【一問一答】引退発表の深井一希「自分の中で最大限やりきった。最高のサッカー人生」
現役引退について取材を受けるMF深井=撮影・桜田史宏
最後まで期待してくれた人のために
今季限りでの現役引退を発表した北海道コンサドーレ札幌のMF深井一希(30)が26日、札幌市内で取材に応じ、決断に至った経緯を明かした。度重なる大ケガに見舞われながらもピッチに立ち続けた〝不屈の男〟は「自分の中で最大限やりきった。最高のサッカー人生」と、潔くスパイクを脱ぐ。一問一答は以下の通り。
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―決断の理由は
「1つ目は去年から今年にかけて特に膝の痛みが強かった。それに耐えながらやっていたけど、痛みに耐えることが厳しくなった。精神的にも疲れ切ってしまったのが大きな理由です。それと同時に今後は指導者になりたいという強い気持ちがあった。次のステップに進んだ方が良いと自分の中で感じていました」
―何度もケガを乗り越えた。昨年9月の復帰以降のコンディションは
「コンディションよりも痛みが毎日あった。正直、練習に出られるような状態ではない中でやっていた。毎日、毎日それが続くので自分の中でもう厳しいなと思うようになりました」
―決断をした時期、きっかけは
「去年のシーズンの最後の方で自分的には厳しいと思っていた。契約の話をしたときに三上さん、竹林さんと話をして『ラスト1年やってみろ』という話をいただいたので僕としてもラスト1年勝負しようとなった。これでダメなら次のステップへ行こうと決めていました」
―覚悟を持って今季に臨んだ
「そうですね。岩政監督になって最初のキャンプで実際にやってみて、自分の中で厳しいと思った。それでも岩政監督、新しいトレーナーの京谷さんにお世話になった。その方たちが親身になって助けてくださった。途中で少し良くなって試合に出られたけど、そこから上手く良い方向にいかなったので最終的な決断に至りました」

―決断は今月か
「今月、強化部の方に伝えました。少しでも早く発表したかった。たくさんの方にお世話になったので、その方たちに感謝の思いを伝えたかった」
―チームメートには
「きのうです。ミーティングの前に伝えました」
―どんな言葉を掛けられた
「僕の膝の状況はみんなが知ってくれている。みんな、お疲れ様と言ってくれました」
―引退を決めた今の心境は
「正直、伝えられてすごくスッキリした。あと2カ月ちょっと。ここを戦えば痛みとの戦いが終わる。そこまでプロとして責任を持ってチームの目標に向かって一緒に頑張りたい」
―(札幌に所属した)9歳からの22年間をどう振り返る
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「小さい頃からケガが多くて自分の好きなサッカーから離れる機会が多かった。その度にいろいろな人に支えられて助けていただいて、ここまでプレーできた。皆さんに感謝ですし自分は本当に幸せ者。有り難い気持ちでいっぱいです」

―かねてから指導者の道を目指すと話していた。現役引退後のイメージは
「指導者に早く切り替えて…。小さい頃、サッカー選手になりたいという強い思いでプロを目指したように、一流の監督になれるよう早く準備がしたい。普段は練習しているけど、そのために試合を見たり、できることをやっていこうという前向きな気持ちです」
―リーグ戦は残り8試合。チームもPO圏を目指す。どんな力を発揮したいか
「自分は練習に入り続けて、抜けないことが目標。多少の痛みなら、なんとか耐えきってチームのみんなと一緒に戦って、少しでも若い選手の模範となるプレーを見せたい。もちろんコンディション次第では自分も試合に絡みたい気持ちがある。少しでもチームの目標に貢献できるように、あと2カ月を頑張りたい」
―サポーターに伝えたいこと
「コンサドーレ札幌のサポーターの皆さんは本当に温かくて優しくて、僕は助けられました。このチームでプレーしてなければ、ここまでプレーできなかったかもしれない。ここまでの大ケガを乗り越えることができなかったかもしれないので、本当に皆さんへの感謝の気持ちでいっぱいです」
―長期離脱したチームメートは深井の姿に刺激を受けたと言う。振る舞いで意識したことは
「大きく意識したことはない。どんな状況でも前を向いて戦う姿を、みんなに見せたいわけではなく、自分との戦いを大事にしていた。それはどんなケガでも貫いてこれた。それを見てチームメートがそう言ってくれるなら、ここまで頑張ってきて良かったと思える」
―指導者を目指す。具体的にいつから考えていた
「ケガでなかなか試合に絡む時間が少なくなってきたのが3~4年前。それと同時に今後のキャリアを考えるようになりました」
―ライセンスは
「今はC級ライセンス。これから取っていきたい」
―ケガがなければというタラレバを考えてしまう。ケガの経験は人生に生きているか
「考えたことはあるけど、これが自分。こんなに大ケガを経験できる選手はなかなかいない。それは自分の力だけでなく、たくさんの方に支えられて応援してもらって今がある。自分はこのサッカー人生に満足。悔しい思いもたくさんしたけど、自分の中で最大限やりきった。最高のサッカー人生です」

