ファイターズ
2023/11/03 19:00

《ハム番24時》11月3日

 ブルペン捕手は、時に威勢の良い声を発して投手を奮い立たせる。ボールの速さや軌道について問われれば、目にした感覚を瞬時に言葉へ変えて、的確に伝える。職人たちは全力投球を受け止めながら、最も身近なところで投手陣の成長を支えている。

 秋季キャンプ3日目は、侍ジャパンに選出されている根本がブルペン入り。捕手を務めた薄さんは、心地よいミットの音を響かせて投球を盛り上げていた。変化球の曲がり具合を気にする様子を感じ取ると、1球ごと丁寧に捕球した感想を伝えていた。

 細やかな気遣いを思わせる場面もあった。投球練習の終盤。左腕が「今、何球目ですか?」と尋ねると、薄さんは手元のカウンターに目をやり「根本!」と返答した。記者がノートに記した球数は59球。背番号と同じ数だった。根本は「どういうこと? 単純に分からなかった」と最初は首をかしげたが、意味を理解すると、リラックスした表情でピッチングを再開した。

 練習後、大粒の汗を流す薄さんに話を聞くと「僕らは気持ち良く投げてもらうのが仕事。根本は実戦モードに入っていてボールが強かった。国際試合が楽しみですね」と、ほほ笑んだ。緊張と緩和を使い分け、投手の能力を引き出す。その言動に〝壁〟と呼ばれる男の矜恃(きょうじ)が詰まっていた。

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