Jリーグ
2023/02/07 19:00

青森山田高を強豪に育て、今季からJ2町田で指揮を執る黒田監督《新天地で輝く》

道産子のプライドを持ちながらJリーグの舞台で指揮を執る黒田監督

全国高校選手権で3度全国制覇の名将 道産子の誇りを持ってJの監督へ転身

 青森山田高サッカー部を29年間指導し、全国有数の強豪校に育て上げた札幌市出身の黒田剛監督(52)が、今季からJ2町田ゼルビアの指揮を執っている。高校年代トップの指導者から自身初のJリーグの監督へと転身するという新たな挑戦が始まった。

 全国高校選手権で6度も決勝まで導き、そのうち3度優勝させている。本年度は惜しくもベスト8で終わったが、そこから間もなくしてプロの世界に飛び込んだ。町田では「それぞれが人生を懸けて、自分の覚悟を持ってプロという職業を選んでいるので、しっかりとリスペクトしながらやっていきたい」と、自身もプロとしての覚悟を持って挑んでいく。指揮を執り始めたキャンプでは、「みんなの話を一つ一つ聞きながら、良い組織、ファミリーのような組織をつくりたい」と目標を語った。

「コンサドーレに一歩でも近づけられるように」全力で昇格に導く

 道産子ということを強く意識している。「北海道で生まれた一人の男が関東、東京というところのJリーグで戦える。そんなステージに立てるということは、北海道民にとっても、すごくうれしいことだという誇りを持ちながら、コンサドーレに一歩でも近づけられるように頑張りたい」。J1の舞台で生まれ故郷のクラブと戦うためにも、チームを全力で昇格に導くつもりだ。

札幌の三上代表取締役GMは高校時代の北海道選抜で共に戦った仲

 登別大谷高サッカー部出身で、室蘭大谷高(現・北海道大谷室蘭)出身の北海道コンサドーレ札幌・三上大勝代表取締役GM(51)とは長い付き合いだ。「年が一つ下で、北海道選抜でやった時の私のサブです。そこだけは強調しておきます」と、笑いながら当時の関係性を明かす。今後、札幌と対戦することがあれば、バックヤードでの対峙も注目を集めそうだ。

 高校生を教えていた時も故郷のことはずっと気にかけていた。「北海道から出て、もう30年近くなりますけれど、仲間や家族、たくさんの関係者が北海道にいますから。いつも青森にいながらも、お隣、海を渡れば北海道だな、ということも意識しながら、道産子のプライドを持ちながらやってました」と隣県から思いを馳せてきた。

北海道の育成世代も「雪というものをストレスに感じずにパワーに変えられる」工夫が必要

 北海道の育成世代については、「ユース年代も含めて、かなり低迷しているという印象がある。あれだけ小学校のチーム数が多くて活動が盛んな北海道で、ユース年代、ジュニアユース年代があれぐらいだと、ちょっと寂しい感じもします」と、全国の舞台では結果を残せていない現状を憂う。

 冬の時期に屋外でボールを使ったトレーニングがなかなかできない雪国の宿命もあるが、青森で強豪チームをつくり上げた黒田監督は言い訳にしない。「雪というものをストレスに感じずにパワーに変えられる、または雪を利用して何ができるかということをポジティブに考えながら、一人一人の精神のところも含めて育成年代で強化していくということは、北海道サッカー界の成長につながっていく」と語り、降りかかる逆境をはね返す力や、それを逆に利用するための工夫が必要だと説く。

 もちろん地理的な難しさも十分に理解している。「海があるということ。陸続きではないということはすごく大変なことだけど、そこをもう一歩、乗り込んでね」と、自ら選手バスを運転し、プリンスリーグ東北やプレミアEASTを渡り歩いてきた黒田監督の発言には説得力がある。そして発展のためには「やっぱり良い指導者が1人、2人と増えることで、北海道のサッカーも充実してくる」と今後の指導者のレベルアップに期待を寄せた。

青森山田高の後任を務める同じ道産子の正木監督にもエール

 青森山田高の現監督には、2004年からコーチとして共に戦ってきた正木昌宣さん(41)が就いた。「全国トップに押し上げるためには、彼の力はすごい重要だったし、その時の気持ちを忘れずにやってほしい。それにプラスで、やはりチーム、組織というものは、本当に細かいマネジメントが必要になってくる。人それぞれにいろいろな気配りや目配りをしていくことも必要。今までやってこなかったことも含めて、監督として大きく成長して、今の青森山田の牙城を崩されないように、強さを維持、継続していってほしい」と、最後は同じ道産子の愛弟子にエールを送った。

 Jリーグは、各カテゴリーでもうすぐ今シーズンの幕が開く。舞台は変われど道産子監督としての誇りを持ちながら、新天地でJのクラブを強豪に育て上げてみせる。


■プロフィール 黒田 剛(くろだ・ごう) 1970年5月26日生まれ、札幌市出身。登別大谷高、大阪体育大でプレーしたのち、94年に青森山田高のコーチに就任。95年からは監督としてチームを指導し、在任期間中に全国高校サッカー選手権優勝3度(2016、18、21年度)、全国高校総体優勝2度(05、21年)、JFAプレミアリーグファイナル優勝2度(16、19年)JFAプレミアリーグEAST優勝3度(16、19、21年)など数多くのタイトルを獲得し、青森山田高を全国屈指の強豪校に育て上げる。主な教え子には、日本代表MF柴崎岳(レガネス)、郷家友太(仙台)、檀崎竜孔(マザーウェル)、松木玖生(FC東京)らがいる。23年よりJ2町田の監督に就任し、初めてJリーグチームの指揮を執る。

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