コンサドーレ
2023/12/02 18:00

札幌三上大勝GM特別インタビュー【小野伸二がくれたもの】③引退後はいろんな可能性がある

2022年11月5日に行われた最終戦のセレモニーであいさつする三上代表取締役GM(右)とMF小野(左)

 北海道コンサドーレ札幌MF小野伸二(44)の現役ラストゲームとなるあす3日の浦和戦(札幌ドーム、14時キックオフ)に合わせ、道新スポーツでは札幌を運営する(株)コンサドーレの三上大勝代表取締役GM(52)に単独インタビューを実施。最終回は、引退決断の経緯、引退後の選択肢、その後のクラブとの関わりについて聞いた。(聞き手・工藤友揮)

 21年の札幌復帰から3シーズン目を迎えた今年9月27日、小野は自身の44歳の誕生日に26年間にわたるプロサッカー選手としての生活に終止符を打つことを発表した。

シーズンが終わるごとに「現役か引退か」と向き合っていた

―小野が自身の誕生日に現役引退を発表したが、その話はどのくらい前から聞いていたのか
 正直なところ琉球から札幌に戻ってきてからは、シーズンが終わるごとに伸二はそのこととの向き合いを真剣にしていました。シーズン終了後、本当にまだ自分は選手としてやりたいのか、成長できるのか、チームのためになるのかを一回、頭を真っ白にして考えさせてほしいと。琉球から戻って来て以降は毎回、シーズン後にそれを踏まえていたので、クラブとしてはいずれ遠くない時間でそういう決断はあるだろうとは感じていた。

夏以降のタイミングで伸二の方から話

 復帰して1シーズンが終わり、2シーズンが終わり、毎年そういうことを繰り返してきて、今年に関してもスタートの時に同じような向き合いをし、「もう1年、頑張ろうと思います」とやっていたけど、夏以降に本人が膝の状態、足首の状態が今まで以上に思わしくないという感触があったと思うんです。その中で夏以降のタイミングで、伸二の方からこういうことにも真剣に向き合わなきゃいけないんだと話がありました。

自分自身が辞める決断をできる1割の選手だから

 僕としては、プロの世界は厳しい世界だけど、大きく言って2通りの選手がいて、一つは大半の選手がそうだけどクラブや周りの方に「もう辞めなさい」と言われて辞めなければいけない選手。これがほぼ9割。でもほんの1割、周りの人の声ではなく自分自身が辞める決断をできる選手もいて、その1割に伸二も入ると思っているよと。なのでいろんな相談には乗るけど、まずは自分の中でしっかり考えてほしいと話をさせてもらった。

これ以上は引退した後の生活に支障が出る

 最終的にこれ以上体を酷使するとセカンドキャリア、引退した後の生活などに支障が出る、もしくは家族含めて非常に不安な状況になるかもしれない、ということだったので、それを受け止めると伸二からあって。その発表をこういうタイミングでやりたいんですということだったので、そこに関しては伸二の考えに賛同するから、しっかりもう一度、家族含めて話し合って、また最終決断を聞かせてほしいと事前に伝えて、誕生日の当日を迎えた感じですね。

日本サッカー界の輝かしい世代が幕を閉じようとしている

―コンサドーレのトップの立場を離れ、一人のサッカー関係者として『小野伸二現役引退』という出来事をどのように感じているか
 伸二の世代は日本サッカーの一つの輝かしい世代だったと思う。今でこそ海外で活躍する選手が当たり前のように出てきて、それが大きく取り上げられることなく普通に報道されるような一般的な事になってきた。それをつくった大きな要因になったのが伸二であったり、伸二を含めたその世代だと思うんですよね。じゃあ、その世代の中心的な選手って誰? というと、やっぱりそれは小野伸二なので。サッカー界における大きな節目の一つの世代が幕を閉じようとしているんだなと。また伸二のような選手が日本の中で生まれるのであれば、コンサドーレの中でどうやって育てていけばいいかなと、より真剣に考えるようになったという話を伸二としています。

クラブ経営者、協会トップ、指導者、普及活動

―小野の今後について現時点では明らかにされてないが、今後どのように札幌に携わってほしいと思っているか
 まず、小野伸二にはいろんな可能性があると思っているんですよ。こういうクラブの経営的なことだってできるし、リーグやサッカー協会といった団体等々のトップに就く能力も十分にあるのではないかと思っています。一方で、非常に興味深いサッカー観や人間力を持っていたりするので、指導者の道でもすごく輝ける可能性を持っているし、トップではなくアカデミー、普及でのサッカー伝道師的な役割も、逆にそこは彼にしかできないのかなと思ったり。いろんな可能性があると思うんですよね。

最初に自分のありたい姿をはっきりさせた方がいい

 そういった中で伸二に話していることは、自分のありたい姿をなるべくはっきりさせていった方が良いと思うこと。それがクラブ経営だとかリーグ、協会になっていくのか、指導者としてなっていくのか、それとも普及、伝道師のような形になっていくのか。それが決まった上で、最初は普及から入っていきます、クラブ経営から入っていきます、とある方が、より最後のありたい姿が指導者、あるいはクラブ経営だとしても、すごく意味のある経験になっていくからという話をさせてもらった。伸二自身は、引退まではサッカー小僧として集中させてほしいということなので、終わり次第、またそこについては話そうと。というところで今は終わっていますけども。

札幌と距離を置くようなことはない

 一方で、もう一つの僕らの希望としては、どんな形であれ札幌と小野伸二とのつながりは継続してやっていきたいことだけは強く伝えさせてもらっている。伸二の方も、自分がどの道を選ぶかは現時点ではっきりしていないけれども、札幌と距離を置くようなことはない、自分も考えていますと言っていただいている状況です。

最後も伸二らしく ボールと友達になり面白いプレーを見せてほしい

―現役ラストゲームとなる3日の浦和戦。小野のどのようなプレー、どのような姿に期待するか
 ピッチに立つことになったら、『サッカー小僧・小野伸二』をそのまんま見せてほしいなと思っているし、当日の観客の皆さんが期待しているのもその一点だと思う。なので伸二らしく、楽しくボールに絡んで、ボールと友達になり、仲間を信用して、面白いプレーを見させてほしいなって思っています。

 

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