古林睿煬を支える通訳・高麗諒さんは高校のチームメート 学生時代から続く2人の〝友情物語〟
来日初勝利のヒーローインタビューで笑顔を見せる古林(中央)と高麗通訳(右)=撮影・桜田史宏
■パ・リーグ5回戦 日本ハム3―2ソフトバンク(5月1日、みずほペイペイドーム)
異国の地で新たなスタートを切った豪腕
日本ハムの古林睿煬投手(24)が来日2度目の先発マウンドに上がり、7回5安打2失点で10奪三振と好投。うれしい初勝利を手にした。
昨季、台湾プロ野球でMVPに輝いた新加入の右腕にとって、慣れない異国の地での生活。サポート役を務めているのが、高校時代のチームメートで通訳の高麗(こま)諒さん(25)だ。10年近い付き合いになる2人の間には、熱い友情物語があった。
2人の出会いは高校の野球部
出会いは、桃園市立平鎮高級中学。同校は野球の強豪として知られ、多くのプロ選手を輩出している。
東京・八王子市生まれの高麗さんは「父親が(日本と)台湾と行ったり来たりする仕事だった。海外に行ってみたら面白いんじゃないか」。身近な存在だった台湾へ野球留学することを決意し、古林と高校3年間を共に過ごした。
入学時からモノが違った右腕 「ちょっと違う雰囲気だった」
野球部は1学年20~30人ほど。「みんなすごいんですけど、グーリンはちょっと違う雰囲気だったかなと思います。ピッチャーとしてエースとして。最初はけがで出ていなかったんですけど、2年生の頃には右のエースみたいな感じで試合に出ていました」

高麗さんを温かく迎えてくれたチームメートたち
一方、高麗さんは入学当時、中国語は「ほとんどしゃべれませんでした」。ポジションは主に一塁手と外野手で「彼らと同じレベルでできるような感じではなかった」と振り返る。
そんな日々を支えてくれたのが、野球部の仲間たちだった。「みんないろんな言葉を教えてくれた」と感謝する。
「さりげなく優しいタイプ」の古林
「グーリンはフランクに声をかけてくるタイプではないけど、さりげなく優しいタイプ。友達として、席が近かった時期もある。後ろの席だったり。家に泊まりに来たりとか」。高麗さんの父が滞在していた部屋に遊びに来て、一緒にゲームをすることもあった。
帰国の際に受け取ったプレゼントは今も宝物
高校卒業時には、日本に帰国する高麗さんへ、古林がサプライズプレゼントを用意してくれた。
「みんなに呼びかけて、グーリンのチャイニーズタイペイのユニホームに全員分のサインを書いてくれて。うれしかったです。今も実家に置いてあります」。いつもは控えめな右腕の気遣いに感激した。
高校時代のチームメートから寄せられたサインが書かれた台湾代表ユニホーム=高麗通訳のインスタグラムから
ある日、交わした約束とは…
この記事は有料会員限定です。
登録すると続きをお読みいただけます。
ある日の練習中、2人はこんな約束を交わしていた。「強豪校なので先輩とか同級生は台湾のプロに行く人が多い。その中で、冗談みたいな感じで『もし日本に行ったら通訳できるの?』と。『できるんじゃない』と冗談交じりで話していたんです」
高校卒業後、古林は台湾プロ野球の統一にドラフト1位で入団。プロ入り後も、高麗さんが試合観戦に訪れ、食事を共にするなど交流は続いていた。だが、通訳のオファーについて「本当になったらうれしいし、そうなるのが夢だったんですけど、気持ちは半々でしたね」とどこか半信半疑だった。
着実に力強く成長
古林は2023年に行われたアジアプロ野球チャンピオンシップの日本戦に先発し、七回途中1失点と好投し一躍、注目の的となった。
昨年は台湾リーグで10勝2敗、防御率1.66の成績を残し、シーズンMVPを獲得。日本でプレーすることを決めた右腕は、約束をきちんと覚えていた。
正式オファーに二つ返事で快諾
契約交渉に携わった岩本賢一チーム統轄副本部長兼チーム管理統括部長が明かす。
「ファイターズ入りが決まった後に、あらためてグーリンの方から彼(高麗さん)に来てもらいたいと。彼との約束でもあるし、ファイターズ入団の条件の一つにしたいと言い切るくらい、高麗のことを信頼していると思いました」。正式オファーに高麗さんは「日本に行くなら高麗が(通訳)やってくれた方が、グーリンもいいという話で。まさかでしたね」と二つ返事で引き受けた。

心に誓った全力サポート
出会いから約10年の月日がたち、今度は高麗さんが通訳として支える番となった。
「グーリンはどちらかといえばシャイで、人見知りするタイプです。言葉が通じないのもあると思うんですけど、台湾でも話をたくさんするようなタイプではない。ゆっくりなじんできているかなと思います」。食事面でも「そばとか、うどんがおいしいと。そばは台湾にあまりない。そばが結構、気に入っているみたいです」
変わらぬ関係性 「変な言い方ですけど、ただの同級生」
2月の春季キャンプから、そばで寄り添い、新しい環境での生活をサポート。仲の良い友人として、その関係性は高校時代から変わらない。
「変な言い方ですけど、ただの同級生。日本に来てもゲームをやっています。グーリンが持っているプレーステーション5を一緒にやったり。スマホのゲームをやったり」
日本で始まった友情物語第2章
2度目の登板で初白星を手にした友を、高麗さんはこれからも全力で支える。
「試合でしっかり自分の力を出してもらえるようサポートして、私生活も不便のないようにしたいですね」。台湾から日本に舞台を移し、2人の友情ストーリーは続いていく。
