高校野球大好きビト・SET YOU FREE千葉智紹さんに聞く 道産子球児たちのもう一つのドラマ【無料記事】
高校野球は年間350試合を生観戦
ひと夏に懸ける球児たちのドラマを追いかける〝高校野球大好きビト〟がいる。釧路市出身で全国を飛び回る千葉智紹さん(50)だ。2004年夏の甲子園で駒大苫小牧の北海道勢初優勝を見届けたのをきっかけに高校野球にどっぷりとホレこんだ。そこから20年以上、年間350試合ほど生観戦している高校野球フリークの猛者だ。
南は沖縄、北は北海道まで全国行脚
音楽のライブイベント「SET YOU FREE」などのプロデュースを全国各地で行う傍ら、南は沖縄から北は北海道の地方大会を渡り歩き、春夏の甲子園は全試合を観戦。小中学生や大学生、社会人、独立L、プロ野球も合わせると年間450試合を超えるという。
追っているのはドラフト候補やスカウトが注目するような選手にとどまらず、いろんな苦労や困難を乗り越えて夏に臨んでいる選手たち。甲子園を目指して日々努力を重ねている球児たちにフラットな目線で注目し、スタンドから熱視線を送っている。
【高校野球を年間350試合観戦する甲子園ラーメン店の千葉マネジャー】
高校野球を通したネットワークも幅広く、プロ野球のスカウトや高校、大学の指導者、また高校野球大好き芸人・いけだてつやさん(43)とはイベントでコラボするなど多岐にわたる。
右手だけでプレーした檜山北の澤谷
そんな千葉さんが今回、道新スポーツデジタルの取材に応じ、6月20日から観戦した南・北大会で出会った道産子球児たちのもう一つのドラマを教えてくれた。今回、一番印象に残ったのは「檜山北の澤谷くんですね。左手を骨折しながら最後の夏に挑んで、右手だけでプレーしていました」。
■全国高校野球選手権南北海道大会(6月21日、テーオーオーシャンスタジアム函館)
▽1回戦 檜山北9-1函館高専
秋春は負傷で断念 最後の夏こそは
部員13人で大会に臨んだ檜山北の澤谷航青外野手(3年)は1、2年時は投手だったが、昨秋に新チームとなってから適任者がいなくなった捕手に転向。しかし、秋の大会1週間前の練習試合で左腕の尺骨骨折。プレートを入れる手術を経てベンチ入りはしたが出場は断念。今春は回復して出場する予定だったが、またも大会1週間前の練習試合でファウルボールがプレートの端に当たって再び尺骨骨折。春も出場がかなわず、ギプスで固定したままベンチから声を出すだけに終わった。「最後の夏を前に医師に確認したら、装具着用で左手を使わなければという条件で出場の許可が下りて、それ以降は猛練習をしたらしいんです」という。
打撃や外野守備も右手だけで貫徹
千葉さんは1回戦となった函館高専戦を観戦。「ライトを守っているんですけど、右手にグラブをはめてボールを捕ったらグラブを外して右手で投げていました。ノックでそれを見た時は衝撃でしたね。打席は左打ちで、右手一本で打席に立っていました。試合後に関係者に聞いたら、本来は右打ちなのに左手が使えないから左打ちの練習をしていたそうなんです。それでもバットに当てていて、4打席目には四球で出塁。5打席目には右手だけでタイムリーを打ったんですよ」と、感動の試合を振り返った。
試合後に関係者に聞くと、「1、2年生の時は上級生もいたのでエースではなかったけど、好投手だったようです。お母さんも『本当は体のことが心配ではあるんですけど、最後は本人が出たいと言うので応援してます』と言っていました」。2回戦の知内戦は負けてしまったが、そこでもタイムリーを放ったという事を聞き、驚きと共に感慨深いものを感じたという。
いきなり今年のベストバウト候補
■全国高校野球選手権南北海道大会(6月21日、テーオーオーシャンスタジアム函館)
▽1回戦 函館西3-2函館工業
延長で古豪撃破した函館西の情熱
