野球
2023/04/13 11:00

22メーカーのグラブを扱う道内最大級のグラブハウス「スポーツショップ古内」

創業44年の「スポーツショップ古内」の古内克弥さん(撮影・小田岳史)

「何か困ったら、このお店に相談しようと思ってもらえるように」

 「相談したくなる運動具店さん」。そう謳う創業44年の「スポーツショップ古内」は、札幌・石山に店を構えている。野球とバドミントンに尽力し、専門的な知識を持ったスタッフが、親身になってサポートしてくれる。社長の古内克弥さん(40)は「お客様がお買い物したときに、また何か困ったら、このお店に相談しようと思ってもらえるようにしたい」と志した。

客からの「ありがとう」の言葉が店を継ぐきっかけ

 父・昭さんが1978年に同店を開業した。2008年に昭さんが逝去し、母・一枝さんが2代目社長となった。そして17年、克弥さんが3代目社長に就任した。きっかけは小学5年生の頃にあった。「店を手伝ったのがきっかけだった。こっちが販売したのに、お客様から『ありがとうね』って言われたことがすごい嬉しくて、自分が役に立ったという気持ちがあった」。

「リペアが利くもの」に商機見出す

 大型店やオンラインショップが増えていく一方で、街の専門店は減っていった。その中で商機を見出したのは「リペアが利くもの」。野球グラブとバドミントンのラケットに注目した。「修理や加工はインターネットや大型店でもやれなくはないけど、難しいと思う。であれば、私たちが役割分担でやるのがいいかな」と、10年に総合スポーツショップから野球とバドミントン専門店に舵を切った。

 19年に車庫を改装して、道内最大級のグラブハウスをオープン。壁一面に野球グラブが並び、足を踏み入れた瞬間に革の匂いを感じる。克弥さんは店を継ぐ前に、野球メーカー「ゼット」に入社し、大阪で1年、東京で2年の計3年間修行。工場でグラブを製作していたこともあり「(グラブは)完全にうちの強みになる」と現在は22メーカーを扱っている。

裁断から仕上げまで1人で製作した逸品も

 古内さんイチ押しの〝逸品〟が「佐藤グラブ工房」のグラブだ。普通のグラブは裁縫する人やひもを通す人が違うが、同品は全部1人でやっているそう。「自分の目利きで裁断したり、縫製もしていく作りなので、すごいこだわりが1個に詰まっている」と魅力を語る。

 コロナ禍もプラスに転じさせた。お客さんが減り「心の不安がありました。どうなっちゃうんだろう」と振り返った。「ただ、その間にたくさん準備ができた。修理技術の習得もそうですし、社内の業務をDX化したりとかもした。お客様とLINEでやり取りできるようにもなった。そういう仕組みの準備が進んだので、今は需要が回復しているんですよね」。

野球の環境作り、地域貢献にも尽力

 今後は野球の裾野を広げることにも取り組む。先日、侍ジャパンがWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)を優勝したことで、野球の盛り上がりを肌で感じている。「WBCの後、公園で野球を始めている子供が結構いた話を聞いて、すごい嬉しかった」。同店でも少年野球チームを回り道具の手入れ方法を指導することや、練習場を確保し子供たちにプレーする機会を提供することも考えている。

 また「大人の部活を作りたい」と古内さん。「9人集めて練習するのはハードルが高い。いつもここで練習しているよっていう合同練習の環境を作って、毎回そこで20人ぐらいが練習するような場所を作りたい」と目を輝かせた。より地域に貢献する運動具店へ、歩みを進めていく。


■プロフィール 古内克弥(ふるうち・かつや)1982年4月15日、札幌生まれ。札幌平岸高、釧路公立大を卒業し、ゼット株式会社に就職。2008年から「スポーツショップ古内」の社長に就任した。スポーツ経験はサッカー、バレーボール、スキー、空手、剣道、アメフト、水泳、バスケなど多岐に渡る。家族構成は妻と長男。

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