達孝太 〝汗だくのエース〟とすれ違って変わった意識「うわ、やばい!と思いましたね」
今季初勝利を飾った達=撮影・松本奈央
■パ・リーグ8回戦 西武2ー3日本ハム(5月4日、エスコンフィールド北海道)
日本ハムの達孝太投手(21)が4日、西武戦に先発し6回4安打1失点。今季初登板で初勝利を挙げた。
「自分が監督でも使わないですもん」
悔しさをバネに、這い上がってきた。初めて1軍キャンプスタートとなった高卒4年目のシーズン。開幕ローテーションを奪いに行ったが、2月16日の楽天との練習試合後、2軍降格を言い渡された。この試合では2回1失点(自責0)とまずまずの投球を見せていたが、「先発なんか、あふれかえっているので、その中で投げようと思ったら、あれじゃ無理ですね。自分が監督でも使わないですもん」と、厳しく自己評価した。
去年までなら、なんとも思っていなかった
いつもポジティブに野球と向き合う右腕だが、珍しく、気持ちの切り替えに2、3日、時間がかかった。「ずっと考えていたんですけど、去年までの3年間だったら、1軍に呼ばれて(2軍に)落とされても、なんとも思っていなかったと思うんです。今年はトレーニングではなく、パフォーマンスを上げることをメインにやっていたので、あぁ、という気持ちは結構ありました。自分に期待していた部分があったので、その分、ショックじゃないですけど…」。2軍キャンプ合流後、国頭の球場からの帰り道で「やばいな…」と考え込むこともあった。

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ただ、転んでもただでは起きないのが達孝太だ。何かを変える好機だと捉え、スライダーの改良に着手。握り方を変え、より曲がり幅が大きいスイーパーのような球へと進化させた。昨年12月から投げ方を変え、縦に鋭く落ちるよう変化させたスパイクカーブにも一層、磨きをかけた。昨年まで、実戦では直球主体の組み立てが主だったが、今季の2軍戦では変化球のみで三振を奪うなど、明らかに投球の幅が広がった。
自分はまだまだ甘い、と気付かされたあの日
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トレーニングや体づくりの知識が豊富で、先輩後輩問わず頼りにされる右腕。意識の高さは誰もが認めるが、昨年の12月1日、〝自分はまだまだ甘い〟と気づかされた。達はこの日のことを、「去年で一番ためになった」と振り返る。

選手会納会ゴルフ後、夜の納会まで時間つぶしていると
午前中は、選手会納会ゴルフに参加した。伊藤ら、チームメートたちと楽しくラウンドし、終了後にエスコンフィールドへ移動。ゆっくり風呂に入り、夜の納会まで時間をつぶしていた。
日頃から体には人一倍、気を使っている。「さすがに一日、ゴルフをしていたので、ストレッチぐらいせなあかんなと思って、ウエートルーム行ったんです」。そこで目にした光景に、衝撃を受けた。
同じ組でラウンドしていた先輩右腕が
ウエートルームに入ろうとした、まさにその時だ。中から、汗だくの伊藤大海が出てきた。同じ組でラウンドしていたはずの先輩右腕が、顔をほてらせ、すでに本気のトレーニングを終えていた。
「今まで、 もちろん大海さんが(日頃からトレーニングを)やっているイメージはありましたけど、そこまでしっかりは見えていなかった。どうしてあれだけ勝てるのか、分からないところがあったんですけど、この一瞬で分かりました」
昨年の12月1日、選手会納会ゴルフに参加し、同じ組でラウンドした伊藤(左)と達
いつか超えなければならない存在
達は近い将来の目標に15勝を掲げている。この年、14勝を挙げたエースを超えなければいけないはずが、自分の方がのんびりしていたことを、その瞬間に恥じた。「うわ、やばい!と思いましたね。焦りました。なので、その後にめちゃくちゃトレーニングしましたよ」。意識が大きく変わった〝すれ違い〟だった。
2月7日、春季キャンプのブルペンで投球データなどを確認する達(右)と伊藤
いずれは世界で一番の投手を目指している
日本ハムを背負うエースとなり、いずれは世界で一番の投手になることを、真剣に目指している。無限の可能性を秘める21歳は、先を進む先輩の姿を目に焼き付け、ここからさらに、成長速度を上げていく。
