【道スポ×チケットぴあ】道内エンタメ情報 RISING SUN ROCK FESTIVAL主催者の西木基司さんインタビュー
昨年のRISING SUN ROCK FESTIVAL=提供写真
今年で25回目の開催
今回の「道新スポーツ×チケットぴあ」の道内エンタメ情報は、8月15、16日に開催される「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2025 in EZO」(RSR)を紹介します。今年で25回目を迎える日本最大級の野外音楽イベントとなります。主催者であるWESSの西木基司さん(54)に、現在のフェスティバルへの思いや、第1回開催に至るまでの経緯を伺いました。
■RISING SUN ROCK FESTIVAL 2025 in EZO
◆日程:2025年8月15日(金)・16日(土) 〈雨天決行・オールナイト開催〉
15日 Open 10:00 / Live Start 14:00 / Live End 23:00 予定
16日 Open 10:00 / Live Start 12:30 / Live End 5:00(17日)予定
◆会場:石狩湾新港樽川ふ頭横野外特設ステージ
〈北海道石狩市新港中央1丁目 / 小樽市銭函5丁目〉
現在、チケットぴあでの入場券取り扱いはございません。
その他詳細はオフィシャルHPにてご確認ください。
https://rsr.wess.co.jp/
INTERVIEW
西木基司さんに聞くRSR
―RSRは今年で25回目の開催となります。もう25回目、という気持ちですか
「そうですね。もう25回なんだっていう。今年、27年目の25回目なんですけど、アニバーサリーだ、お祝いだっていう気持ちは全くないです。10回目、20回目とやってきましたけど、今年の25回目は回数が25回目なだけで、僕らは一つの通過点としか捉えてないですね。だからお祝いだっていうムードもなく(笑)。僕らがつくるっていうよりは、いらっしゃっているお客さんと一緒につくっている感覚の方が強かったりします」
―毎年終わった瞬間から次の年へのキャスティングが始まるんですか
「終わった瞬間から! そこはエンドレスです。終わったら、もう来年のことをすぐに考えて。アーティストもそうなんですけど、これまで25回、トライ&エラーを繰り返してきているのがライジングだと思うんですよ。やってみて面白かったことはどんどん膨らますし、やってみてハマらないんだなっていうのはすぐ止めるし(笑)。何をお客さんが一番面白がってもらえるか。一番喜んでもらえるか。全国でも北海道内でも、男性でも女性でも、10代でも50代でも関係なしに、音楽が好きっていう共通言語の人が2日間集まって、会場に2泊して過ごしてもらうのに面白そうなことを考えてます」
僕たちの主人公は朝日が昇るまで
―キャスティングの核となるのはどういった部分ですか
「初代プロデューサーが第1回目を開催した1999年の前の年は、邦楽のロックがフィーチャーされている時代で。THEE MICHELLE GUN ELEPHANTでしたり、BLANKEY JET CITYでしたり、UAみたいなディーバ感のある女性シンガーがいたりとか、ちょっと日本の邦楽シーンの中で、そういうアーティストが頭一つ出てきているタイミングでした。FUJI ROCK FESTIVALが97年に日本で初めてロックフェスティバルを開催されて。ああいうカルチャーが日本に初めて来たということで、僕たちもある種、いい意味でぶっ飛んだものが日本でも始まるなと。日本の一番かっこいい音楽、一番かっこいいロックを、北海道だったら朝まで爆音で音楽を流しても文句を言う人はいないんじゃない? っていう(笑)。朝日が昇るまで、最高な音楽を大音量で聴きながら(ライジングサンを)迎えられたら、それはそれですごい幸せなものなんじゃないかっていうのが、本当に根っこの核の部分。27年経って、25回目を今年やらせてもらうんですけど、気持ちはそこですよね。朝日を迎えるまで最高にかっこいい音楽を聴きながら過ごすっていう、ライジングサンの主軸はそこなんじゃないかな。最高な音楽が主人公ではなくて、あくまでも主人公は朝日が昇るまで。だから僕たちも社内で話すんですけど、一番最後の大トリを迎えるアーティストは出てくるんですけど、僕たちの主役は朝日だと思っているので。もちろん、今このタイミングでこういう音楽を聴きたいよね、こういう音楽を見せたいよねっていうのはあるんですけど、それ以外のことでも、こういうものがあったら楽しいよね、とか、こういうことを提案したらお客さんが喜んでくれるかな、とか、そういうことも同じぐらいの熱量で考えている部分があったりします」
―第1回目からそうそうたるメンツが揃ってます(※)
