玉井大翔 マウンドで喜ばない 独自スタイルを貫く深い理由とはー 谷元さん登場で本音トークに
登板後も笑顔を見せずにベンチへ戻る玉井
クールに無表情なワケ
日本ハムの玉井大翔投手(33)が復活のシーズンを戦っている。昨季は腰痛の影響で1軍登板ゼロだったが、今季はリーグ戦1試合を残し、ここまで40試合に登板。防御率2.25、17ホールド、1セーブをマークしている。
冷静な投球スタイルが特徴的で、ピンチで火消しに成功しても笑顔を見せない。そこには、自らの信念に基づく深い理由があった。
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熱さは内に秘める。厳しい場面をしのいでも表情を変えない。ほえることも、ガッツポーズを繰り出すこともない。ベンチが沸いていても、静かにマウンドを降りる。生真面目にも映る姿勢には、明確な意志が込められていた。

当たり障りなくいきたい
「最近は少なくなりましたけど、昔から回またぎをする機会が結構あって。そこで気持ちを切らさないように。(ガッツポーズなどを)やった後、打たれたらダサいじゃないですか。向こうのバッターの印象にも残るだろうし。次の登板で対戦することもある。当たり障りなくいきたい」
いつも回またぎをする前提でマウンドに上がる。だから、抑えて安心するのではなく、気持ちを落ち着かせて次の回に備える。また、相手打者を刺激しないような配慮も頭にあった。それは計算ではなく、長年の経験で身に付いた習性だった。
昔から染み付いていて… このあと大先輩が登場
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「交代と言われるまでは(続投の)可能性はあると思っておけ―。昔からそう教えられてきたので。それが染み付いていて。プロ野球というより、高校野球の時からそういうものだと思っていました」

タイプ別アドバイス 参考になります
ここで、プロ通算524試合に登板しているOBの谷元圭介打撃投手(40)が登場。現役時代は玉井と同じような役回りをこなしてきただけに、共感できる部分があった。
玉井「先輩もそんな感じでしたよね。燃えるタイプじゃないですもんね。どうしてですか?」
谷元さん「格好悪いから。抑えてうれしいという感情ある?」
玉井「抑えた時は、ホッとしているかもしれないです」
谷元さん「そう、ホッとする。だから、よっしゃーが出ない。ただ、たまにわざと、チームを鼓舞するためにやっていましたよ。計算して(笑)。燃えて投げたい人はそれでいい。燃えたら力みにつながる人は出さない方がいい」
8月27日、試合前練習で谷元打撃投手(右)と話す玉井
短期決戦という特殊な状況なら?
特殊な状況ならどうか。1勝の重みが増すCS(クライマックス・シリーズ)や日本シリーズでしびれる局面を抑えた時、自然と感情が高ぶる可能性はありそうだ。
玉井「僕はCSとか1試合も投げたことがないですから。タイミングが悪いというか、チームがCSに出た時は1軍にいられなくて。だからどうなるのか、分からないです。日本シリーズ第7戦なら後ろがないので(次の対戦を考えなくていい)。回またぎの可能性はあるかも…」
谷元さん「僕はCSの時に(感情が)出ましたよ。一、二塁か一、三塁のピンチ。一打で逆転みたいな場面。抑えた後は(球場全体が)わーっとなって、よっしゃーと」

スポーツ新聞の1面に載るのはどんな時?
2人の感覚は似ている。リリーフの厳しさ、過酷さを知っているからこそ、喜びよりも安堵が勝るのかもしれない。
谷元さん「抑えて当たり前で育ってきた。今は中継ぎも大変だよね、という風潮ですけど。1イニングぐらい簡単でしょ、1アウトぐらい簡単でしょ、と思われていましたから」
玉井「あの雰囲気、めっちゃ嫌ですよね。打たれたら戦犯だし、抑えて当たり前」
谷元さん「目立つポジションではない。(リリーフが)スポーツ新聞の1面に載るのはどんな時?」
玉井「ノーアウト満塁を抑えた時ですか?」
谷元さん「いや、打たれた時。逆転打を打たれた時」
玉井「間違いないですね(笑)」
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その指摘は的を射ている。毎試合登板するつもりで準備し、体を酷使するが、脚光を浴びる機会は少なく、打たれた時の責任は重い。中継ぎ投手の宿命だ。だからこそ、どんな時もクールに腕を振る玉井のような存在が貴重で、チームに欠かせない。
