活動拠点を北海道から東京へ
文句なしの力を付ける―。柿澤琉寿(るうす)と佐藤里駈哉(りくや)が組む札幌発のお笑いコンビ・偽ビートルズが、今春から大学進学を機に、活動の場を東京へと移している。2023年には高校生ナンバーワンの漫才師を決める「ハイスクールマンザイ」で優勝。「M-1グランプリ」でも23、24年と3回戦まで進み、確かな実力を示している。これまでの歩みや大学お笑いに飛び込んだ経緯、そして大学卒業後に描いているプランなどに迫った。
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■プロフィール 偽ビートルズ(にせびーとるず) 札幌出身の柿澤琉寿(駒大ー石狩南高)と佐藤里駈哉(埼玉大ー札幌新川高)からなるお笑いコンビ。栄町中の同級生だった2人は別々の高校に進んだが、高校1年時の2022年8月にコンビを結成した。翌23年には高校生ナンバーワン漫才師を決める「ハイスクールマンザイ」で優勝。同年と24年には2年連続で「M-1グランプリ」の3回戦に進出するなど、新進気鋭の若手コンビとして注目を集めている。大学進学で上京し、今春から戦いの舞台を東京に移した。
―コンビ結成は何年ですか
佐藤「正式には高校1年生のときなので、22年8月です」
柿澤「中学のときの修学旅行で出し物みたいな遊びの漫才を始めたのは僕が最初に声を掛けたんですけど、高校のときに『ハイスクールマンザイ』という大会に出ようと言ったのは相方なので、正式に始めたのは相方からですね」
ある日突然ツッコんできた
―中学1年時の同級生ということですが、お互いの印象は
柿澤「元々相方はお笑いとか全く興味なくて、ある日いきなりツッコむようになってきました」
佐藤「最後の学級日誌みたいなもので、○○ランキングのアンケートを取っていて、その中の面白い人ランキングで相方がぶっちぎり1位だった。自分もお笑いとかは意識していなかったのに2位に入っていて『じゃあ、やってみるか』と(笑)」
柿澤「僕の影響が大きいとはすごく言いますね」
佐藤「音楽の趣味とか、お笑いとか」
「僕色に染まったかも」「調教されました」
―寄っていっている感じですか
佐藤「悔しいですけど」
柿澤「もしかしたら僕色に染まったのかもしれないです(笑)」
佐藤「調教されました」
―憧れの芸人は
佐藤「自分はガクテンソクの奥田さんです。ああいう感じになりたいですね」
柿澤「僕はランジャタイの国崎さんとか、ロバートの秋山さんとかですね。自分のワールドを持っている人が好きです」
出ようと思ったきっかけは?
―漫才をしたのは中学の一度だけの状態で「ハイスクールマンザイ」に出ようと思ったきっかけは何ですか
佐藤「元々大会の存在自体は知っていました。お互いに部活がしんどすぎて、本当に辞めたかったので、辞める口実作りに(笑)」
柿澤「公立校の野球部だったんですけど、週7とかで活動していて、それがきつくて本当に何か抜け道を探そうと思ったら、漫才の話が来ました。助け船じゃないですけど、ガチで頑張ってみようとなったのが、最初のスタートです」

―周囲は驚いたんじゃないですか
柿澤「本当にびっくりしてました。家族に話したときもめちゃくちゃびっくりしていて。でも友達は驚きもありましたけど、すぐ背中を押してくれたような感じでした」
付いていっただけで、手元に賞金!