「BLANKEY JET CITYのマネジャーと、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTのマネジャーと、うちの会社の初代のプロデューサーと話をして進めていくんですけど、やっぱりミュージシャンもフェスティバルっていうものにすごくワクワクしている時代だと思うんですよ。そこの中で『出てみたい』『出たらどうなるんだろう?』『出てみることでどういう景色が見えるんだろう?』っていうワクワク感は絶対あったと思います。日本はそれまで体育館だったり、競技場だったり、いわゆる形のあるものの中にパイプ椅子が並べられていて、座席指定でそこで座って見る。以前はそういうのばっかりだったんで、多分ワクワクしていたんだと思います。それで、いろんな人に声を掛けようと言っている中で、実は裏テーマがあって。第1回目のアーティストって、日本人のアーティストなんですけど、海外で演奏しても恥ずかしくないアーティスト。海外の人に俺たち日本人なんだけど、自信を持って『かっこいいだろ』って言えるアーティストのセレクトにしようっていうのが裏テーマでした。そうそうたる面々ですよね。今見てもすごいメンツだと思います」
※第1回目の出演アーティスト
電気グルーヴ、NUMBER GIRL、THE MAD CAPSULE MARKETS、ZEPPET STORE、THE HIGH-LOWS、Dragon Ash、UA、椎名林檎、THEE MICHELLE GUN ELEPHANT、pre-school、BLANKEY JET CITY、ギターウルフ、SUPERCAR、bloodthirsty butchers、サニーデイ・サービス
クロージングアクトをどうするか― 社内ミーティングでは…
―今もキャスティングする際の核の部分は変わらないですか
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「今、一番最初に考えるのは、やっぱりクロージングアクト。朝日が昇る時に何が聴きたいか、ですよね。そこからの逆算です。ステージは複数あるんですけど、全部コンセプトも、ステージの形も、そこに出られるアーティストの毛色というか、そういう棲み分けはあるにせよ、一番最後のSUN STAGE、一番大きいオープンエアーなステージで何の曲を聴きたい? っていうところ。この曲を朝日が昇りながら聴いたら絶対いいよね、一つ前は何を聴きたい? っていう逆算です。もちろん時代の流行もあるでしょうし、ユーザーのニーズもあるでしょうし、そこは社内でミーティングに次ぐミーティング、提案に次ぐ提案です」
―会場は最初から今の石狩湾新港が候補でしたか
「全然違いますね。98年の夏に、飲みの席で『よし、来年やろう』という話が出て、探し始めるんですけど、すぐに雪が降ってしまって(笑)。苫小牧の方だったりとか、いろんなところを探し回りました。1カ所、札幌近郊のスキー場っぽいところが候補になったんですけど、やったことがないことをやるんだったら1回やってみようと。すぐに音響会社を呼んで、スピーカーを組んで、音楽を爆音で流したら、すぐ近くに高齢者施設があって、すぐ苦情が来ました。『撤収! ここはダメだ』と。そういうことをやりつつ、8月に開催したんですけど、雪融けのタイミングでも、日にちだけ発表して場所は決まってなかったんです。でたらめですよね(笑)。たまたま、いろいろなつながりとご紹介もあって、今の場所に出会えました。チケット発売とかアーティストのブッキングをやっている中で、6月ぐらいに僕たちは1泊しているんですよ。オールナイトでテント張って開催するんだったら、1回、テント張って泊まろうぜと。単なる朝までの飲み会だったんですけど、『夜は寒い』とか『足下はこうだ』とか『こういうものがあった方がいいんじゃないか』とか、『こういうお客さんに対してはこういう風にした方がいいんじゃないか』みたいな話し合いをしていたのがもう、27年前なんですね(笑)」
楽しもうとするためのアクション
―1回目を終えた時の印象は
「1回目は(正解が)僕たちも分からないし、お客さんも分からないし、という中で始めたので、『何を用意したらいいのか』『どういうアナウンスをすればいいのか』すらも分からなかったです。トイレの数とか、駐車場の台数とか。あと飲食店の数とか。飲食店が増えたら『じゃあ水はどうするんだ。来年は水道工事するか』と。『水を引っ張るってことは下水はどうする?』みたいな。街をつくっている感覚です。ライジングサンって、僕たちがお客さんに会場を提供して、アーティストにお声掛けして集めたり、用意しているものって全体の50%なんですよ。残りの50%はいらっしゃるお客さんがどう楽しもうと思って来てくれるか。何も用意せず、カッパも長靴も何も持たず、お財布1個でサンダルで来たお客さんは、たぶん50%しか楽しめなくて面白くないと思います。じゃあ『雨が降ったらカッパいるよね?』『暑かったら着替えどうしよう?』『足下どうしよう?』『テントってどうしよう?』『何を持って行ったらいいんだろう?』『お酒も飲みたいよね。冷たい氷も欲しいよね。朝起きたらコーヒー飲みたくない?』とか、そういう気持ちが50%あれば100%楽しめるんです。お客さんが100%の気持ちで来てくれたら、150%で楽しんでるお客さんになる、という気持ちです。僕たちは全部用意できているとは思ってないし、その中で楽しんでいただく。最低限のルールだけはあるけれど、そこの不便の中でどう頭を使って、この2日間、朝日が昇るまで最高な音楽を聴きながら楽しむぞっていうアクションだったり、行動だったりが、たぶん今の時代に感じられない自由を感じられる気がします。1回でいいからお客さんになってみたいです(笑)」
