高校野球
2023/08/13 22:05

クラークのエース・新岡歩輝 花巻東・佐々木麟太郎を無安打に封じるも涙の1点差敗退【夏の甲子園】

六回無死一塁、花巻東・佐々木麟太郎(右)を二ゴロに打ち取るクラーク・新岡(撮影・大島拓人)

■全国高校野球選手権第8日(8月13日、阪神甲子園球場)
▽2回戦 花巻東(岩手)2-1クラーク

140発の怪物は抑えるも 15年ぶり北北海道勢2勝ならず

 クラークのエース・新岡歩輝投手(3年)が2回戦の花巻東戦で2試合連続完投したが1点差で涙をのんだ。1-1の八回攻撃中に勝ち越しのチャンスを迎えていたところで豪雨による94分間の試合中断。そこで流れが途切れてしまった。再開後は1死満塁の好機を無得点に抑えられ、逆にその裏に決勝点を許した。注目の佐々木麟太郎一塁手(3年)との対戦は4打数無安打と抑え込んだが、15年ぶりの北北海道勢2勝はならなかった。

こらえていた涙が…

 試合終了後の整列ではこらえていた涙が三塁側応援スタンドへのあいさつが終わると、新岡の頰を伝って落ちた。「最後は自分が打たれて、自分がチャンスで併殺になっちゃって。みんなに申し訳ない」と目を真っ赤にした。

豪雨による94分間の中断が流れ変える

 八回開始と同時に甲子園に吹き始めた風がドラマを引き寄せた。1死一、二塁。8番・吉田暁登三塁手(3年)がフルカウントの場面で突然豪雨が降り注ぎ、94分間の中断に突入。新岡は主将として「準備だけはしておこう」とナインを鼓舞。再開後の攻撃に備えた。

 再開と同時に花巻東は3人目の投手をマウンドに送ったもののクラークは新岡が続投。一度冷えた肩の状態が心配されたが、「そんなに筋肉が張っているという感覚もなく、調子自体は普通のつもりで投げてました」。1死一塁で佐々木相手に、この日最速となる143キロをマーク。最後は遊ゴロに打ち取ったが、2死一、二塁から左前適時打を許し、これが決勝点となった。
 

八回2死一、二塁、花巻東・千葉に勝ち越しの左前適時打を浴びたクラーク・新岡

 

佐々木監督「(雨は)向こうに味方したかな」

 突然の雨に攻撃のリズムを寸断された佐々木啓司監督(67)。「雨に関して言えば、向こうに味方したかな。向こうには代える投手がいたが、うちにはいなかった」。大黒柱の新岡に続く投手が不在だったチーム事情を、そう表現した。

麟太郎にはプレートの一塁側ぎりぎりから

 試合には敗れたが、新岡は高校通算140発の佐々木を「理想の配球通りだった」と、完全に抑え込んだ。投球プレートの一塁側ぎりぎりを踏み、左打席の佐々木へ左右の幅を最大限に使った投球を披露。一回の第1打席は142キロの直球で空振り三振を奪うと、真っすぐを見せ球に外角に逃げていく変化球を織り交ぜ、2打席目以降は内野ゴロ三つ。直球は一度も前に飛ばさせなかった。

クラークでは1年春からベンチ入り 3度目の甲子園

 当初は北海道に来るつもりはなかったが、兄を追いかけて青森から深川へ来た。1年春からベンチ入りすると、同秋には遊撃手で全道制覇に貢献。翌春の選抜甲子園に出場。秋の新チームからは絶対的エースとして、秋季全道2連覇の立役者となった。高校ラストイヤーは、3度目の甲子園出場を果たし、悲願の甲子園1勝も果たした。大きく成長した北海道での3年間を振り返り、「一番は夏の甲子園。春とは全然違った。人の多さもあって、大勢の前でやるのも初めて。ここ(北海道)に来られて楽しくできたかな」。

「夢はずっとプロ野球選手」

 今後の進路については未定。「一回、冷静になってから考えていきたい。夢としてはずっとプロ野球選手なので、そこで活躍したいので、その夢は持ったまま野球を続けていきたい」。150キロを超える剛速球はなくても、努力と工夫次第で全国の大舞台までたどり着けることを証明した右腕。激闘で疲弊した体を少しだけ休ませ、夢に向かって再び動き始める。

 

試合が終わってスタンドへあいさつした後、うつむくきながら歩くクラーク・新岡を励ます佐々木部長(左から2人目)

 

 

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