浅間大基 〝執念〟の2号3ラン「優馬の分も頑張ろうと」今川との関係性の変遷は…
六回2死一、三塁、3点本塁打を放った浅間=撮影・桜田史宏
■パ・リーグ23回戦 西武5-12日本ハム(9月15日、エスコンフィールド北海道)
昇格即スタメン&ヒーロー
日本ハムの浅間大基外野手(29)が友の無念を背負い、チームを勝利に導いた。前日に負傷し離脱した今川優馬外野手(28)の代わりに1軍昇格を果たすと、いきなり2号3ランを含む2安打3打点と大活躍した。
お立ち台に上がった背番号8は「同級生の優馬(今川)がけがをして、入れ替わりという形で(1軍に)上がってきた。鎌ケ谷で本当に暑い中、一緒に頑張ってやっていたので、僕自身、(今川が離脱して)ちょっと悔しい。正直、先に優馬が上がって、頑張ってほしいという気持ちもあった。それであの(好)成績を残していたので、そこは本当に、僕が執念を受け継いで、優馬の分も頑張ろうと思います」と力強く誓った。

【ファイターズの最新記事はコチラ】
アクシデントも重なった急な1軍合流
吉報と、嫌な知らせが重なった。前日の2軍戦中に急きょ、1軍に呼ばれた。同時に行われていた1軍戦で、今川が右太もも裏を痛めたからだった。
急いで北海道へと向かったものの、搭乗予定だった午後8時半の飛行機が遅延し、羽田空港を出発できたのは同9時。「(札幌の)寮に着いたのが(同)12時前ぐらいでした」。夜のうちに、新庄監督からDMで翌日のスタメンを告げられていたが、「ちょっと(睡眠時間が)足りないですね」と寝不足のまま、久々の晴れ舞台に臨むことになった。
納得の一撃「(感触は)かなり良かった」
だが、執念を受け継いだ男には関係なかった。「2番・中堅」でスタメン起用されると、1打席目に詰まりながらも左前打をマーク。そして、六回の4打席目に左翼へ会心の一発を放った。
「(感触は)かなり良かったので、これ、もしかしたら(スタンドに)行くんじゃないかな、という感じで走っていました。(大歓声で)ちょっと耳がおかしくなりそうでした」。球団広報を通した試合中のコメントには、今川の代名詞である「執念」を使った。
六回2死一、三塁、浅間が3点本塁打を放つ
2年前の2人は…
この記事は有料会員限定です。
登録すると続きをお読みいただけます。
今川とは同学年だったが、入団時期は異なり、出会った当初は互いに〝壁〟を感じていたという。
2年前にはまだ、浅間が「今川は、気を使っています。話していて、顔、引きつっている時あるんですよ(笑)。そこを崩していきたい。もっとありのままを出してほしいです。もっと仲良くしたい。薄っぺらい話じゃなくて、深い話がしたい。しゃべらないわけじゃないんですけど、何か気を使われているんです」と胸の内を吐露し、今川も「まだ距離ある、みたいないじりを、いつもしてくるんですよ。入団した時から、高卒で先に入っていた浅間、清水(優)、石川には壁があった。同級生だけど先輩感があったんです。でも(清水)優心は向こうから話しかけてくれるタイプでしたし、(石川)直也は高校の時から関わりがあったのもあって、すぐに仲良くなれた。浅間は話すし、仲もいいんですけど、いまだにちょっと最後、薄い壁がある(笑)。お互いけん制し合っている感じです」と主張する間柄だった。

急接近した沖縄の夜
そんな2人の距離は、〝サシ飲み〟で一気に縮まった。昨年2月の春季キャンプ期間中。沖縄・国頭の宿舎近くにある居酒屋に揃って足を運び、向かい合って泡盛を酌み交わした。試合で5タコに終わり、「さすがに5タコはないな」と落ち込む浅間を、今川が「そんなこともあるよ」と励ましたかと思えば、話は恋バナにも及んだ。
浅間は「結婚の話とかもしましたよ。僕は結婚したいんですけど、いろいろ話した結果、〝今川分析〟によると、(浅間)大基はまだ本当の意味ではあんまり結婚したいと思ってないだろう、ということらしいです。したいんですけどね(笑)」。気付けば、あっという間に閉店時間ギリギリ。2人の間にあった壁は、すっかり壊されていた。
ロッカーで託された思いを胸に
新宿育ちの浅間はクールに見えて、友達思いで熱く優しい。何度もけがに泣かされてきたからこそ、今の今川の気持ちが痛いほど分かる。「(エスコンの)ロッカーで(今川に)会ったので、何してんだよ、とは言いました。でも、しっかり頑張ってという感じで、(気持ちを)受け取ったので。けがして離脱するしんどさは、僕も結構、分かっているので、その気持ちはしっかりもらって、頑張りたいなと思います」
残りは12試合になった。逆転優勝に必要なのは、今川から浅間が受け継いだ絶対に諦めない〝執念〟だ。
