深井一希 今季限りでの現役引退を決断

クラブの歴史を紡いだ不屈の男
北海道コンサドーレ札幌のMF深井一希(30)が、26日までに今季限りでの現役引退を決断した。同日中にクラブから発表される。アカデミー育ちの深井は2013年のトップチーム昇格以来、札幌一筋でプレー。中盤の要として2016年のJ2優勝や2019年のルヴァン杯準優勝に貢献した。今後はクラブに残り、アカデミーの指導者を目指していくとみられる。クラブの歴史を紡いだ不屈の男は静かに、愛着ある赤黒のユニホームを脱ぐ。
逆境を乗り越えてピッチに立ち続けた。キャリア13年間で前十字靱帯(じんたい)断裂など両膝併せて5度の手術を経験。度重なる大ケガに見舞われながら、そのたびに復活を遂げる姿が見る者に勇気と希望を与えた。
U-12からクラブに籍を置く深井は、紛れもなく札幌の希望の星だった。U-17W杯をはじめ世代別代表に選出されるなど早くから頭角を現し、2011年のプレミアリーグイーストと2012年のJリーグユース選手権を制覇。プロ入り後もルーキーイヤーに19試合出場を果たすなど、世代のトップランカーとして名をはせた。
何度も絶望からはい上がり、Jリーグ通算205試合出場を果たした。その歩みはクラブの黄金期とも重なり、2018年はクラブ史上最高のJ1リーグ4位に。残留するのが精一杯だった過去と決別し、古くからの夢だったJ1定着を実現させた。

クラブ初となる決勝進出を果たした2019年のルヴァン杯では、後半アディショナルタイムに同点弾を記録。土壇場でゲームを振り出しに戻した執念のヘッドは、サポーターの脳裏に深く刻まれている。
日常生活に支障が出るほどの痛みと闘いながら、30歳になる今シーズンもプロとしての生き様を示した。今季初出場を果たした第10節・藤枝戦ではホームの観衆から、誰よりも大きな声援が送られた。
クラブ愛を貫く男は、今季の開幕前に1つの誓いを立てていた。「札幌に骨を埋める覚悟がある。将来的なことも含めて、しっかり恩返しがしたい。選手が終わった後にも、ケガで苦しむ人を助けられる存在でありたい」。シーズンを走り抜け、酷使した体を休める。その先にはまた、新たなストーリーが待っている。