冬季スポーツ
2023/03/05 21:00

【アルペンスキー】26年五輪出場目指し佐々木明が9季ぶり復帰 今季最終戦は2位

2014年ソチ五輪以来、9季節ぶりにレースの世界に戻ってきた佐々木(前列中央)。目指すは26年五輪の金メダルだ(撮影・西川薫)

■宮様スキー国際競技会 男子回転(5日、サッポロテイネ)

FIS公認大会など今季4勝

 アルペンスキー・ワールドカップ(W杯)男子回転で、日本人最多3度の表彰台記録を持つ、佐々木明(41、北照高出)が、2026年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪出場を目指し9シーズンぶりにレースに戻ってきた。2014年冬季ソチ五輪を最後に活動の舞台をレースから大自然の山々に移していたが、22年3月に競技復帰を宣言。同8月にアルゼンチンで行われた国際スキー・スノーボード連盟(FIS)公認競技で、復帰戦から2戦連続優勝するなどシーズン合計4勝をマークした。今季最終戦となった5日の宮様スキー国際競技会男子回転(サッポロテイネ)でも2位に入るなど、あらためて健在ぶりを示した。

 レジェンドの滑りを一目見ようと、コース脇やゴール地点には多くのファンが集結。今大会最年長の41歳が2本目を滑り終えると、佐々木の周りにはちびっ子レーサーや出場者が駆けつけサイン攻めを受けた。当初の計画では復帰2季目のステップとしていた目標をクリアし「満足どころか、誰も予想してないと思いますよ。こんなありえないこと、この半年でクリアしたわけですから」と満面の笑みを浮かべた。

よりもっとな目標「40歳になってオリンピック」

 「よりもっと」が佐々木を突き動かす原動力だ。「挑戦するために、ビッグマウンテンの世界に行った。別に戦えなくなったから、ボロボロになったから辞めたわけでもなくて。よりもっと、よりもっとっていう人生をするために生きてる。今のよりもっとって『40歳になってオリンピック』。みんな笑うっすよね、大多数の人が、99パーセントの人が。でも、自分はできるって信じられる」。そう言い切る佐々木の表情は確信に満ちていた。

 9シーズンぶりの復帰には仲間の力が欠かせなかった。現在、ゴーグル・アパレルブランド「EMUSI」を展開する企業の社長。「一番大事なのってコミュニティーなんです。僕もこの8年間、マーケティングとかブランディングとか、PRの仕事とかもやってきて、最初にやってることはコミュニティーの構築なんです。僕のやってることって超リアリティーTVショーなので、それを一緒に楽しんでくれる仲間を増やそう」と、2022年7月にクラウドファンディングを通じて〝チームAKIRA〟の賛同者を募った。すると、約2カ月半で支援者1605人、3400万円以上が集まり、挑戦への準備が整った。

マテリアルの進化やレベルの高さに驚愕

 甘い世界ではないとは自覚していたが、マテリアルの進化やレベルの高さに驚いた。「異次元です。全く競技が違います。僕がやってた時の70ターンの中で2旗門できたらいいっていう〝いかれたくらいの〟アタックを、今は(ウォーミング)アップでするくらい違うんです」。

 さらに、もう一つ目的があった。「1、2年休んだら問題ないと思うんすけど、8年、9年ってもう全てなくなるんです、感覚が。スキーは滑れるかもしれないけど、ファイティングスピリットとか、レースのスイッチ、アドレナリン、全てが出なくなるんです」。レーサーとしての大事なものを取り戻すべく、スタート台に立ち続けた。

 その代償は少なくなかった。同12月10日に右肩を脱臼。同付近も骨折。その影響は右足にも現れた。当初は、宮様国際競技会以降も海外のレースに出場する計画だったが「いよいよ痛み止めも一切効かなくなってしまった。右足がもうスキーを踏めないんです。左足だけで滑ってる。今の持ってる能力、これ以上もう滑ることができないっていう状態になった」と、地元・北海道のレースで今季の挑戦を締めくくり治療に集中する。

来季はコンチ杯を主戦場にW杯目指す

 FISポイントを獲得したことで、来季は主戦場を北米・欧州のW杯の1カテゴリ下のコンチネンタルカップに移す予定。「ゴールドを取るために、どういうふうに生きるのか。ゴールドが目標としてあるから、無理するし、無理しなきゃいけない」。24時間、365日、全てをオリンピックのスタート台に立つために費やし、悲願達成へと階段を上がっていく。

 

あわせて読みたい