宮西尚生 史上4人目900試合登板 マンガ「キングダム」の熱い名言が心の支えに
NPB通算900試合登板を達成した宮西=撮影・小田岳史
■パ・リーグ25回戦 楽天7―0日本ハム(9月23日、エスコンフィールド北海道)
今季レギュラーシーズン本拠地最終戦で達成
日本ハムの宮西尚生投手(40)が五回に救援し、NPB史上4人目となる通算900試合登板を達成した。
心と体をすり減らしながら、泣き言を言わず、マウンドに上がり続けた18年。中華統一をテーマにした人気マンガ「キングダム」を愛読し、作品に登場する将軍の言葉を心の支えにしていた。
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リリーフ一筋で大台に到達
前人未到の1000試合登板をクリアし、1002試合まで伸ばした中日の岩瀬仁紀氏。続くのは949試合の米田哲也氏、944試合の金田正一氏。リリーフの地位を高めてくれた岩瀬氏や、日本プロ野球の礎を築いた先人たちをリスペクトしている。
ただ、生涯セットアッパーとして紡いできた生きざまは特殊だ。プロ入りした時点で、ほかにその道を進む投手はいなかった。誰も成し遂げていない400ホールドがそれを証明している。
五回途中、マウンドへ向かう宮西(左)
感銘を受けた将軍の言葉
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道なき道を行く上で、心を突き動かされたマンガがあった。中華統一を果たした始皇帝とそれを支える武将の姿を描いた「キングダム」。趙国三大天の一人として名をはせた将軍、廉頗(れんぱ)の言葉が刺さった。
過去の偉人たちを越えようとする主人公・信の前に現れた廉頗は「全て兼ね備えた趙国三大天と秦六将はかつて、完璧な時代を築き上げた。そんな儂らと貴様は本気で肩を並べられると思っておるのか?」と問いかける。そしてこう続けた。
「儂らの伝説は刻の流れに守られてしまったからのぉ。じゃが実は一つだけ儂らを抜く方法が存在する。伝説の塗り替えじゃ。儂らでも成し得なかった大業をやってのければ歴史は必ず貴様らを崇める。ああ、中華の統一じゃ」
五回途中、3番手で登板した宮西
歩み続ける前人未踏の道
過去の偉業は色あせない。畏敬の念を持って、脈々と語り継がれる。同じことを達成しても、先駆者に並ぶことはかなわない。それは野球の世界でも当てはまる。
宮西は「誰も成し遂げていないことをやるしかない。あの言葉はまさにそうやなと。あの言葉が好きなんや。素晴らしい言葉やなと思う」と深くうなずいた。
NPB通算900試合登板を達成した宮西=撮影・井上浩明
チームに欠かせない生きる教材
負けん気の強い大卒左腕が、化け物だらけのプロの世界で、リリーフを極めようと悪戦苦闘してきた物語―。チーム内でも昔からキングダムを愛読している仲間は多く「よく上沢とか鍵谷とか、後輩から桓騎、桓騎(冷酷で残虐な一面を持つ秦の将軍)と言われていたから。死んでもうたやん。あいつら先輩を先輩と思っていない」と苦笑した。
抑えても打たれても、情けない姿は見せられない。いつも若い投手たちが、その背中を見ている。
NPB通算900試合登板の記念ボードをもらった宮西