―そして、2年生のときに「ハイスクールマンザイ」で優勝しました
柿澤「初めて目指したもので優勝できた。ずっと野球をやっていたんですけど、そういうのも叶わずに、本当に心から優勝したいと思ったのが『ハイスクールマンザイ』で。優勝するためにいろいろ頑張って、優勝できたので、本当にできるんだと自信につながりました」
佐藤「ネタ作りなり、構成なりを全部相方にやってもらっていて、付いていっただけで、手元に賞金が残ったので、本当にラッキー(笑)。バイトする時間分」
柿澤「時給で計算してたの?」
佐藤「1、2カ月はシフトに入らなくていいなとか」
―昨年のM-1は1万組を超えるエントリー数の中で、2年連続3回戦に進出しました。一昨年とは手応えは違いましたか
柿澤「正直、最初の3回戦進出は何も分からない状態で3回戦進出だったので、うれしいよりも反響がすごかったから『あ、うれしいことなんだ』みたいな感じだったんですけど、去年はベストアマチュア賞を狙っていて、それこそ準々決勝まで行っていたら、多分選ばれるぐらいの確率です。そこを目指して、2回戦はめちゃくちゃウケて、3回戦もまあまあウケたので『これ行っただろ』と思っていたので、準々決勝に行けなかった悔しさの方が強かったですね。結果的には前回より劣っているという感じでは見られなかったので良かったですけど、悔しい気持ちがありますね」
北海道の恩恵を受けたのかな
―高校卒業前にはトム・ブラウンやヤーレンズと一緒にライブをしていました
佐藤「逆に北海道だから恵まれていたんだと思います。他に競合とかがいなかったので、北海道の方々にいい思いをさせてもらった部分が多いと思います」
柿澤「高校でお笑いをやっていたのが、北海道では多分僕らだけだったんですけど、多分東京とかにいたら、めちゃくちゃいると思います。普段お笑いの場が少ない分、恩恵を受けたのかなと感じます」
―大学進学は既定路線でしたか
柿澤「ギリギリで決めた感じですね。最初は『ハイスクールマンザイ』で優勝して、NSC(吉本総合芸能学院)無料という特典があったんですけど、それでお笑い芸人を目指すか、ともならずに、相方も高3の最後らへんぐらいに『大学お笑いやろう』みたいな」
佐藤「高校生のうちで辞めるつもりでいたんですけど、去年のM-1グランプリで結構手応えあったけど、3回戦で落ちちゃったので、悔しさもあり、楽しさもあったので、続けるかと」
柿澤「僕は元々プロになるつもりでした。それも大学お笑い経由せずに、高校卒業してNSCというのが頭にあったんですけど、ギリギリぐらいになったときに大学生とライブで共演することが多くなって。北海道の高速ぷりんさんとか、ナユタさんとか、ぷらたなすさんとか、そういう方とライブすることによって、大学お笑いを経由した方がいいのかなっていうときに、M-1で令和ロマンさんが優勝して。まさに大学お笑いを経てプロになった人なので、これは大学お笑いに行かなきゃなと。結果、高3のM-1終わりぐらいで決まりました」
やるなら東京で勝負を懸けたい
―北海道で頑張る選択肢は
柿澤「何かと不便というか、ライブするにも同じようなメンバーで同じようなお客さんになるので。東京はオーディションとかもありますし。北海道ってどれだけ頑張っても、ちょっと色物扱いみたいにされるので。本場と言ったら大阪ですけど、東京も今すごく勢力を上げてきているので、やるなら東京で勝負を懸けたいなというので、上京という形になりました」
―大学卒業後のプランは考えていますか
佐藤「相方はプロになると言っているんですけど、自分はプロになるかどうか迷っていて。大学お笑いはいろいろなコンビを組めるので、(柿崎が)そこでいろいろ試してもらって、いい人がいたらそっちでやってもらって、いなかったら自分がプロになろうかなと思います」
どこかの事務所に声を掛けてもらうのが目標
―珍しい考え方ですね
柿澤「悲しい話ですよ、ちょっと」
佐藤「本当に乗っかっているだけなので。やりたくはあるんですけど、足は引っ張りたくない」
柿澤「この4年間でどこかの事務所に声を掛けてもらうのが、今の目標です。NSCからじゃなくて、いきなり吉本1年目からできるよ、とか、他の事務所からも青田買いじゃないですけど、そういう感じになるために今、大学お笑いで頑張ろうというのが目標です。4年間で何も引っかからなかったら、僕も北海道に帰るかもしれないです」
佐藤「自分は一応保険で教員免許を取るつもりです。いつ切られてもいいように(笑)」
―大学は別々ですが、どういう風に活動を進めていますか
佐藤「コンビで早稲田大学のお笑いサークル『LUDO』というやつと、自分が埼玉大学なので、埼玉大学の『無印』というやつに入ってます」
柿澤「僕は埼玉大学のサークルにも入りつつ、僕は駒澤大学なので駒澤大学のサークルと僕は3つ入ってます」
佐藤「ちょっと交通費が…(笑)」
30秒で100人! 10時に募集開始して即締め切り
―大学お笑いはどうですか