―2020年、21年とコロナ禍で2回中止がありました
「その前の年(19年)は台風で1日中止でした。あの3年間はちょっと堪えましたね…。いい勉強にもなりましたけど、ここで途絶えるのは嫌だなと思って、20年の時は同じようにオールナイトでYouTubeで開催したりしましたけど。そういう意味ではアーティストの方もすごく協力してくれて、何とか首の皮1枚でつながった感じでした。楽しみにしてくれているお客さんがいるっていうのは感じてはいましたが、僕たちもいつやれるかっていうのも言えない中だったので、すごくもどかしい感じではありました。でも、台風で1日中止、翌年から2年間コロナで中止、そして22年に小規模で開催した時には、お客さんの年齢構成が変わりました。10代、20代の割合がグッと増えたんです。逆に考えたら、その子たちはコロナで学校もオンラインで、コンサートにも行けない。そういう子たちが高校を卒業して、噂には聞いていたライジングサンに来た。そういうことなんじゃないかな。アンケートを調べても、フェスが初めてです、2回目ですっていう人の比率がすごく上がったので、(初開催から)20年を超えて、そういう年齢シェアが増えたってことは、この子たちが今後20年、ライジングサンを面白いと思って参加してもらえるように、一緒にまた歩けたら、ライジングももうちょっと長くできるんじゃないかなと思います。だから、そこはすごく前向きです。99年に初めてやった時はみんな『フェスって何?』っていうところから、アーティストですら『夏フェスって何ですか?』という時から、5回、10回、15回を経て今の形になったので、今は1回目、2回目の人たちを99年の子たちと思えば、一緒にその子たちが面白いと思うようなものをやっていくと、俺らも面白いねっていうことです」
―22年の時はCreepy NutsとYOASOBIも出演しました
「Creepy NutsとYOASOBIがあのタイミングでいましたね~。もう揃うことなんて、なかなかないでしょうね」
―ここ数年は気温上昇もしています
「北海道民として、夏が暑いっていう認識はないじゃないですか。今まで『夜は寒いから上着を持ってこい』とかはあったけど…。異常気象なのか、温暖化なのか。2000年代、2010年代は結構、夜が寒いイメージがありました。薄いダウンみたいなのを着ないとやってられない、みたいな。27年間で25回もやっていると、気候も変わりますね(笑)」
―始めた当初はここまで続くと想像していましたか
「そこを目標にやっているわけじゃないので、『25回目なんだ』と。あと5回やったら30回か~。毎年、同じことをやっているつもりはないので。ステージを変えたり、レイアウトを変えたり、出演者はもちろん全部違うんですけど、そういうお客さんが喜ぶようなものを毎回やってみたりしているから、(いつも)初回みたいな気持ちなのかな」
―過去にはウェディングも行っていました
「何回かやりましたね。そのうち1組はもうお子さんも産まれて。『ライジングで結婚式をやったら喜んでくれるかな?』から始まったのがウェディングでした」
RSRが道内アーティストの目標に
―RSR出演は北海道のアーティストにとって目標となっています
「うれしいですね。毎年『RISING★STAR』っていう新人の登竜門みたいな、オープニングアクトを務める1日1組のオーディションを行うんですけど、今年のファイナルに選ばれた5組のうち4組が北海道のアーティストでした。5分の4が北海道っていうのはうれしいです」
―今後イメージしているRSRは
「いや~、僕たちもお客さんと一緒に育たせていただいているわけですし、お客さんも育っていくわけだし、何ですかね? 先代のプロデューサーがよく言葉にしていた『ロックンロール、石は転がっていかないと。だから毎回、形もアプローチも違うんだよ』というのと同じで、30回やろうが50回やろうが、僕たちはお客さんに対するアプローチを変えていくだろうし、お客さんもお客さんでそれをどう楽しもうかって変えていくだろうし、それが一緒になった時にすごく大きいお祭りになるっていうことなのかな」
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