次に印象に残ったのは、一緒に観戦した高校野球大好き芸人・いけだてつやさんと「いきなり今年のベストバウト候補」と盛り上がった函館西-函館工業戦だ。函館工業は言わずと知れた全道大会の経験が豊富な古豪。函館西は果敢に立ち向かい、延長十一回タイブレークの末に勝利をものにした。「函館工は七回からリリーフした2年生左腕・工藤瑛大くんが4回2/3を1安打7奪三振と素晴らしいピッチングだったんですが、函館西の勢いがすごくて最後に競り勝ちましたね」と心を動かされた。
函館西は楽しみながら野球をやっている印象といい、「監督が一番、声を出していましたね。試合中の円陣で『行くぞー!』と一番声を張り上げていて、なかなかそういう学校も最近ないなと。西川監督の情熱や熱さを感じました。ベンチも、八回に追いつかれたけど、その熱さや気持ちが切れていないのが伝わってきました。雨の中の熱戦で、好投していた近藤大斗くんからバトンを受け取ってタイブレークから登板した堺幸之進くんの気迫のピッチングもすごかったですね」。
駒大苫小牧の香田元監督とも親交
この春に部長から就任した西川佳希監督とは知内の部長時代からの知人で、駒大苫小牧の香田元監督(現・駒澤大監督)を中心とした道内各地の指導者らが熱く語り合う場だった「北誉会」で出会った。
「勉強熱心な監督です。『選手たちには純粋に楽しんで野球をやってもらいたい』と話してました。就任から3カ月でここまでのチームカラーになったのはすごいなと。試合の終盤に、劣勢になってからスイッチが入るのではなく、最初からそのテンションで行きたいと言っていましたし、次の函館大有斗戦は負けてしまいましたけど、ロッカールームでは何度も『短い間だけど、ついてきてくれた3年生に感謝』と話したそうです。今後が楽しみですね」
プロレスで負傷しても翌日には観戦
今回は1週間ほど北海道に滞在し、6月27日にはプロレスラーとしての活動で東京へ。試合の翌日には愛知大会を観戦し、2日後からは都市対抗野球の代表決定戦を見て回った。
また、取材を受けた日も高校時代に憧れた大仁田厚との対戦直後だったが、負傷した患部の痛みをこらえながら今年廃部が決まったセガサミーの都市対抗野球予選を観戦。「何もしないでホテルにいると痛みと向き合うことになる。野球を見るのに球場へ行くと自然と痛みを忘れられる」と不敵な笑みを浮かべ、持ち歩いている自作のスコアブックにペンを走らせた。試合後は「よく戦国武将も利用してたというので」と、温泉付き銭湯で名誉の勲章となった傷を癒やしていた。

南・北3回戦以降の道産子注目選手
そんな忙しい毎日を送りながらも今月7日から始まる北大会3回戦からは再び北海道に戻って観戦する予定だ。その際の注目は「秋と春に見て、まだ夏に見てない選手がいるので、彼らの成長が楽しみですね」と、3選手の名前を挙げてくれた。
球速より破壊力
まずは帯広北の2年生左腕・小林弓斗投手。181センチ、90キロで、スリークオーター気味のフォームから珍しい軌道のボールを操ると言い、どんな投手なのか表現の仕方に困って斎藤啓太監督に聞くと「球速より破壊力」という言葉が返ってきて腑に落ちたという。「道内の強豪校との練習試合でも打たれていないというので、非常に楽しみな存在ですね」。
道東では珍しい大型スラッガー
2人目は中標津の合掌彪雅。184センチ、91キロのスラッガーで、強豪校から転校して入部し、この春から出場が解禁になった。「釧根支部ではなかなか見たことがない大型選手」といい、そのポテンシャルに注目しているという。
竹バットでも本塁打にできる大砲
3人目は駒大苫小牧の4番・野本洸志内野手(3年)。177センチ、89キロ。高校通算15本塁打のうち木製バットで3本、竹バットで2本を放った。「大砲にありがちなフリースインガーではなく、外の変化球にも対応できる。スイングスピードは160キロで高校通算打率は4割。父親も駒大苫小牧OBで、香田元監督の教え子です」。
まだまだ興味や楽しみは尽きない。今度はどんな出会いが待っているのか、まだ知らない心が動くドラマはあるのか―。その好奇心が千葉さんを全国の地へ向かわせる。
【高校野球を年間350試合観戦する甲子園ラーメン店の千葉マネジャー ~駒苫の甲子園Vで激変した半生】

