《鶴岡慎也のツルのひと声》リーグ再開後を展望 優勝へのキーマンはあの選手
貯金13で堂々のパ・リーグ首位
交流戦を11勝7敗の2位で終えた日本ハム。27日の西武戦からリーグ戦が再開となる。現在、40勝27敗2分で、堂々のパ・リーグ首位に位置する。ここまでの戦いぶり、そしてリーグ再開後を道新スポーツ評論家の鶴岡慎也さん(44)が展望。V打奪還のキーマンも挙げた。
ターニングポイントとなった劇的勝利
節目の一つでもある交流戦が終わった。開幕からここまで、ファイターズは順当に来ている。評論家の間でも下馬評は高かったのだが、期待通りの戦いぶりを見せている。
交流戦に限ると、状態の良い阪神、DeNAとの2カードで幕を開け、ともに1勝2敗。続くヤクルト戦で3連勝を飾ったのが大きかった。そして、なんと言っても広島との第3戦。一時0-7とリードを奪われながら、8-7と逆転勝ちした。あのゲームは間違いなくターニングポイント。シーズンが終わった時、あの一戦が契機となり、優勝できた―と言いたいものだ。
現プロ野球の常識を覆す新庄采配
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リーグ戦、交流戦を通じて、やはり先発陣の充実がチーム成績を支えている。完投して投げ抹消という現プロ野球の常識を覆す采配ぶりには目を見張る。新庄監督やコーチ陣がしっかりとコミュニケーションを図り、選手にも意図が確実に伝わっているのが見て取れる。
投げる投手がいずれも好結果を出す。誰も気を抜けない。その精神状態がそれぞれの好投につながっているのだろう。
投手陣の大黒柱に成長を遂げた伊藤
この投げ抹消。唯一、開幕からローテーションを守り続けているのが大海(伊藤)。このエースの存在なくして、今回の策は実現できなかったはずだ。
軸になるピッチャーがいればこそ、あらゆる起用法を試すことができる。投げているボール、リカバリー能力。すべてを判断しての首脳陣の決断。まさに大海は今や、投手陣の大黒柱。真のエースと言える存在だ。1-0で完封勝利を飾った中日との第1戦は実に見事だった。
粘りを見せている中継ぎ陣 さすがの宮西
中継ぎ陣も池田や河野がスタートからフル稼働。ベテランの宮西はワンポイントから始まり、今やしっかりと1イニングを任せられている。信頼を取り戻し、ポジションを再確立するあたりはさすがだ。
あらゆるシチュエーションでマウンドに上がるリリーフ陣。常に好調をキープするのは難しい。状態が上がらない中でも、なんとかリードを保って後ろにつなぐシーンを何度も目にした。その粘りは大きい。
絶対的守護神の確立が覇権を引き寄せる
期待したいのが九回のピッチャーだ。ハッキリ言うと、田中正義だ。正直、ここまでピリッとしなかった。ただ、持っているボールは素晴らしい。それは誰もが分かっている。
ほかの球団を見ても、今季はクローザーに苦労している。ここが安定したチームが覇権を手にすると言っても過言ではないだろう。そういった意味でも、リーグ再開後のキーマンには田中正義を挙げたい。
昨季のCSで見せたパフォーマンスこそが本来の姿
昨季のクライマックス・シリーズで披露した快投は記憶に新しい。特にファーストステージ第3戦のロッテ戦。回またぎで1回⅔を投げて、打者5人をパーフェクトに封じた。あの姿こそが本来の田中正義。本領を発揮すれば、ここから35~40セーブは十分に可能だ。
生え抜きの台頭に加えて補強も成功
打線は文句なしだ。ホームランが出ているのがいい。これほどバッテリーに脅威を与えるものはない。しっかりと振れるバッターが育っている証拠でもある。
長距離を打てるスラッガーは1年や2年でつくれない。清宮や野村、万波を我慢して起用していた成果が表れている。郡司や水谷に代表されるように、補強も実を結んでいる。
他球団を圧倒するバリエーション豊かなラインアップ
そして新庄監督は就任時から口にしていた。それぞれに複数ポジションを守らせると。その起用法が花を開いた。捕手でありながら、内外野あらゆる位置を守る郡司が最たるもの。どの選手も、ポジションがネックとなり、起用に踏み切れないことはなくなっているはずだ。
五十幡と矢沢を1、2番に置くなどスピードを重視した打線を組んだり、または本塁打に重きをおいたオーダーにしたりと、複数パターンの打線が可能となった。この多彩な起用ぶりは日本ハムが他球団を圧倒している。
危機感と信頼の絶妙なバランス
捕手は、伏見という存在が大きい。インサイドワークや気配りは当然ながら、今季は持ち前の打力を勝負どころで発揮できている。2軍落ちを経験した田宮もピリッとして1軍に復帰。復帰後すかさず広島戦でサヨナラ本塁打をマークした。
各ポジションで選手に危機感を植え付けた新庄監督。信頼との絶妙なバランスがチーム力向上に直結している。
若い力で優位に立つファイターズ
再開となるリーグ戦。やはりホークスは避けては通れない最大のライバル。序盤戦を引っ張ったオリックスも力がある。投手力に秀でる西武もいる。最後の最後までもつれるだろう。
怖いのはけが。ここからは体力勝負。回復力も大事になってくる。そういう意味では若い選手が多いファイターズに分がある。若い選手が多いだけに、勝ちきる経験をしてもらいたい。となれば、しばらくは毎年のように必ず上位争い、優勝争いができるチームができあがる。