アマ野球
2023/04/10 17:05

硬式と軟式の二刀流にF熱視線 ウイン北広島の150キロ右腕・早川は北広島市役所勤務の公務員

9日のオープン戦・道都大戦で好投したウイン北広島の早川(撮影・西川薫)

異色の二刀流が北の大地に! 日本ハムのスカウトも注目

 無名の道産子右腕に日本ハムが熱視線-。日本ハムが2023年から本拠地とする北広島に、硬式と軟式の二刀流に挑戦中の投手がいる。社会人野球クラブチーム・ウイン北広島のエース右腕・早川太貴投手(23、北広島市役所)だ。22年8月のJABA北海道結成記念大会で、企業チームの日本製鉄室蘭シャークス打線を九回途中まで無失点に抑える快投を披露。さらに、同年9月には、北広島市職労の投手として、軟式野球・全日本自治体職員等野球選手権大会で準優勝に貢献。22年12月には自己最速を更新する150キロをマークした。伸びしろ十分な本格派右腕に、地元・日本ハムのスカウトも注目し始めた。

 22年春、北広島市役所に就職。毎日、日本ハムの新球場「エスコンフィールド北海道」を見上げながら通勤する。大勢のファンが詰めかけているが「僕は行かないって決めた。プロになってから。もちろん行きたいのはファイターズですし、みんな応援してくれると思うんですけど、選んでくれるところが他にあるなら。(プロ入りは)ちっちゃい頃からの夢だったので、どこでも行きます」。公務員からのプロ入りは、1971年に相模原市役所からドラフト外で大洋(現DeNA)に入団した高木由一氏のケースがあるが、もし指名されれば北海道関連選手では初の快挙だ。

2023年も好スタート 9日のオープン戦で道都大打線を5回0封

 今シーズン実戦初登板となった9日のオープン戦・道都大戦でも快投を披露した。185センチ、94キロの恵まれた体格から放たれる直球を中心に、得意のスプリットも駆使。5回で5三振を奪い、1安打無失点とスコアボードに「0」を並べた。試合開始時の気温は6度ほどと肌寒かったが、直球最速は146キロをマーク。「バッターを立たせるのも(今季)初めてなんで、力のバランスっていうか、毎回良かったわけじゃないんですけど、ハマった時はそれなりに力が入ってた。そこがもっと出てくれば、安定して140キロ台中盤とか後半、150キロは出せるかな」と上々の手応えを得た。

江別市出身の本格派右腕 高校最後の夏は右腕骨折で無念の不出場

 江別市出身で、大麻高では2年秋から1番を背負ったが、3年春の札幌支部大会中に右腕を疲労骨折。「そんなに影響ないって言われて投げていたんですけど、夏の大会の1週間前の練習試合でバキって折れて…」。最後の夏はベンチ入りこそしたものの、右肘を包帯でつったまま、仲間が支部予選で敗れ去る姿を見届けるしかなかった。当時の球速は「出て130キロ。125キロくらい」。両親の希望もあり、猛勉強の末に国立の小樽商大へ現役で合格した。

小樽商大で急成長 オリックス・山本由伸のトレーニング法も実践

 悲運のエースは小樽商大で飛躍的に成長を遂げた。1年の冬からウエートなどを中心とした筋トレに励み、翌春には体重が10キロ増え、90キロ。一回り大きくなった。それに伴い、球速も140キロ台に突入した。3年時はコロナ禍で思うような練習ができなかったが、4年になるとオリックスの山本由伸投手(24)のトレーニング法を取り入れた。ジャベブリックスロー(やり投げ練習)を敢行したり、「キレダス」などのサポート器具を使ってフォームを改良。「ボール以外で投げると、手先だけじゃ投げられない。体全体で投げる感覚をつかめた」と、球速もさらに7キロ増して147キロとなった。

ウイン北広島入団後もストイックな日々 中村監督もプロ入りへ期待

 就職と同時に、ウイン北広島に加入。昨季、前人未到の二刀流に挑戦し、ポテンシャルが開花した。チームの全体練習は、毎週水曜と週末の早朝5時から、札幌日大高のグラウンドで行っているが、早川はさらに火曜と木曜の早朝にも同校グラウンドを借り、単独で走り込みなどのトレーニングに汗を流してから仕事に向かう。さらに体重管理のために週に3、4回はジムに通うなどストイックに体づくりに励んでいる。今年はクラブ創設30周年の節目。発足時から監督を務める中村薫監督(68)は「彼は練習の虫。地元(日本ハム)に行ってくれれば最高」。クラブ初のプロ入りに期待を寄せる。

軟式での経験がプラスに 「スピードも出るようになった」

 昨年5月の都市対抗北海道予選は1次予選で敗退も、8月に軟式の全道自治体職員等野球選手権大会に出場し、8年ぶりの優勝を引き寄せた。同22日に行われたJABA北海道結成記念大会では1回戦の室蘭シャークス戦に先発。八回まで4安打0封の好投を披露した。そこから1週間後のJABA北海道地区クラブ大会では、3試合で先発、中継ぎ、抑えとフル回転。優勝に大きく貢献すると、その2週間後には、再び軟式の全日本自治体職員等野球選手権大会で準優勝に貢献し、敢闘賞を受賞。硬式と軟式という離れ業を、難なくやってのけた。「軟式を投げてから、調子が良くなった。ボールも違うし、安定させるには体幹や足腰を意識。そういうイメージで硬式でも投げたら、指にかかるので、スピードもおのずと出るようになった」と相乗効果を口にする。

今春から硬式に専念 企業チーム相手に快投し一気にドラフト候補へ

 5月20日には都市対抗野球北海道地区予選が開幕する。今春は硬式に専念し、4年ぶりの2次予選進出を狙う。「まずは企業チームの一角を崩して2次に行って、そこでもちゃんと、自分のやってきたことを出す。通用しないってことはない。調整してなんとかやっていきたい」。秋のドラフトまでに実績を積み上げる。

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