阪口楽 8カ月ぶりアーチ 極度の不振で沈む心 支えた野村の電話と細川の置き手紙
本塁打を含む2安打をマークした阪口=撮影・近藤裕介
■イースタン・リーグ7回戦 巨人6-4日本ハム(5月13日、鎌ケ谷スタジアム)
思い出した心地の良い感触
長く暗いトンネルの中から、ついに光を見つけた。日本ハムの阪口楽内野手(21)が「8番・一塁」で先発し、五回に一時同点となる今季1号の右越えソロを叩き込んだ。
飛距離が武器の大砲候補だが、本塁打は昨年9月18日の2軍ヤクルト戦以来約8カ月ぶり。「久々すぎて、(どう打ったのか)あんまり覚えていないです。(スタンドまで打球が)行くのかも分からなかったので、行って良かったです」と、手に残る感触をかみしめた。
今季1号ソロを放った阪口
苦境に陥ったプロ4年目シーズン
昨年はイースタン・リーグで11本塁打をマークし、飛躍の準備が整ったかに見えた。しかし、高卒4年目の今季は開幕から極度の不振に陥った。この日の試合前まで、76打数8安打で打率.105、長打は二塁打1本のみだった。
「今年は確率を上げてと考えていたんですけど、全然ダメでした。マジで苦しかった。とにかく苦しかったです。何をやってうまいこといかなくて。いろいろ、監督もコーチも、引き出しをいっぱい出してくれて教えてくれていたんですけど、なかなかハマらなくて」と、苦悩の日々を過ごしていた。
同期組の活躍に焦りも 「もう残りは僕だけか」
この記事は有料会員限定です。
登録すると続きをお読みいただけます。
時を同じくして、同学年の同期でライバル視していた有薗は2軍で大活躍。気にならないはずがなかった。
「病んでましたね。有薗があれだけ活躍して、かなり差が開いたなと。(同学年は)ピッチャー陣も良くて、有薗も(1軍に)行った。もう残りは僕だけかと、焦りはありました」と素直な胸の内を明かした。
効果抜群! 稲葉監督からのアドバイス
浮上のきっかけは、稲葉2軍監督からの助言だった。10日に敵地で行われる予定だった楽天戦が雨天中止となり、室内で打撃練習を行った際、投手役を務めてくれた指揮官から指導を受けた。
「内容は企業秘密でちょっと言えないんですけど、その時に監督からボソッとアドバイスをもらって。きのう(12日)は休みだったんですけど、(自主練習中に)『あれ、これちゃうかな』というのがあって」。手応えをつかみ、この日は本塁打を含む2安打をマーク。「きょうはそれをやってみて、良かったので、これを引き続きやっていこうかな」と、ようやく進むべき方向が定まった。

主砲からの電話 「何をしとんのや」
真っ暗闇の中にいた時、多くのチームメートたちが手を差し伸べてくれた。約2週間前には、3学年上の野村から1本の電話がかかってきた。「『何をしとんのや』という感じでしたね」。チームの4番として大きなプレッシャーを受けながら戦う先輩からの、励ましの電話だった。
「本当になんか、僕が闇に落ちてたので。何をやってもうまくいかなくて、解決策が全然なくて。そんな時に電話をいただいた。すねてる場合じゃないなって気付かされました。期待に応えたいです」
1学年上の細川からも激励の〝メッセージ〟
同じ京都出身で仲が良い1学年上の細川からは〝置き手紙と本〟をもらった。
「一緒にいる時には、ずっと慰めてもらっていました。あの人(細川)が1軍に行く時に、僕の部屋に本を置いて行ってくれたんですよ。『これを読んで、ウタ(阪口)に響くものがあったら』みたいな感じの直筆の置き手紙と一緒に。ちょっともう、はぁ…ってなっていた部分があったので、それで、俺、もうやるしかないな、と思いました」。先輩たちからの熱い激励に、自然と気持ちが前を向いた。
今季1号ソロを放った阪口がチームメートとハイタッチを交わす
迷いを断ち切り前を向いた21歳
結果が出ない期間に、野村、細川だけでなく、多くの指導者や仲間に支えられていることを再認識した。
「やっぱり、いろんな方に応援してもらっているので、もう一回、気を入れてやるしかない。もう開き直って、頑張るしかないです」。少し出遅れたが、シーズンは長い。阪口の野球人生はもっと長い。つらく苦しかった時期を乗り越えた経験が、必ず将来につながっている。