高校野球
2023/08/08 20:00

クラーク新岡歩輝1失点完投 変幻自在に前橋商打線を翻弄 花巻東・佐々木麟太郎狩りへ意欲【夏の甲子園】

1失点完投と熱投を見せたクラーク・新岡(撮影・小田岳史)

■全国高校野球選手権第3日(8月8日、阪神甲子園球場)
▽1回戦 クラーク7-1前橋商(群馬)

3度目の正直「最高にうれしい」

 魅せる投球で甲子園初勝利―。先発したクラークの新岡歩輝主将(3年)が前橋商相手に、9回10安打1失点の完投勝利を挙げた。最速142キロの直球と多彩な変化球で相手打線を手玉に取った。自身3度目の甲子園でつかんだ初白星。新岡は「最高にうれしい」と笑顔を見せた。

 九回2死、灼熱のマウンドから投じた121球目。この日最速となる142キロの外角直球で三振を奪い、右拳を力強く握った。「ランナーが出ても、いつも通り冷静に投げることができました」と、毎回の10安打を浴びながら粘りの投球で最少失点でしのいだ。
 

九回、最後の打者から三振を奪い、ガッツポーズを見せるクラーク・新岡


変幻自在の投球、初めてナックルも投げた

 変幻自在の投球は大舞台でも変わらなかった。プレートの立ち位置、腕の高さは相手打者を見ながら器用に使い分けた。そして、公式戦で初めてナックルを投じた。五、六回に1球ずつ披露。六回のナックルでは、しっかりストライクのカウントも稼いだ。「練習試合でたまに投げていたぐらい。キャッチボールの時に遊び心で投げていたぐらいです。麻原がいきなりサインを出してきたので、そのまま投げました」と、見ている人を惹きつける投球こそが新岡の真骨頂だ。

「(足)つってもいいか、ぐらいの気持ちで投げてた」

 表情を変えることなく1試合を投げ切ったが、聖地の暑さは想像以上だった。足のつりやすいタイプだったため2年夏から対策を講じてきた。試合前に両足にテーピングを施すようになってからはつることがなくなっていたが、さすがにこの日の八回には右足がつりかけた。「いつも以上に疲れが溜まりました」と体力は確実に削られた。それでも「つってもいいか、ぐらいの気持ちで投げてました」と最後までマウンドに立ち続けた。

ピンチは「まっすぐで押した」

 ピンチではかわすことなく強気に攻めた。四回2死二塁では141キロ直球、七回2死二塁では140キロ直球で三振を奪った。さらに八回2死二、三塁の場面では右飛に仕留め、ここも137キロ直球で押し切った。「変化球を逆方向に打ってくるのもあったので、真っすぐで押しました」。打者を冷静に観察できる能力も大きな特長だ。
 

1失点完投と好投を見せたクラーク・新岡


スタンドで観戦の家族に勝利をプレゼント

 スタンドでは父・真吾さん(45)、母・葉子さん(44)、1学年上の兄・真輝さん(19)が投球を見守った。「夢はプロ野球選手」と言う右腕だが、最終的には実家の農家を継ぐこともぼんやりとだが選択肢に入っている。真吾さんは「いいんじゃないですか。規模を拡大します」と笑った。そして、聖地初勝利をプレゼントし最高の親孝行を果たした。北北海道大会から全試合観戦している真輝さんも「気持ちが強い」と勝利を確信していた。
 

クラークの戦いを見届けた新岡歩輝投手の兄・真輝さん(左手前)


佐々木と再戦「小学校から審判よりもでかかった」

 次の岩手・花巻東戦では佐々木麟太郎(3年)と〝再戦〟する。新岡は小学校、中学校時代に対戦経験があるという。小学校の頃は捕手、そして青森・つがる木造中学の頃はアンダースロー投手として対峙した。「小学校から審判よりもでかかった」と笑う。「変化球とか投げてもしっかり振ってくる。インコースの真っすぐだったり、攻めるところは攻めて向かっていきたい」と力を込めた。超高校級のスラッガーを封じて、主役をかっさらう。

関連記事一覧を見る

あわせて読みたい