山県秀 プロ初本塁打を放ったドラ5ルーキーの人間性に迫る
四回2死一塁、2ランホームランを放ち、チームメイトに迎えられる山県=撮影・岩崎勝
■セ・パ交流戦2回戦 阪神4-5日本ハム(6月4日、エスコンフィールド北海道)
うれしいプロ1号は価値ある勝ち越し弾
人生最高の一撃で、虎を退治した。日本ハムのドラフト5位ルーキー・山県秀内野手(23)が2ー2の四回に左翼後方ブルペンへ、プロ初本塁打となる決勝2ランを叩き込んだ。
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文武両道を貫きながらプロ入り
小学校2年から大学2年までピアノを習い、ショパンの幻想即興曲を弾きこなす。野球推薦を受けず、日本屈指の進学校・早大学院に入学し、将来の起業も見据えて早大商学部に進学した。
当初は勉学に専念して野球をやめることも考えたが、持ち前の明晰な頭脳と守備力を生かして4年間で実力を伸ばし、夢のプロ入り切符をつかみ取った。
四回2死一塁、山県が2点本塁打を放つ=撮影・桜田史宏
母・眞美子さんが心配するほど穏やかな性格
穏やかな話し方で、優しい性格。母・眞美子さんは、「プロ野球選手には向かないのかな」と心配する。体育会系の選手が揃う弱肉強食の世界では、異彩を放つ存在だ。
庄司教育ディレクターも驚く 「僕が勉強になりました」
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それでも、育った環境、経験の違いは人を魅了する〝人間力〟を育んだ。新人選手らの生活面などを指導する庄司選手教育ディレクターは、山県と出会ってすぐ、その立ち振る舞いに驚かされたという。
「今年、高卒の新人が5人いるんですけど、秀(山県)は特定の誰かにじゃなくて、5人に満遍なく、よく話しかけているんです。すごいなと思って、僕が勉強になりました。みんなにおんなじくらい、ちゃんと接しているんですよ。誰かだけじゃなくて」と目を細める。

〝散歩リーダー〟に就任
鎌ケ谷の勇翔寮で暮らすルーキーたちは毎朝、合同で散歩を行っている。山県も1軍合流前まで参加していたが、人間性にほれ込んだ庄司ディレクターは〝散歩リーダー〟に指名した。
「秀は、周りが見えている。思わず、秀に(自分が)いない時は頼むと言いました。安心です。確認もなんにもいらないです。(自分が)いない時はフリーにしようかと思ったけど、秀がいればたぶん、僕がいる時より、ちゃんとやっていたと思います」と絶大な信頼を口にする。
すべてを大絶賛 「人として尊敬できる」
庄司ディレクターは山形中央高で監督を務めるなど、豊富な経験の中で多くの野球選手を見てきた。だが、山県のような選手は一人も見たことがなかった。
「こんな選手は、今までいろんな選手を見てきた中で初めてですね。人として尊敬できる。すごい選手だなと思います。頭も良くて賢いんですけど、人間味があって。バランス感覚に長けていて、視野が広いんですよ」
私生活でのバランス感覚、視野の広さは、野球に好影響をもたらすという。
チームメートと勝利のハイタッチをする山県
「(山県の持ち味である)ああいう守備って、たぶんそういうところからつながっているんですよね。よく周りが見えていて、気遣いができる。人が気付かないようなところに気付ける。毎日の朝活動で、秀から学びました。秀から教えてもらえることが、たくさんあるんです。あいさつ一つとっても、日ごとに上手になっている。先輩からいいところを吸収して、自分のものにして、それを後輩に教えて。秀の方が先生みたいな感じです」と笑った。
局面を変える活躍で勝利を引き寄せた
一つ、庄司ディレクターは〝予言〟していた。「大事な局面で、今だったら守備で、ちゃんと局面を変えてくれる。局面を制する力を持っている」。守備ではなく打撃だったが、山県はこの日、会心の本塁打で局面を変え、チームを勝利に導いた。
華のある守備、意外性のある打撃、そして類いまれな人間性を兼ね備える遊撃手。今やもう、優勝を目指すチームに欠かすことのできない戦力だ。
ヒーローインタビューを終え、田中(左)とともにスタンドの声援に応える山県