ファイターズ
2022/09/03 00:05

伊藤大海が4度目の正直で10勝到達「何とかできてホッとしています」

6回8安打も1失点の粘投をみせた伊藤

■日本ハム3-1楽天(2日、楽天生命パーク)

新人から2年連続は西崎以来34年ぶり

 3度はね返された壁を、ついに乗り越えた。10勝に王手をかけてから4度目の先発に臨んだ伊藤大海投手(25)が、8安打を浴びながらも6回1失点で粘りきり、1カ月ぶりの白星を手にした。新人から2年連続での2桁勝利。球団ではトレンディエースと呼ばれた西崎幸広以来34年ぶりの快挙だ。

 「素直にうれしい気持ちと、良くても悪くても週1回マウンドに送ってくれたビッグボスはじめ、コーチ陣に感謝したいなと思います。(10勝は)意識していないって言ったらうそになるので、ずっと意識はしていた。何とかできてホッとしています」

ピンチの連続も「気持ちを切らすことなく投げ続けられた」

 立ち上がりは3者凡退に抑え、好スタートを切ったが、二回以降はピンチの連続。六回まで毎回走者を背負い、四回以外は全て得点圏に進まれた。それでも、失点は小郷に許したソロ本塁打の1点のみ。「見てる側には心臓に悪い投球内容だったと思うんですけど、僕自身は気持ちを切らすことなく投げ続けられたので、それが良い結果につながったかなと思います」と胸を張った。

冒険心取り戻し〝ダル流カットボール〟習得

 前回登板後の調整期間で〝ダル流カットボール〟を習得し、この日の1球目から使った。「カットボールが最近良くなくて、ダルビッシュさんのユーチューブに『誰でも投げれるカットボール』みたいな動画があるんですけど、それを見て改良した。元々の持ち方とかも全然変えた。ダルビッシュさんの動画のまんまで投げていました」。シーズン中に変化球の握りを大幅に変えれば、当然リスクもある。それでも、「最近投げるたびに、自分の良さである新しいことにチャンレンジするということを忘れていたので、きょうは思い出して」と意に介さず。失っていた〝冒険心〟を取り戻したことが、久々の勝利をつかむきっかけになった。

父の助言「トンボのように頑張りなさい、前だけ見てなさい」

 10勝目前で、足踏みが続いた。支えになったのは、家族からの言葉だった。毎年、8月31日の誕生日に両親へ感謝を伝えている右腕。今年も連絡を取ると、父・清光さんから「トンボのように頑張りなさい、前だけ見てなさい」と背を押された。

 伊藤は高校時代、「前にしか飛ばない」「後退しない」という習性が気に入り、グラブにトンボの柄をあしらっていた。地元・鹿部町の空を飛ぶトンボを見て、当時の息子の姿を思い出した父からの、心のこもった励ましだった。この日、右腕は「前だけ見て投げました」と父の思いを体現し、チームを勝利に導いた。

 エースを目指す道産子にとって、10勝は通過点だ。「超えていかなきゃいけないと思う。次のマウンドも楽しんで、トンボのように頑張ります」。前に向かって飛ぶ伊藤には、11勝目しか見えていない。

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