現役引退を発表した不屈の男・深井一希 13年間支え続けた妻からの愛ある言葉に心ととのう
引退を決断し、今週は調子が良いというMF深井。今季の戦いを全うし、第2のサッカー人生に向かう=撮影・中村真大
プロ1年目から共に戦ってきた
北海道コンサドーレ札幌のMF深井一希(30)が26日、今季限りでの現役引退を発表した。引退を決断するまでに多くの葛藤はあったが、最後は愛妻・かれんさん(31)の言葉に救われたという。
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小学生の頃から膝の痛みに悩まされていた深井は、Jリーガーとなってからも両膝の前十字靱帯に5度メスを入れるなど計12回の手術を経験してきた。常に励まされ、共に戦ってきた愛妻とはプロ1年目に出会い、7年の交際を経て2020年12月に結婚。「全部のケガを見てきたんで、そばでサッカーで活躍してる姿より、リハビリだったり入院したりとか、そういうのばっかりを見せてしまったので、本当に申し訳なかった」と気遣う。
調子が良ければミニゲームに参加し、遜色ないプレーを披露するMF深井(手前右)
昨年の後半から状況が一変
13年間の現役生活の中で何度も膝の痛みに襲われ、23年に前十字靱帯の5度目の手術を施した際には同時に右膝の外側の軟骨を内側に移植。手術の度に這い上がり復活を遂げてきた深井だったが、昨年の後半からは痛みの質が変わってきたという。「何をやっても良くならなくて。毎日、本当にしんどい痛みとの戦いだった。こんなんでサッカーできるわけねぇだろっていう状態でやっていたので、そうやって分かりながらやるのがキツかった」。
部分的に合流した練習を終えて引き揚げるMF深井(手前中央)。メニューは自身で調整し、見極める
家庭で弱音を吐露する深井に、かれんさんは自信を持たせてくれるような強気な言葉で精神的に支えてくれた。今年に入り、現役引退を本気で考えるようになってからも、「奥さんはやっぱり最後まで期待してくれて。ずっと期待してくれていたので、なかなか自分では言い出しづらかった」。
朝方、起きてきた深井を見て一言
今月に入ったある朝、自宅の階段から足を引きずりながら降りてきた深井を見たかれんさんは、ある言葉を掛けたという。
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「もう辞めてもいいんじゃない。もう十分やったでしょ」
正直、ホッとした。やっと終わる。やっとこの痛みから解放される、と。「俺の状況を見て、さすがにもうっていうところを分かってくれていた。助かりました」。尋常じゃない痛みに耐え続け、何度も不屈の魂で這い上がり続けてきた。その男が刀を収めることを受け入れ、背中を押してくれた。
ルーティンとなっている裸足でのクールダウン
息子にはこんな苦労してほしくない
自身の誕生日でもあった今年3月11日、2人に第1子となる長男・蓮大(れお)くんが生まれた。引退後は指導者を目指していくが、蓮大くんにはサッカー選手になってほしくないという。「どんな職業でもですけど、サッカー選手は僕が自分でさんざん苦労したから。サッカーもそうだし、ケガもそうだし。あんまり苦労してほしくないな。でも本人がやりたいって言ったらやらせますけどね。僕自身、ケガに苦しんだので、息子の進みたい道に進ませてあげられるように2人で頑張っていきたい」。

どこでも戦える強くて大きな男に
将来の子供の育て方を夫婦2人で話す時間は何ものにも代えがたい。「グローバルな時代になっていくので英語は学ばせていきたい。今、日本だけでって考えるとちょっと難しくなってきていると思うので、英語もしゃべられて、いろんな世界で戦える、どこでも戦えるような強い男になってほしい。強くて大きな男になってほしいと思って名前に大という字を入れたんですよ」。札幌を支え続けた不屈の男のDNAはこれからも受け継がれていく。
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