《鶴岡慎也のツルのひと声》細野と進藤 若いバッテリーに必要な対応力 あの投手の先発転向も面白い
■セ・パ交流戦3回戦 阪神7-1日本ハム(6月5日、エスコンフィールド北海道)
ピッチングの組み立てに必要だったスライダー
らしくなかった。その一言に尽きる。先発した細野が立ち上がりから、いきなりの3連続四球。その後、押し出しとタイムリーで2点を献上した。好投した前回までの2試合とはまるで別人だった。
何が違っていたのか。ズバリ、抜くボールを使えていなかった。これまではうまくスライダーを駆使し、ピッチングを組み立てていた。それが直球やスプリット、ツーシームといった同じ球速帯のボールに偏っていた。実際、スライダーを織り交ぜた二回からはリズムを取り戻した。
若いバッテリーに求められる対応力
バッテリーは試合前、入念にミーティングを重ねる。もしかしたら、2巡目以降の軸にスライダーを想定していたのかもしれない。ただ、常にプラン通りに事が運ぶとは限らない。投手の調子も日によって違う。だからこそ、柔軟にプランを変更できる対応力が求められる。これはバッテリーの2人に共通する次回への課題だ。
常に見せてはいけない弱み
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若い細野と進藤。すべてを経験として捉え、前に進んでもらいたい。降板後、何度か細野の表情が中継のモニターに映し出された。感傷に浸っているように見えるシーンもあった。これからの投手陣を背負っていく可能性もある逸材。いつだって弱みを見せてはいけない。
斎藤の好投はプラス材料
敗戦の中、プラス材料もあった。斎藤友貴哉だ。0-4の五回1死一、二塁で2番手登板。自身の死球で満塁とされたが、後続を断った。六回は3者凡退と付け入る隙を与えなかった。
阪神との1戦目にも2番手で急きょマウンドに上がり、1回⅔を無失点に抑えていた。この日3戦目も回またぎ。しかも五回終了後にはグラウンド整備も入った。それでも六回を完璧に抑えた。
先発転向もあり 2016年には増井が配置転換
私個人の意見ではあるが、ウルトラCも面白いだろう。斎藤の先発転向だ。ピッチングの体力は備わっている。カウントが取れ、勝負球にも使える球種も多くなってきた。古林が負傷離脱するなど、アクシデントは予測できない。先発陣は何人いてもいい。2016年のリーグ優勝、日本一のシーズンには増井が先発に転向し、チームの力となった。斎藤の先発。面白いと思う。
タイガースの強さが凝縮されていた五回の攻撃
タイガースは、さすがセ界の首位チームと言える強さを示した。佐藤輝や大山の一発に目が行きがちだが、五回の攻撃は実に見事だった。9番の坂本がヒットで出て1番の近本が四球。ここで2番の中野が一発で送りバントを決めた。荒れ球の左投手に対峙(たいじ)する左バッター。一発で犠打を決めたのはさすがだ。きっちりとチャンスを広げて3番の森下が2点タイムリー。タイガースの強さを見た。
ファイターズも学ぶべきシーンが多かったはずだ。これからの戦いに生かしてもらいたい。