芸能文化
2023/05/17 19:00

【コロナからの夜明け】③ ライブハウス「サウンドクルー」 今こそライブハウスでしか経験できない感覚を求めよう

「サウンドクルー」店長の山崎優一さん(左)とブッキングマネージャーの菊地弘崇さん

遠のいた客はなかなか戻ってきていない

 耐え忍ぶときはまだ続きそうだ。1999年に札幌市内にオープンしたライブハウス「サウンドクルー」(札幌市中央区大通東2)は、新型コロナの感染症法上の位置付けが「5類」に移行した今もなお苦しい現実に直面している。徐々にコロナ禍前の生活に戻りつつあるが、一度遠のいた客はなかなか戻ってきていない。店長の山崎優一さん(43)が現在の心境を吐露した。

 新型コロナの影響は、予想以上に大きいものだった。コロナ禍以前は約120人収容できるホールが、連日イベントの予定で埋まっていた。しかし2020年、未曾有の事態に陥るとライブなどは軒並み中止。山崎さんは「お酒も出せなかったですし、収入はゼロになった。助成金や給付金でしばらくしのいでいた」と振り返る。「COLONY」や「スピリチュアルラウンジ」など閉店を余儀なくされたライブハウスもあった。

配信ライブに挑戦「全く手を付けたことのない分野」

 先の光が見えない中で、さまざまな工夫を凝らした。一番大きな変化は配信ライブの挑戦だ。初めての試みにブッキングマネージャーの菊地弘崇さん(37)は「やっぱり勉強することが多い。全く手を付けたことのない分野。一つ一つ用語から勉強しました」と悪戦苦闘しながら事態打開に時間を費やした。

時間が長引くにつれ出演者数も減少

 時の経過と共に制限は緩和されてきたが、音楽ライブという娯楽は取り残されたままだという。山崎さんは「世の中の風潮的に元に戻ろうという感覚があるのはいいことだと思うけど、ライブハウスは結構、尾を引いている」と現状を説明。来場客のみならず、出演者数も減っており、ライブへの感心が薄れてきていると実感する。「世の中の感覚が変わってしまったような感じがあって、普通に営業しますよって言っても、また前みたく(ライブハウスに)行こうっていう感覚が減ったような気はします」。

 コロナ禍では給付金などによる収入もあったが、新型コロナが「5類」に移行し、その収入も失われた。山崎さんは「戻ったって全く余裕はない。そこが一番困っているところです」と嘆いた。「結構根深いと思います。今年、できれば元に戻りたいけど、時間かかるんだろうなと思っていて、その間につぶれないようにするにはどうしたらいいか、今考えなきゃいけないところ」。

ライブ未開催日はバー営業「遊び場ですよって日に」

 現在ライブを開催していないときはバーによる営業を行い、敷居を下げている。「ライブハウスだって思っていない方に来てもらおうっていうコンセプト」(山崎さん)。酒目当ての新規客が立ち寄ることもある。菊地さんは「ふらっと遊びに来たらライブがやってて『見られますよ』っていう形になっていく他ない。ライブのイベントをがっちりしてますよっていう日と、遊び場ですよっていう日にしていくべきなのかな」と思案した。

来てもらって〝生の音〟を感じてほしい

 何にも変えがたい体験が得られるのがライブハウスだ。サブスクリプション型サービスやSNSなどで気軽に音楽に触れられる世の中だからこそ〝生の音〟を感じてほしいと山崎さんは訴える。「やっぱりライブハウスでしか経験できない感覚ってあると思う。行かないと感じられない音、景色、空気を(ライブハウスに)来てもらえれば感じてもらえると思う」と力を込めた。止まない雨はない。ライブの持つ力を信じて踏ん張っていく。

あわせて読みたい