ファイターズ
2022/04/01 00:07

新庄ビッグボス初勝利 歴史的1勝生んだ両親の教え

監督初勝利を飾った新庄監督(右)は、松本剛からウイニングボールを受け取った

■日本ハム6ー2西武(31日、札幌ドーム)

  荒波にもまれながら、ビッグボスが操舵(そうだ)する船が出航した。球団25年ぶりの5連敗スタートから、本拠地開幕カードのラストに白星を刻んだ。個性豊かな乗組員たちを預かる船長は、歓喜のシーンを見て優しくほほ笑んでいた。

 コーチ陣とグータッチした後、ベンチに戻ってくる選手と右手でハイタッチを交わした。左手には松本剛から手渡されたウイニングボールをそっと抱えた。「札幌ドームに飾ってもらおうかなと思う。最後の年に」。ファイターズの歴史を語る上で貴重な宝物になるが、みんなで共有することを望んだ。

 立野の力投、中継ぎ陣の粘りと浅間、近藤、松本剛らの勝負強い打撃がかみ合った。足踏みした分、選手たちは重圧から解放されたのかもしれない。「リーグ優勝したみたいだった。うゎ~って」と指揮官が表現するほど、ベンチ裏は大騒ぎだったという。ただ、自身は初勝利に特別な感情はなく「(現役時代と)一緒だし、あまり、やったーとかならない。そこを目指していないから」と通過点を強調した。

 監督就任会見で「優勝は目指しません」と断言したように、従来の固定概念を根底から覆してきた。斬新な選手起用、作戦、パフォーマンスなど、ファンを喜ばせる策を次々に打ち出した。プロ野球の枠を超え、話題は拡散した。

 大胆な発想と実行力を兼ね備えた新庄監督のルーツは両親にある。河原での石投げをきっかけに野球へ導いてくれた父・英敏さん(2011年に病気で他界)は人生の師匠だった。「お父さんの育て方にならい、選手を育てている気がする。背中で見せるというか」。今はプロの振る舞いを率先して示し、選手の道しるべになっている。

 そして監督就任を最初に伝えたのは、母の文子さんだった。「すぐに僕の母親と分かるくらい変わっている(笑)」と時に息子すらも圧倒される個性の持ち主。監督就任のリアクションは驚きでも、喜びでもなかった。「『おかしな采配はしたらいけんばい』と言っていましたよ。ひと言目に」と笑って明かした。

 常に思考はポジティブで、連敗中も純粋に楽しんだ。「もう少しドラマが欲しかったなと思う。負けて負けて負けて最後にひっくり返すストーリーがすごく好き。あと5つくらい負けてもよかった」と豪語。さらに「(自分は)そんな弱い人間じゃないよ。すごく逆境を乗り越えてきているから」と言い放った。周囲の声に惑わされない強さがある。誰にもまねできないビッグボス流で、新時代を切り開く。

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