冬季スポーツ
2022/12/16 22:15

レジェンド葛西〝秘密兵器〟黒スーツで巻き返す!名寄ピヤシリジャンプからW杯札幌大会狙う

一本のみのジャンプでK点越えを披露した葛西。好調をアピールし、表情も明るい(撮影・西川薫)

公式練習でK点越え「踏めてるな、当たってるな」

 ノルディックスキージャンプのレジェンド・葛西紀明選手兼監督(50、土屋ホーム)が、17日の名寄ピヤシリジャンプ大会に出場する。16日の公式練習では1本のジャンプを飛んでK点越えの91.5メートルをマーク。今年1月の雪印メグミルク杯以来となる国内優勝をステップに、来年1月に3季ぶりに開催されるW杯札幌大会出場を目指す。

 公式練習では全体の2回目から登場した葛西が、ぐんぐん飛距離を伸ばした。「助走路でのスリップがだいぶ少なくなって、パワーもちゃんとカンテ(踏み切り台)に伝わってる。踏めてるな、当たってるなっていう感じがある。それであそこまで(距離が)伸びてる」と、上々の仕上がりに頰を緩めた。

スロベニア合宿から帰国 世界最高レベルの飛躍を研究

 11月16日から約3週間のスロベニア合宿を終え、今月8日に帰国したばかり。昨季までのシーズン前合宿はフィンランドが中心だったが、今春のスロベニア人HCの就任に伴い、合宿地も変更した。「これまではイメージをつくる方を優先させていた。本数は今年は多い」と、週に4回、1日5、6本を飛び、合宿では計5~60本の飛躍を重ねた。

 合宿前半のクラニでは、地元出身で2014年ソチ五輪個人2個のメダルを獲得したペテル・プレブツや、今月9日のW杯で優勝したアンツェ・ラニセクと遭遇。「ずいぶん下のゲートから出るな、こんなんでいくのかなと思ったら、もうK点ガンガン越えていくジャンプをした。これぐらいまでいかないと、っていうのを見ながら練習もできた。その中で少しずつ自分のジャンプも良くなってきたし、彼らのジャンプを見て、ビデオ撮って、それを参考にどうやって飛んでんのかなとか」と、現在の世界最高レベルの飛躍をとことん研究した。合宿後半は、来年2月の世界選手権の舞台でもあるプラニツァで最終仕上げ。「本当に良い合宿でした。自分でも期待できそうなジャンプに変わってきてる手応えがあって、帰ってきた」と振り返った。

「このチャンスを逃さない」W杯最多「569」試合更新視野

 名寄では〝秘密兵器〟も投入する予定だ。公式練習はトレードマークの黄色いジャンプスーツではなく、スロベニア合宿中に出会ったロベルト・クラニツ氏に「すごく仲が良いんで。ちょっと作ってやるって」と、黒色のスーツで臨んだ。「タコみたいな感じですね。全然違うな」と、新たな〝戦闘服〟で空中へと飛び出す。

 さらに今大会はW杯、コンチネンタル組が不在。日本勢の海外での成績も良くなく、表彰台は男子個人第4戦で3位となった中村直幹(26)の一度のみ。エースでまな弟子の小林陵侑(26)もスタートダッシュに失敗するなど不振にあえいでいる。葛西が国内戦から巻き返しを狙う絶好の機会だ。

 「このチャンスを逃さないために、やっぱり名寄の試合からしっかり成績を出していく」。さらに1月9日のHBC杯から始まる国内シリーズを経て、同20日からのW杯札幌大会で、自らのW杯個人最多出場試合数「569」の更新を視野に入れる。レジェンドが再び世界と戦う切符を、名寄の地からたぐり寄せる。