《岩本勉のガン流F論》野村の一発でよみがえった片岡篤史の涙と首脳陣への「ボケ!コラ!」
■パ・リーグ2回戦 日本ハム4-6ソフトバンク(3月28日、みずほペイペイドーム) 試合詳細はコチラ
見逃してくれないホークス打線
懸念していたシーンが現実となってしまった。達孝太だ。三回までパーフェクト。四回まで1安打無失点と好投していたのだが、五回につかまった。1死後、2四死球とヒットなどで2死満塁とされ、近藤に逆転の3点二塁打。その後も3本のヒットを浴びて一挙5点を奪われた。
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達は練習試合とオープン戦を通じて無失点のままペナントレースに突入した。懸念していたこと。それは失点した後の変化。ハッキリ言うと、冷静さを失っていた。首を振ってのストレート。そのボールを早いカウントでことごとく、はじき返された。3回り目のホークス打線。いくら給料もらってんねん! と言いたくなるような強打者ばかり。その嗅覚はいずれも一級品。力任せのボールだけでは封じることはできない。
信頼がゆえのKO降板
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本人が言っている。球種の割合について「フォークを40%ぐらい」と。あの場面で、フォークを投げられるぐらい、もっとその落ちる球に自信を付けていくべきだろう。ただ、この経験を生かさない手はない。ハッキリ言う。三回までの完全投球を帳消しにするKOを食らった。だが、必要とされているからこそ、5点を奪われるまでマウンドを任せられた。信頼のない投手ならば、満塁となった時点で交代を告げられていても不思議ではない。後に、「あの連打があったから、今がある」と胸を張るぐらい、圧倒的なピッチングを見せていってや!
迷いのない力強いスイング
目頭を熱くさせてくれたのが野村ジェイだった。二回の今季初打席で先制ソロ。八回にはフェンス直撃のヒットを放った。前日の開幕戦。出場機会を与えられなかった。悔しさは相当だったはずだ。その思いをバットに込めたのだろう。これまで、スイングに迷いが見られることが時折あった。それがなかった。思い切りの良さがバットのヘッドを走らせ、好結果をもたらした。
野村の一発を目にし、片岡篤史の涙を思い出した。1996年の開幕戦。私はそのオリックス戦に先発していた。結果は0-1の完投負け。星野伸之さんに投げ負けた。球場帰りのバス。私よりも悔しさを前面に出していた男がいた。先輩野手の片岡さんだった。その試合、まさかのスタメン落ち。出番は訪れなかった。タオルで滴り落ちる涙を拭っていた。
開幕2戦目からの全試合出場に期待
次の試合。片岡さんは5番で先発出場し、二回に先制弾をぶっ放した。ダイヤモンドを一周しながら、叫んでいた。その口元が言っていた。「ボケ!コラ!」。自分を開幕戦で起用しなかった首脳陣への心の声だったのだろう。野球人として私は、この出来事を世に出すことのない〝心のコラム〟に書き込んだ。後に片岡さんに〝コラム〟を披露した。すると、「ありがとうな。あの悔しさがあったから頑張れたんや」と振り返っていた。その年、片岡さんはキャリアハイの打率.315をマークした。
野村ジェイよ、スタートの143分の1で味わった悔しさを、この日の試合を加えた143分の142で晴らしていってもらいたい。