数々の名勝負を生んだ札幌円山球場が2年間の改修へ ファンや球児の胃袋支えた円山球場食堂の再開は?
円山球場の改修工事に伴い休業する円山球場食堂=撮影・西川薫
開場から90年 来春から大型改修工事
1935年開場の札幌円山球場が、2026年春から2シーズン、大型改修工事に入る。同時に74年の内野スタンドが完成から営業を続けてきた「円山球場食堂」も休業する。かつてはプロ野球の巨人戦や、社会人野球、高校野球の駒大苫小牧フィーバーなど、多くのプロ野球ファンや球児に親しまれてきた〝名店〟がいったん、のれんを下ろす。
食堂開業から51年。2020年に当時の運営会社から独立して引き継ぐ形で営業を続けてきたアルム食品の井上薫代表(67)は、3年後の再開へ「1年更新なんです。一応はやりますから」と営業を続ける方針だが、再開は早くても2028年。井上代表は「いやあ、来年のことも分からないですよ」と苦笑い。当時から働くスタッフも「私たちも分からない」。高齢化や、休業期間の収入、さらに老朽化した厨房の空調設備の更新費用など心配事は尽きない。
2007年、外野スタンドまで満員の円山球場
プロ、社会人、高校野球…、すべての聖地だった
日本ハムの北海道移転後、プロ野球の本拠地はプレド(札幌ドーム)を経て、北広島のエスコンフィールド北海道に移ったが、昭和から平成にかけては、札幌円山がプロアマ問わず野球の聖地だった。毎年初夏に行われていたデーゲームの巨人戦には、外野芝生席を求めて何日も前から行列ができるのが風物詩だった。社会人野球の全盛期や、2004年夏の甲子園で北海道勢として春夏通じて初めて日本一になった駒大苫小牧高フィーバーなど、名勝負とともに食堂も賑わいを見せた。
2000年7月30日のプロ野球円山球場、ロッテ対日本ハム
2005年7月24日、全国高校野球選手権南北海道大会決勝、駒苫対北照
たくぎん野球部解散の2年前に思い出が
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井上さんは40歳ぐらいから円山球場食堂で勤務。「プロ野球はもちろん、社会人もすごかった。たくぎん野球部の解散(1996年)の前の前の年がすごい盛り上がりで、思い出がたくさんあります。プロ野球よりも忙しいような感じでした。カレーは作るにも限界があってね。ルーとかご飯とか、4~500杯なんですよ。プロ野球の時は売店だけじゃ間に合わないので、2階の売店でお弁当を売っていました。お弁当だけで1000食ぐらい。雨で中止になってお弁当500食がキャンセルになったこともあります」。昨日の事のように記憶がよみがえってくる。

一番人気は「やっぱりカツカレー」
店内には今年6月に亡くなった巨人の長嶋茂雄終身名誉監督や、北海道日本ハム初代監督のトレイ・ヒルマンさん(62)の写真やサインが、所狭しと飾られている。メニューは開業当時からほぼ変わらず。一番人気は「やっぱりカツカレーが人気あります」と井上代表。昔は砂糖をこれでもかというぐらい使った甘口のカレーだったと言うが、現在は数種類のスパイスに、タマネギがたっぷり入った野菜中心の「健康的なカレー」がこだわりだ。全盛期には球場1階の食堂と、2階の出店を合わせ、カレーだけで多い日で4~500食。さらにそばやうどんなどを合わせると1000食が飛ぶように売れた。
店内に飾られているプロ野球選手のサイン
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9月18日に開幕する秋季全道高校野球札幌支部予選と、10月12日から15日まで行われる大学野球の明治神宮大会北海道代表決定戦が改修前最後の大会。「ぜひカレーライスを食べに来てほしいですね。みんなに期待されているから、なんとか生き残らないと」。最後の客一人まで、愛情を込めた一杯を提供する。