「選手もそれが当たり前に」金子千尋特命コーチが米国留学で感じたコンディショニング意識の差
米国でのコーチ留学から一時帰国した日本ハム・金子千尋特命コーチ(39)が、道新スポーツWEBの取材に応じた。2月中旬から約2カ月間、球団と提携する米大リーグ、レンジャーズでコーチングを学んだ。昨季限りで現役引退した沢村賞右腕が、野球の本場で実際に見て感じたことを語ってくれた。
「データもすごく用いるけれど、とらわれすぎたら良くない」
―2月中旬に渡米し、メジャー、マイナーの両方のキャンプを巡回したそうですね
「基本的にピッチャーを見ていました。特にメジャーは個人的に何かを教えることがあまりなかった。でも、ピッチングコーチがマイク・マダックスさん、(メジャー通算355勝の)グレッグ・マダックスさんの兄で、どちらかといえば昔ながらの教えという雰囲気でした。新しいものをもちろん取り入れるけれど、やっぱり経験とか、コーチをやって長い方なので、日本っぽいなと思ったこともありました。データもすごく用いるけれど、そこにとらわれすぎたら良くないみたいなことも言っていました」
日本との違い「全体練習が短い。個人個人がやるべきことをやっている」
―コーチ留学を振り返っていかがですか
「日本と違うのはもちろん分かっていましたけど、自分が思っていたよりも、言い方がちょっと難しいので語弊が生まれたら困るのですが、全体練習が短いって感じです。個人個人がやるべきことをやっている。ウオーミングアップの前にウエートトレーニングをしている人がいたり。全体練習は本当にパパっと。これで足りんのかなというのが、日本人的な感覚でした」
―全体練習は午前中で終わる
「メジャーの方はそうですね。マイナーの方はもうちょっとやっていましたけど。ピッチングも投げる球数が少ない。でも、投げる回数は思ったより多かった。あとは、調整の仕方がやっぱり日本と違う。メジャーはバッテリーはちょっと早めにキャンプが始まりますけど、オープン戦、試合で投げて調整という感じなので、練習ですごく投げ込む選手はほんといなかったです」
―日本の投手は春季キャンプで投げ込みをします
「でも、ピッチャー、野手もそうですけど、リカバリーとか、コンディショニングというところの意識の高さは、正直日本より多分あると思います。試合数が多いので、いかに次の日にこの日の疲れを残さないかというところの意識はやっぱり高かったですね」
現役時代は〝体技心〟「1年間投げることの大事さ、体あってこその選手たち」
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―2月のインタビューでは指導者として「選手のために何が出来るか」を探していきたいと話されていましたが、方向性は見えましたか
「ちゃんとはまだないですけど、僕はやっぱり1年間投げることの大事さを現役中は感じていた。いかに調子の波をつくらないか、コンディショニングですね。あと、メンタル的なもの。体のケアとかは結構、大事だと思う。〝心技体〟という言葉あるじゃないですか。僕は順番が〝体技心〟だったんですよ。体のコンディションがついてこないと技術もつけられないし、気持ちもついてこないと。気持ちばかり先走ってしまうと、僕の場合よくなかった。体あってこその選手たちだと思う。当たり前ですけど、すごい選手でもけがしていたら試合に出られない。そこの考えは僕も継続すると思うので、そうなるようにいろんな知識を入れていきたいなと思います」
―米国ではコンディショニングに対する選手の意識が高かった
「選手がというよりも、チームがですね。選手もそれが当たり前になっている。もちろん休むのも大事ですけど、休むのがコンディショニングじゃないと思うので休み方と休む前に何をするか。その日の終わり方はすごく大事にしました。それが結局、次の日につながるので」
リカバリーを〝当たり前〟に「若い時からやっておかないと、年を取ってから続かない」
―練習後のリカバリーが大事になりますか
「もちろん打たれたら、やりたくなくなってしまう気持ちもわかるんですけど、それだと次の日、後悔するので。それもメンタルコントロールかなと」
―金子コーチ自身も、現役時代は気をつけていたことですか
「若い時はそんなことしなくても体が元気。でも、若い時からやっておかないと、年を取ってから続かないんですよ。僕はよく私生活で例えるのですが、歯を磨くことはいま、当たり前じゃないですか。小さい時からやってきたから、しないと気持ち悪い。そういうことだと思うんですよ。プロ野球選手が、例えばリカバリーとコンディショニングを頑張ってやることはダメだと思う。というのはずっと思っていましたし、向こうに行ってもやっぱり大事だなと思いました」
―その考えは、日本ハムの選手にも伝えていきたい
「伝えないとダメだと思います」
留学中にはレ軍・筒香の打撃投手も「向こうでも僕が体を酷使しているわけじゃないので」
―5月中旬に再び渡米するそうですね
「次はマイナーをメインに。もうシーズンが始まっているので試合ですね。また2カ月ぐらい行って、日本に帰って来きます。(日本にいる期間は)鎌ケ谷にも行きます」
―米国ではレンジャーズとマイナー契約を結びキャンプ参加した筒香選手の打撃投手を買って出たとか
「2回しか投げてないですが。向こうでも僕が体を酷使しているわけじゃないので、体がなまってしょうがないです(笑)」
トレーニングは継続中でも「ちょっと気持ちの入り方も違う」
―体形維持は気をつけていますか
「トレーニングは続けています。でも、選手の時ほどできない。時間もそうだし、選手のときは試合で結果を残すという目的があるじゃないですか。それがなくなってしまうと、ただの体形維持になっちゃう。やっぱり、ちょっと気持ちの入り方も違いますよ。選手時代は食事にも気をつけていました。いまは現役時代ほどではなく、アメリカでは好きな物を食べていました」
―英語を使う環境には慣れましたか
「英語はしゃべれないです。通訳サマサマです。言葉の壁は大きいので、僕もしゃべられるようになりたいです」