ファイターズ
2021/12/26 14:45

≪道産子F戦士北広島で俺は≫③佐藤 新球場開幕スタメンへ守備位置こだわらない

厚岸が生んだ強打堅守の内野手

笑顔で新球場「エスコンフィールド北海道」の完成予想図を手にする佐藤。来季に成長を遂げ、開業後の開幕スタメンに狙いを定めた(撮影・松本奈央)

予期せぬ移籍「まずはクビにならないように」

 予期していなかった移籍で、新球場との心理的距離はグッと縮んだ。8月にトレードで西武から加入した厚岸町出身の佐藤は、改めて壮大なプロジェクトに触れ、気持ちを高ぶらせた。
 「西武時代は、ライバルチームの話題ということで実感が湧かなかったのですが、ファイターズに来て変わりました。新球場をつくっている、23年にできると聞いて、もうそんな時期かと。すごく身近に感じました」
 鮮やかな天然芝や開放的なスタンド。開閉式の屋根。充実した設備。イメージ映像などで目にした風景に心を奪われた。
 「本当にきれいですよね。絶対にたくさん人が入ると思いますし、モチベーションは間違いなく、上がると思います」
 少年時代は札幌ドームに憧れた。北海高2年の練習試合で1度、プレーする機会を得たが、その記憶は今でも色あせない。同様に新球場が子供たちや球児に与える影響も大きいとみる。
 「僕の学生時代は、札幌ドームで野球をやることが夢でした。新しく、きれいな球場ができて、子供たちにもいい刺激になると思うし、プレーできたら一生の思い出になるんじゃないですか」
 新球場開業を前にUターンで地元球団の一員になった。想像していなかった不思議な巡り合わせ。強打と堅実な守備に定評がある内野手は22年シーズンで躍進を遂げ、23年春を迎えるつもりだ。
 「まずは、なんとか、クビにならないようにしたいです(笑)。内野はショート以外、どこでもできます。試合に出られるなら、守備位置にはこだわらない。(23年開幕戦の)スタートから名前が呼ばれる立ち位置でプレーしたい」
 歴史的な一戦のスタメン発表で、華々しく名前がコールされる。譲れない願いを携え、主役の一人として、フィールドに立つ。

北海高時代の佐藤は、札幌円山での支部予選で初戦敗退という屈辱を2度味わった(本人提供)
 

脳裏に浮かぶは北海高での屈辱の敗戦

 真っ先に浮かんだのは、高校時代の主戦場だった札幌円山球場だ。打ちまくったわけでも、劇的勝利を挙げたわけでもない。トラウマになるほどの悔しい敗戦が、脳裏に焼き付いている。
 高校2年夏は5―7で札龍谷に屈した。札幌支部初戦敗退は、32年ぶりの屈辱だった。1年後、リベンジを懸けて臨んだ夏の支部初戦。今度は2―3で札南に敗れた。佐藤は4番の仕事ができなかった。戸川(西武)を始め、実力者が揃っていただけに「僕は無名でしたけど、全道のシニアの主力がごっそり集まっていた。悔しすぎて、涙も出ませんでした」と唇をかんだ。
 高校野球引退後は、ショックを引きずって自暴自棄に陥った。「真剣に野球を辞めたいと思いました」。実際、卒業後は厚岸町で公務員や父と同じ漁師になると公言した。しかし、監督に諭される形で、富士大へ進学。この選択がターニングポイントになり、プロの道が開けた。

■プロフィール

佐藤 龍世(さとう・りゅうせい) 1997年1月15日生まれ、厚岸町出身。真龍小2年時に野球を始め、中学時代は釧路シニアに所属。高校は道内屈指の名門・北海に進んだ。大学は富士大に進学。2018年ドラフト会議で西武から7位指名されてプロ入り。20年10月に道交法違反で懲役3カ月、執行猶予2年の判決。球団からも処分受け、信頼回復に努めていたが、3年目の今季、木村文紀外野手とともに2対2のトレードで日本ハムに移籍。新天地で巻き返しを狙う。右投げ、右打ち。内野手。174センチ、88キロ。

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