高校野球
2023/08/17 23:45

激闘の爪痕を残しベスト16敗退の北海 神村学園の左腕・黒木に終盤の粘り発揮できず【夏の甲子園】

スタンドの応援団にあいさつを終え、ベンチへ引き上げる北海の選手たち(撮影・宮永春希)

■全国高校野球選手権第11日(8月17日、阪神甲子園球場)
▽3回戦 神村学園(鹿児島)10-4北海

今大会初失策からミスの連鎖

 1回戦から2試合連続のサヨナラ勝利で勝ち上がって来たが、終盤の粘りを発揮することはできなかった。2試合無失策だった鉄壁の守備にほころびが生まれ、ミスの連鎖で失点を重ねた。記録上は2失策も、記録に残らないプレーも多く、10失点中、自責は5。昨年8月からのチーム結成後、唯一敗れた昨秋の全道決勝のクラーク戦同様、最後はミスが命取りになった。

初回の大量失点でプラン崩れる

 一回、1死から関辰之助三塁手(3年)の一塁への暴投で出塁を許すと、四球と安打で先制点を献上するなど4失点。平川敦監督(52)は「競った展開でいかないと勝てないと思っていたので、初回の4点では厳しい展開でいかざるを得なかった。非常に悔やまれる、悔しい気持ちでいっぱいですね」と、立ち上がりの大量失点でプランが大幅に狂った。

強力打線を相手に厳しいコース狙うも11四球

 1、2回戦では、3投手が複数回マウンドに上がる超小刻み継投がはまったが、3回戦では一転。先発の岡田彗斗投手(3年)が4回、五回以降は熊谷陽輝一塁手(3年)が九回2死まで投げ、長内陽大外野手(3年)の登板はなかった。代わりに九回は橋本理央投手(3年)がマウンドに上がり、3人合計で被安打12、11四球。強力打線相手に厳しいコースを突いていったが、逆に苦しい展開となった。

エース岡田「厳しく攻めたけど、そこも食らいついてきた」

 試合後、先発した岡田は控え室で泣き崩れ、長内に背中をさすられながら励まされた。岡田は一回と四回、ともに2死から失点。「厳しく攻めたけど、そこも食らいついてきた。4点でも抑えられたのは大きい方だと思う。ロースコアで後半勝負のつもりだったけど、点数を与えてしまい申し訳ない」と涙が頬を伝った。
 

一回2死一、三塁、神村学園・岩下に先制打を浴びた岡田(中央)

 

2番手の黒木対策は前日に練習も無安打

 攻撃面では試合前日に行った対策を生かし切れなかった。2-7で迎えた五回に熊谷の2点本塁打で3点差に追い上げたが、直後に交代した左腕・黒木陽琉投手(3年)の前に打線は無安打。四球で2人出塁するのがやっとだった。

左打者の背中側から来るスライダーは「今まで見た中で一番曲がった」長内

 五回から一塁手として途中出場した長内は、黒木相手に2打席連続三振。特に九回の第2打席では、左打者の背中側から大きく曲がってくるスライダーに仰け反ったが判定は見逃し三振。「今まで見た中で、一番曲がっていた。初見は本当にきついなと思った。2打席目だったので何とか粘ってラッキーでもいいので塁に出られたらと思ったけど、うまくいかなかった」と目を真っ赤に腫らした。
 

九回、先頭の北海・長内が見逃し三振に倒れる

 

ラッキーボーイ小保内も不発

 甲子園3試合目で初スタメンを勝ち取った小保内貴堂外野手(3年)は、前日の対策が足りなかったと悔やんだ。「2時間という決められた練習で対策しなくてはいけない中で、昨日の段階ではほとんど掴み切れてなかった。自分自身も、こういうピッチャーが来るっていうのは分かっていたけど、それ以上のものだった」と最後まで捉え切れなかった。

ベンチ入り20人中、3試合で17人が出場

 3回戦で敗れはしたが、チーム一丸となって勝ち上がってきた。今大会、平川監督が「ラッキーボーイ」と呼んだ小保内の背番号は17。1回戦の明豊戦ではチーム甲子園初アーチなど3打点。2回戦の浜松開誠館戦でも、八回に同点打を放ち勝利に大きく貢献。2回戦では、右手を負傷した幌村魅影遊撃手に代わって、背番号14番の谷川凌駕内野手(2年)が穴を埋めるなど、3試合合計でベンチ入り20人中、17人が出場した。春は7番だった小保内。「背番号17になったっていう時の悔しさが、本当に練習量を生んで、その結果だった。悔しさが自分を強くした」と最後はすっきりとした表情を浮かべた。

平川監督「負けた悔しさをどこまで真剣に持ち続けられるのか」

 この試合のスタメン9人中、3人が2年生。北海道の高校では、この夏一番最後まで勝ち続け、一番遅い新チームのスタートとなる。平川監督は「 負けた悔しさをどこまで真剣に持ち続けられるのか。去年の秋に負けた時もそうだけど、その時は悔しい思いを持つけど、月日が経つうちにそうじゃないと思えることも多々出てくる。本当にここの悔しさを秋、来年まで1、2年生が持てるのか。目的意識を持ってちゃんとできるか」と次を見据えた。全国最多を更新する40度目の出場で激闘の爪痕を残し、甲子園球場には別れを告げた。来年は阪神甲子園球場100周年の節目の年。伝統校が再び聖地を目指して、一から出直しを図る。
 

試合終了後、グラウンドを見つめる北海・平川監督


 

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