ファイターズ
2022/03/12 14:59

今川 執念3ラン 九回あと1球から

今川が九回、1点差に迫るオープン戦3号3ランを左翼席に運び、笑みをたたえながらベースを回る(撮影・松本奈央)

 日本ハムの今川優馬外野手(25)が11日、敵地・マツダスタジアムで行われた広島とのオープン戦で「5番・右翼」でフル出場し、3号本塁打を含む3安打と気を吐いた。4点差を追う九回、2死一、二塁の場面で広島のロベルト・コルニエル投手(26)から左翼へ1点差に迫る3ランを放ち、球場を沸かせた。この日は東日本大震災から11年。野球ができる幸せを感じながら、勝負の2年目に突入した道産子長距離ヒッターが開幕まで突き進む。試合は5―6で敗れた。

東日本大震災から11年…天まで届け打球と情熱

 これぞ執念の一発だ。ゲームセットまで「あと1球」となった九回2死一、二塁、迎えた今川の第5打席。カウント2―2からコルニエルの133キロ変化球を捉え、左翼スタンドギリギリへ放り込んだ。

 ダイヤモンドを周りながら何度もガッツポーズを繰り出し、人さし指を突き上げて喜びを爆発。「負けている場面で、負けたくないという気持ち、それだけだった。執念を絞り出した」と白い歯をのぞかせた。

 3月6日の巨人戦以来の一発となるオープン戦3号3ラン。プロ2年目の今季は「新庄チルドレン」の1人としてここまで猛アピール中だ。札幌出身で選手兼ファンクラブ会員の今川にとって、新庄ビッグボスは幼少期から憧れの存在。「思い切っていってこい」と背中を押され、のびのびプレーすることができている。

 「みんなでレギュラーを獲ろうぜ」。そんな言葉を掛け合い、切磋琢磨できる仲間がいる。オープン戦で本塁打、打点2冠の万波は、一緒に練習をする仲。「彼の成長スピードには毎回、驚かされる。年下ですけど尊敬できるし負けられない」と刺激を受けている。

 今川が教育リーグに出場していた8、9日のロッテとのオープン戦(鎌ケ谷)では、万波が2戦連発と大暴れ。「チクショーという気持ち」と悔しがりつつ、「みんなライバルですけど、一緒にレギュラーを獲りたいし、高め合ってファイターズを盛り上げたい」と同じ志を持つ。

 長打だけではなく四回、八回ともに内野安打を放ち、3安打の猛打賞をマーク。どうしても打ちたい理由があった。東日本大震災から11年を迎えたこの日、試合前には犠牲者へ黙とうがささげられた。

 当時中学生だった今川は、テレビのニュースなどを通して、野球ができることの有り難みを実感。「被災した方々のためというか、やりたくても野球ができていなかった人たちもいる。一球一球、全力で楽しむことが大事だなと再確認した」。そんな熱い思いも打球に乗せた。

 「どんどん打ってビッグボスにアピールをして、開幕スタメンを勝ち獲りたい」と今川。チームをこよなく愛する道産子スラッガーが、持ち前の執念でその座をつかみ獲る。(中田愛沙美)

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