―(元スペイン代表MF)セルヒオ・ブスケツもきょう引退を発表した
「それはうれしいですね。1番目標にしていた選手。何かの縁かな」
―コンサドーレで現役を終える
「自分が育ったこのクラブでプロとしてのキャリアを始めて、このチームで終われるのはすごくうれしい。ケガがなければ違う道も考えられたけど、僕の中ではこのチームで始まってここで終われて納得。最高のサッカー人生だと思います」
―指導者の理想像は
「簡単には言えないけど、ピッチ内で起きたことを選手たちが気遣いながら助け合える。自分たちのボールを大事にしながら、助け合いながらっていうところを上手く伝えたい」
―耐えがたい痛みを表情では見せなかった
「ピッチに立ったら言い訳をしたくないという思いが、プロに入ったときから自分の中にあった。練習に入ったなら痛みがどうとではなくて、上手くなるために、強くなるために最大限のプレーをしようと心掛けていた」
―苦しい時期の支えになった言葉、人は
「挙げたらきりがない。たくさんの言葉をいただいて今がある。その中でも京谷さんからはボロボロの僕を最後まで治してやろうというパワーが伝わってきた。なんとかその気持ちに応えたい思いもあって、今シーズンは練習やゲームに絡めた。京谷さんには本当に感謝の気持ちでいっぱい」

―コンサドーレは特別な存在。言葉で表現するなら
「そういうのは得意じゃないので難しい。これからも自分は大事にしていきたいクラブ。今まで受けたコンサドーレからの愛を、これからしっかり返していけるように頑張っていきたい」
―J1もJ2もルヴァン杯決勝もあった、1番印象に残った試合は
「やっぱりルヴァン杯の決勝は特別な試合でした。ウオーミングアップの時、スタジアムに入った時のコンサドーレサポーターの大歓声は忘れられない。すごく鳥肌が立ったのを覚えています」
―PKまでもつれ込んだ
「どんな状況でも諦めなければ奇跡が起きることを自分のゴールで体現できた。そこまでたくさん苦しい思いをしたけど、サッカーを続けて来て良かったなと思えたシーン。最後に負けてしまったけど、格上の相手にも自信を持って、楽しみながらみんなで戦えれば、どんな相手でも勝てるチャンスがあると自分たちのプレーで感じられた。あの大舞台は忘れられない試合になりました」
2019年10月26日ルヴァン杯決勝、後半アディショナルタイム、同点となるヘディングシュートを決める深井(中央)
―家族からの反応は
「両親は小さい頃からケガとの戦いをずっと見ていてもらったので『本当にお疲れ様。もう十分やりきったでしょ?』と。奥さんからも『もう十分。よくやったと思うよ。お疲れ様』という言葉がありました」
―膝の痛みで日常生活に影響は
「まず朝、起きてからが1番しんどい。階段の上り下りも痛い。はいつくばっては言い過ぎだけど、それぐらいの状況から毎朝がスタートする。練習が始まってからも、1メニュー1メニューをこなせるか不安との戦いの中で毎日やっている。少しずつ自分の足の痛みを試しながらプレーしている。なおかつプレーしている以上は評価されないといけない。そこで自分のプレーを発揮するのは本当にしんどい。厳しい毎日です」
―理想とするプレーと現実に差があるのはストレスか
「何年も前から、自分はこうしたいのにって時に痛みがある。それも全て受け入れて、これが今の自分だと受け入れながらプレーしてきた」
―痛みを抱えてここまでプレーできた理由は
「それは応援してくれる人、最後まで期待してくれる人がいるので。自分1人の気持ちならここまで戦えない。そういう人たちへの責任というか、自分なりの感謝の気持ちを持ちながらプレーしていた」
―今後、プライベートで挑戦したいことは
「休みがあっても膝のことを考えていた。次の練習で痛みが出ないか? というプレッシャーから解き放たれた生活が楽しみです。それだけで十分です」

―クラブは功労者としてポストを用意する方針という話がある。指導者としての将来的な夢は
「チームから、そう言っていただけるのは有り難いこと。もし機会をいただけるなら、自分の育ったアカデミーはなかなか良い結果を得られていない現状がある。そこを立て直したい強い気持ちがある。自分が指導者になってトップチームで監督ができたなら、今までにないタイトルをもたらせられるよう、これからしっかり勉強していきたい」
―不屈の男と呼ばれたことについて
「今でも恥ずかしい。僕はそんなに強くないので。そうやって応援してくれる人がいて、それに応えようとしてここまで来た。不屈の男というのは皆さんにつくってもらった感じですね」
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