柿澤「想像していた通りのものもあれば、『LUDO』は人が多いので、400人ぐらいから100人を応募フォームの早打ちで、先着順に決められるんです。『10時にやります』というアナウンスがあって、『こういうフォームでやります』と練習用のフォームみたいなのが作られていて、それで10時に始まって10時に終わりました。30秒ぐらいで100人集まっちゃって。その選ばれた100人がいて、ネタ見せとかもあるんですけど、結構、厳しいことを言われたり。初心者の人もバンバン言われたりしています。逆に埼玉大学の方はアットホームです。人数も少ないですけど、その分、面白くないわけじゃなくて、めちゃくちゃ面白い先輩もいますし、楽しむサークルとして活動しているのもあります」
ボケとツッコミの交換 いろいろ試行錯誤
佐藤「大学お笑いを始めてみて、自分はずっとツッコミがやりたくて、相方はボケがやりたいんですよ。でも、今は大学お笑いを始めて、全部逆にして、いろいろ通っていて」
柿澤「ネタによって変えているんですよ」
佐藤「そっちで結構いいところまで行っちゃったので、やりたいところとウケるところの塩梅をどう保つかが難しいです」
柿澤「台本によって決めているので、僕がツッコミで相方がボケの場合もあって、今一番いいネタがその形だったので、そこをうまく変えられるか」

―役割を変えてみての気づきもありますか
柿澤「基本的に企画とかで話すときは僕がボケで相方がツッコミなので、それが定着しているんですけど、ネタは台本で作っているので『この人にこれを言わせたら面白いな』ではなくて、普通に台本として面白いものを作って、そこからどっちが当てはまるか、みたいな感じなので、難しいのはありますけど、どっちもできるというのは強みでもあると思います。そこまで苦労はしてないというか、ネタの作り的には僕がボケ、相方がツッコミの方がちょっと多いので、そっちを自信持って出せるようになれば、楽になると思うので、そういうネタができればいいですね」
―東京のお客さんは違いを感じますか
佐藤「北海道を出るとき、最後にやったライブでめちゃくちゃウケたネタが、この前だだスベりして…」
柿澤「ライブ自体も特殊なライブが結構多いです。自分たちの身内しかいなかったり、普通の社会人の方がライブを開きたいから今回呼びましたというライブもあったりします。自分は本気のネタを試したいんですけど、お客さんたちは身内だったりするので、そういうのを求めてなかったりもします。それでスタイルを崩したりすることもあるので、ちょっと苦しんでますけど、だんだん順応していくのかなと思います」
エンジョイ! トーキョーライフ
―東京の生活はどうですか
柿澤「相方は多分めちゃくちゃ慣れてます」
佐藤「最高っすね。本当に楽しいです。逆にお笑いの現場では性格が違って、自分は同学年の人とかだったらグイグイいけるんですけど、(柿澤は)すごく先輩付き合いとかがうまいです」
柿澤「この前も(ヤーレンズの)楢原さんの家に泊まらせてもらいました」
佐藤「何それ、マジで!」
柿澤「そういうのはありますね。僕は根っからのお笑い好きなので、面白い人と一緒にいたいんです。普段の楽屋だと僕より里駈哉の方が話すんですよ。いざ、始まったら僕がめっちゃ喋って、里駈哉が引いて、(振りが来たときに)いくみたいな感じです。そういうところでは逆なんですけど、それがうまいこと役割的には合っているのかなと思います」
タイミーでラーメン屋さんのバイト始めました
―アルバイトは始めましたか
柿澤「僕は始めました。最初はタイミーで。お笑い活動が忙しくなるかなと思ったんですけど、ちょうどタイミーで行ったラーメン屋さんに気に入ってもらえました。そこは芸人さんも来るらしいので、粘ってみようと思ってます」
佐藤「自分は本当に怠惰なので、できるだけ働かないようにと思っています。時間は有り余っているんですけど、働きたくないので、貯金を切り崩して」
―将来の夢は
柿澤「僕はお笑いが大好きなので、お笑い一本という感じがあります」
佐藤「自分もできればやりたいですし、お笑いも大好きなんですけど、自分1人だったらできないので」
―では、今年の目標は
柿澤「普通に人としてのテーマは東京に慣れることです。お笑いとしては高校のときにやっていたことがあるので、今の4年生ぐらいの地位を勝ち取れれば。大学でも上の方に行ければいいですね」
佐藤「お笑い全般は本当に付いていっているだけなので、自分は本当に大学の単位取るとか」
柿澤「俺もだわ(笑)」
佐藤「この前も起きられなくて、2限飛んじゃったので」
柿澤「やば」
佐藤「お笑いとしては去年取れなかったM-1のベストアマチュア賞を狙いたいです」
柿澤「そうですね。本当は高校のうちにベストアマチュア賞を取って、大学生で準決勝進出っていうのを考えていたので、まずはベストアマチュア賞を取って、次は準決勝に進出して、大学4年間でどこかの事務所に引っかかればいいっていうのが大きな目標ですね」
佐藤「お互いのやりたい形で結果を出せたらいいです」
