高校野球
2023/08/02 15:00

熊谷、岡田ら29人が生活する「ゲストハウス北海」 運営する立島夫妻がエール「優勝して」

野球部専用寮「ゲストハウス北海」に入居する北海ナインと立島部長(後列右)(撮影・西川薫)

立島部長の両親が経営

 北海の部員59人中、大阪や神奈川などから入学した29人が入居しているのが野球部専用の2棟の下宿「ゲストハウス北海」だ。グラウンドから徒歩5分の距離にあり、立島達直部長(33)の両親が営んでいる。また2年前から同校の応援団OBが毎月300キロの米を寮に差し入れるなど、遠方に住む保護者たちが安心して子供たちを預けられる環境を整えている。

父は規律に厳しい元〝鬼軍曹〟 母は食事を担当

 規律あり、笑いありの下宿生活だ。立島部長の父・満弘さん(65)は元自衛隊のレンジャー出身。滝川駐屯地で下士官のトップ、最先任上級曹長を経験している本物の〝鬼軍曹〟だ。あいさつや忘れ物には厳しい。下宿には9か条の約束事があり、違反すると〝罰金〟が徴収されるが、年末のクリスマスパーティーで還元されるという。

「熊谷は豚キムチが好き」

 食事を担当するのは、母・敬子さん(67)。下宿を始める前までは、中央区の学生会館で60~70人の大学生の食事を作っていた。「子供たちはみんな孫のようです。大変なこともありますけど、各学年にしっかりまとめる子がいる。3年生だと岡田(彗斗)と橋本(理央)の2人の下宿長。みんな大人になりましたね」。下宿生の人気料理はチキン南蛮や酢豚で「熊谷は豚キムチが好きですね」。試合前夜は縁起を担いでカツ丼やトンカツが振る舞われるのが伝統で、南大会決勝前夜はトンカツ、当日の朝食はハムカツを振る舞ったという。
 

熊谷の部屋は、かつて巨人・鍵谷、ヤクルト・阪口、ソフトバンク・木村が入っていた出世部屋

 

 

2018年に借金して買い取り

 元々OBの立島部長が入学時から入っていた下宿。「食事を何とかしたかった。温かいもので、できたての熱が入った料理を食べさせたかった」と、2018年に当時の運営会社から借金して買い取った。妻の萌絵香さん(28)を入れた4人で1棟目を開業し、翌年には斜め向かいにあったもう1棟も買い取った。住み込みだった立島部長夫婦は子供が生まれた3年前に退去し、現在は主に両親2人で経営している。

 21年の選抜甲子園出場時は現地で応援したが、今回はテレビ観戦の予定。満弘さんは「大掃除です」と笑みを浮かべ、敬子さんは「いまの3年生は去年の夏に大差で負けて悔しい思いをしている。思いっきりやってほしいし、優勝してほしい」とエールを送る。

応援団OB加我会長から毎月300キロの米

 その下宿に毎月300キロの米を提供するのが、札幌で不動産業を営む加我洋三さん(59)だ。高校時代は同校の応援団に所属。卒業後はOB会の2代目会長を務める。

 きっかけは21年甲子園出場後のこと。コロナ禍で高校野球の観戦が規制された。立島部長が野球部の地方から来た生徒を預かっていると聞いて「応援団OBとして、何かお手伝いができないかと。声を出すだけが応援じゃない」と、米の差し入れを提案した。「どれぐらい食べるの?」と聞いたところ、返ってきた答えの「月300キロ」にびっくり仰天したという。一度、口にしたからには男に二言はない。今後も「商売がうまくいっている間は」と、継続するつもりだ。
 

毎月300キロの米を差し入れている、同校応援団OB会会長の加我さん(中央)と3年生

 

 

熊谷ら寮生から「夏の甲子園に連れて行きます」と書かれた色紙プレゼント

 加我さんが大事にしている1枚の色紙がある。昨年冬、2年生の下宿生8人を連れて焼き肉に行った。その時に、熊谷らが加我さんに決意を書いた色紙をプレゼント。「いつもありがとうございます。2023年の夏の甲子園に加我さんを連れて行きます」。10カ月越しの有言実行に笑みを浮かべた。

 加我さんが高校3年生の時、野球部は甲子園に出場できなかったため、「今回は初めて。応援団OB会特製の緑のTシャツで応援したい。まずは1勝」。伝統の学ラン姿ではないが、アルプススタンドで精いっぱい声をからして応援する。

下宿生の3年生8人から、加我さんに渡された色紙

 


 

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