玉井大翔 緊急登板で無失点 「最下位の球種」フォークを変えてくれた金子コーチの存在
試合終了後、チームメートとタッチを交わす玉井(中央)=撮影・小田岳史
■パ・リーグ9回戦 日本ハム2-2オリックス(5月7日、京セラドーム大阪)
スクランブル登板で役割を全う
日本ハムの玉井大翔投手(32)が2―2の延長十二回1死から緊急登板。無失点で切り抜け、引き分けに持ち込み「冷静に投げられたかなと思います。とりあえずゼロで良かったです」と安堵の表情を浮かべた。
9番手でマウンドに上がった生田目が、一塁ベースカーバーに入った際に、右足首を痛めて降板。その時点で準備をしていなかったが、ブルペンで数球投げて〝出動〟。2死から右前打を許したが、森を一ゴロに仕留めた。
延長十二回途中、足を負傷した生田目(中央)
3日の西武戦で576日ぶりの1軍マウンド
昨季は腰痛の影響もあり、1軍登板ゼロ。一念発起し、オフから右肘を下げた新フォームに挑戦している。先月25日に1軍昇格し、3日の西武戦(エスコン)で576日ぶりの登板を果たした。
新フォームに加わった新たな武器
投球スタイルを変え、大きな手応えを得ているのがフォークボールだ。
「落ちるようになったので自信を持って投げられる球種になったと思います」。使うようになったのは、背番号19を引き継いだ金子千尋2軍投手コーチの助言だった。

背中を押した沢村賞右腕
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玉井といえば、右打者の内角に食い込むシュートが最大の武器。縦に落ちるフォークは「最下位の球種だった。無駄球を投げる時に投げる。あまり意味がないボールだった」というが、金子コーチが「落ちているんだから、もっと使っていけばいいよ。もっと投げた方がいいよと」と後押ししてくれた。
「玉井のフォークはいいんだから」
フォークが落ちるようになったのは、フォームを変えた副産物だった。金子コーチは、こう説明したという。
「腕を下げたことによってフォークがちゃんと落ちるようになった。それを使わないのはもったいないし、相手チーム、バッターは玉井に横の変化、シュートとカットのイメージがあるので、そこにフォークが加わるだけで、何を狙っていいか幅が広がる。投げないと損。自信ないままだと使いづらい。玉井のフォークはいいんだからと」。自信なさげな右腕に、前向きな言葉をかけ続けた。

想像以上だったバッターの反応
実際に使ってみると、反応は想像以上だった。2軍で8試合に投げて、防御率0.00と好成績をマークした。
金子コーチは「使うようになったらキャッチャーもいいと分かってくれるので、投げる量も増える。結果が出て、自信になったと思います。意外と自分が投げる球はいいのか悪いのか分からなかったりする。バッターがどう思うかが大事。もしかしたら不安だと思っている球が一番、打たれないかもしれない。なので、ちゃんと自分の球質を理解して、こういう変化をするんだと伝えて。使ってみて。もしかしたら数字的に良くなくても、バッターの反応が良い可能性もある。投げてみないと分からない。そういうことは常に言っています。ほかの球を生かすために、ちゃんと使えよと」と続けた。
ニュー玉井 リリーフ陣をさらに強固なものに
玉井は「イメージにとらわれずに、この球もいいんだからと、数値もいいしみたいな。データとか見ながらやってくれる。すごいっすね」と感謝。1軍昇格が決まった際には、金子コーチから「フォーク、ちゃんと使えよ」と送り出された。
その教えを胸に刻み、1軍生き残りを懸ける。
延長十二回を無失点に抑え、タッチを交わす玉井(左)と伏見