんですよね、清宮くん。良い時のバットのしなり(が感じられない)。タイミングがちょっと遅れているので。しなりでボールに当たって、乗せるタイプじゃないですか。それが、僕の感覚ですけど、ちょっとずれているかなとは思いますね」
―その指摘はしたのか
「してないです。この時期にしたって。それはもう本人は、一生懸命考えて。見た目でも分からないけど、本人なりに工夫はしていますからね。その心の中はちょっと見えないですけど」
―監督は若手を伸ばしてきたが、最後はその3人がカギとなるか
「歯がゆさがあります。こんな成績じゃないだろうと。もっといけるだろうと。どれだけ経験させてきたんや、というもどかしさはものすごくありますね。勝つためにはちょっと仕方ない、今は。相手のピッチャーと相性を合わせて、スイング軌道を合わせて、合うか合わないかを判断して。勝たないといけないから」
【宮西尚生 900試合登板で伝えた感謝「サポートされながら達成できた記録」】