真冬の〝モエレ山ダッシュ〟効果だ 札幌大谷2年生スラッガー寺町が支部新記録8打点【春季札幌支部】
走者一掃の長打を2本放つなど、春の支部記録となる1試合8打点をマークした札幌大谷の寺町=撮影・西川薫
■春季全道高校野球札幌支部(5月13日、札幌モエレ沼公園)
▽Eブロック1回戦 札幌大谷13-2北海道科学大高 ※七回コールドゲーム
4季ぶり支部敗退後から下半身強化
2022年夏の甲子園出場の札幌大谷は、5番・寺町颯太遊撃手(2年)が春の支部記録となる1試合8打点を挙げるなど、15安打13得点の猛攻で北海道科学大高に七回コールドゲームで大勝した。昨秋は4季ぶりの支部敗退。秋から冬にかけては練習グラウンドから近距離にある札幌モエレ沼公園野球場横にそびえ立つモエレ山で走り込みを行い、下半身を徹底的に強化した。
自慢のパンチ力で3安打8打点
ベンチプレスではチームトップの120キロを挙げる寺町が、自慢のパンチ力を武器に3安打8打点の固め打ちだ。春先にはスイング時に左足を上げるのをやめ、すり足に変更。目線の上下のブレが少なくなって調子が上昇した。
3月末からの関東遠征では東海大相模との練習試合でマルチ安打をマーク。今月1日にモエレ沼球場で運営テストも兼ねて行われた練習試合でも5打数4安打。「最近、調子が良いので全試合こんな感じでやっています。(8打点は)初めて。冬にやってきた成果が出た」と声を弾ませた。
駒苫V2戦士・五十嵐監督が猛特訓 モエレ山が〝虎の穴〟へ
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昨秋の悔しさを胸に、メンバー全員が大自然の中での厳しい走り込みを耐え抜いた。昨春、五十嵐大監督(27)が就任。2005年に駒大苫小牧で夏の甲子園V2の経験もある指揮官は、このオフに「今まであんまり走ってこなかった」と下半身強化を決意。同校の練習グラウンドから車で10分もかからないモエレ山を〝虎の穴〟とした。
雪が降る前から約60人の1、2年生部員を「モエレ組」と「室内(練習場)組」に分け、雨の日も、吹雪の日も、一日おきに入れ替わりながら標高62.4メートルの頂上まで走って下ってを10往復。真冬には新雪に足を取られながらも、かき分けながら頂上を目指した。
冬の間、週3回の走り込みをしたモエレ山をバックにプレーする札幌大谷の寺町遊撃手(中央)
「甲子園のためなら」
1年春から全試合に先発する寺町は、昨秋の立命館慶祥戦では「3番・遊撃」で先発したが、4打数無安打3三振と不振にあえいだ。「その悔しさで冬の練習をやってました。登って外周して登ってを繰り返ししたりしてました。結構へとへとになりました」。心が折れそうなときは「監督がいつも甲子園のためならと言ってくれるので」。指揮官の言葉を信じて、前を向いた。
その成果は雪解けとともに数値となって表れた。五十嵐監督はチーム全体として「20メートルのシャトルランを計測すると、そこはかなり伸びてる。心肺機能は変わったかな」と、トレーニングの成果を口にする。
中等部時代にも応援で訪れた聖地へ
寺町は札幌本通小5年時から、少年野球の強豪・東16丁目フリッパーズでプレー。中学の進路は「毎日、硬式(球)を触れる」と、道内の中学硬式で唯一、部として活動する札幌大谷中等部へ進学。22年の甲子園出場時には、中等部も日本選手権に出場。同じユニホームに袖を通した先輩たちが聖地でプレーする姿をアルプススタンドで応援した。「かっこ良かったです。自分もあの舞台に立ちたい」と憧れる。
偶然にも今春の支部予選は代表決定戦まで4試合全てがモエレ山から見下ろす新球場で行われる。この日も守備に就くときには必ず目に入り、辛い冬の練習を思い出したという。その経験は無駄にはしない。「夏は先輩たちのために尽くして、甲子園に行くだけ」。強力打線の中軸を担う2年生スラッガーが、チームに勢いをもたらす。