河野竜生 ピンチで威力発揮の〝魔球〟カット 「僕のおかげなんです」生みの親は清宮幸太郎
七回2死三塁、中日・岡林から三振を奪い、ベンチに戻る河野(手前左)を迎える清宮幸(右)=撮影・松本奈央
■セ・パ交流戦2回戦 日本ハム3-2中日(6月21日、バンテリンドームナゴヤ)
二走の生還を許さず役割を全う
日本ハムの河野竜生投手(27)が2点リードの七回1死二、三塁でマウンドへ。大島の二ゴロで1点を返されたが、岡林を空振り三振に仕留め、リードを守り切った。
リーグ単独トップの20ホールドポイント
「1点は仕方ない。大島さんのところは仕方ないなって。岡林のところは何が何でもっていうメリハリというか、ああいう緊迫した場面でも心に余裕がありました」
落ち着いたマウンドさばきを披露。最優秀中継ぎの選考基準となるホールドポイント(HP)はリーグトップの「20」に到達した。
七回2死三塁、中日・岡林から三振を奪い、ほえる河野=井上浩明
郡司のリードに身を任せてカットで勝負
この日、投じた10球のうち9球がカットボールだった。
「キャッチャーの郡司さんがドラゴンズでやっていてバッターの特徴はファイターズの中で誰よりも知っていると思う。そこは郡司さんを信じて、首振るつもりもなかったし、郡司さんに任せてっていうところで最後までいいリードしてくれました」

伝家の宝刀 誕生のエピソード
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河野の代名詞とも呼べるカットボールには、こんなエピソードがある。
〝魔球〟の生みの親は、七回に貴重な追加点となる右越えソロを放った清宮だった。「あれ、僕が生み出した変化球って言っても過言ではないです」とドヤ顔する。
七回2死、清宮(左)がソロ本塁打を放ち、チームメートとハイタッチを交わす
遊び感覚で投げたボールに衝撃
2021年のオープン戦期間中。2年目の河野は先発として調整をしていたが、DeNA戦で2回を投げて9失点を喫するなど苦しんでいた。
ある日のオフ、2人は札幌の室内練習場でたまたま居合わせた。河野が「キャッチボールしようよ」と誘い、清宮が「いいっすよ」と快諾。さまざまな変化球を投げていく中で、左腕が遊び感覚で投じた「カットボール」に衝撃を受けた。
「これ絶対、使った方がいいっすよ」
清宮はその場面を振り返る。
「河野さん、これめっちゃいいっす。これ絶対、使った方がいいっすよって。これが一番いいっすって言って。キレがあったっす。ほかの変化球はぜんぶ山がある感じだったんすけど、カットボールだけは、真っすぐに近い軌道からフッて動く感じがあって。みんなが戸惑う変化球だなって思います」

最大の武器を携えて昨季はタイトル奪取
後輩スラッガーから助言され、河野もすぐに受け入れた。
「すぐ投げてみようと思いましたね。バッター目線で見て、嫌なボールがいいボールってこと。幸太郎もいろんなピッチャーを見ていたし、いいのかなって。それが今になっては軸になっているので、投げて良かったと思います」
試合で投げる割合を増やし、今では最大の武器に。昨季は直球とカットボールを軸に最優秀中継ぎのタイトルに輝き、今季もここまでリーグトップの18ホールドを挙げている。

ターニングポイントとなった4年前のあの日
清宮は誇らしげに言う。
「河野さんも、おまえのおかげみたいに言ってくれる。だから、僕のおかげなんです」。4年前、偶然から生まれた〝魔球〟は、この日の勝利にもつながった。
七回、3番手で登板した河野(左)と清宮幸(中央)