高校野球
2024/03/15 16:30

【プロになった道産子球児たち 指導者の目線】高校編 ②知内・吉川英昭監督「坂本は負けてから1人でいる時間を増やした」

町立高校の知内から初めてプロ野球選手を輩出した吉川監督=撮影・西川薫

 北海道から誕生したプロ野球選手の学生時代を見てきた指導者に話を聞く企画「プロになった道産子球児たち 指導者の目線」。高校編第2回は知内の吉川英昭監督(47)。2022年のドラフト会議で奥尻島出身左腕の坂本拓己投手(19、ヤクルト)が同校から初の指名を受けた。奥尻島出身者では佐藤義則さん(69、函大有斗-日本大)以来2人目。道内公立校からは実に15年ぶりとなる高校生の指名だった。

23年ヤクルト入団の坂本拓己投手

 坂本投手は3年夏の南大会で1回戦から準決勝まで3試合連続完投。準決勝では同じ年に阪神2位指名でプロ入りする、東海大札幌高の左腕・門別啓人投手(19)に投げ勝ち、決勝の札幌大谷戦でも先発のマウンドへ送った。坂本は支部予選から合計49イニング49奪三振。堂々の結果を残し、プロ入りを果たした。

2022年7月24日、夏季高校野球南大会準決勝、東海大札幌高戦で完投勝利を飾った知内・坂本

 

小中時代は地元でもノーマークだった

 吉川監督は15年に町立の知内高に赴任。17年から監督に就任したが、それ以前は小学校の特別学級や中学の野球部で高校に上がる前の子供たちを指導してきた。赴任前も奥尻島から知内に進学する子は多かったが、坂本に関しては「小中ではノーマークで、僕は知らなかった。奥尻の子たちがうちにたくさん来てたんで、聞いていた。奥尻の先輩たちが『知内に合うから、とにかく来いよ』って言ってくれていたけど、なかなか練習会にも来なかった」と、あまり積極的な印象ではなかったそう。

降雨中断中の準備怠り再開直後にサヨナラ負け

 1年秋からベンチ入りしたが、台頭するきっかけはエースとして迎えた2年秋の全道2回戦、士別翔雲戦。すでに最速は147キロまで上がりスカウトも注目し始めていた。試合は1-1で迎えた九回裏1死、士別翔雲の攻撃中に激しい豪雨で15分間の中断に突入。そこで「坂本が体を動かさずにいた姿を見て『まずいな』と思ったんですけど、再開後にポンポンとサヨナラ負け。野球って、その局面においては力なんて出せない時があって、そこから劇的に変わりましたね」。悔しい敗北が坂本を変えた。

1人行動を増やし考える力を付けさせた

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