冬季スポーツ
2023/04/14 05:00

雪印スキー部に注目ルーキー2人 フィンランドから逆輸入・池田龍生とジャンプ一家の良血・中村正幹

雪印メグミルクに入社した、中村(左)と池田(撮影・西川薫)

コーチ陣も新体制 岡部総監督-坂野監督、原田氏はアドバイザーに

 雪印メグミルクスキー部が、2023-24シーズンの新体制を発表した。21年4月から総監督を務めた原田雅彦氏(54)がアドバイザーに、岡部孝信監督(52)が総監督、坂野幸夫コーチ(47)が監督に昇格する。また、新人選手として蘭越町出身の池田龍生(22、慶大出)、中村正幹(18、東海大札幌高出)が入社。26年のミラノ・コルティナダンペッツオ五輪出場を目指す。

 日本人ジャンパーとしては長身の177センチ、63キロと同じ体格のルーキーコンビだ。2人は同社敷地内の「勝源神社」で将来の目標を掲げた。本場・フィンランドの留学経験がある池田は「オリンピックで金メダル」、22年北京五輪代表の中村直幹(26、フライングラボラトリー)を兄に持つ中村は「W杯総合優勝」と記した絵馬を同神社に納めた。

【池田】土屋ホーム元監督のサルパランタ氏の指導受け

 逆輸入ジャンパー・池田は、元々は複合がメインだった。蘭越中3年時に全国中学複合で2位。卒業後は「日本の中でもそんなに(クロスカントリーで)速い人はいない」と、16年8月にクロカン強化を目的にフィンランドのソトカモ高へ留学した。ところが公用語のフィンランド語習得に苦戦し、半年で自主退学した。それから18年5月に帰国するまでは「ニートでした」と苦悩の日々を振り返った。

 高校生活には挫折したが、クラブチームのボカティスポーツで競技を続け、元土屋ホームのヘッドコーチ・トピ・サルパランタ氏の指導を受けるうちに「ジャンプが伸びていった」と競技力が向上。現地ではラハティとルカでW杯のテストジャンパーを務め、「もうみんな飛んでて、自分の無力さをただただ感じてました」とレベルの高さに衝撃を受けた。

 「フィンランドは特にV字がきれいな人が多い。V字が広めな感じ。自分もそう。たぶん他のヨーロッパの国に比べて、教えることは全部言ってくれる。国でやってることを秘密にしない」と、オープンな国柄の中で実力を伸ばしていった。

 一度は競技続行を諦めたこともあった。帰国後に高卒認定を取得し、19年4月に慶大入り。複合からジャンプ1本に絞り、練習量は倍増。1年冬にU20のナショナルチーム入った。同3年時の冬シーズン開幕戦・名寄ピヤシリでは3位に入るなどして、雪印から声が掛かる存在に成長を遂げた。「もう辞めて会社員になろうと思っていた。ジャンプは好きだったけど、本当に競技を続けられる環境が少なくて」。一時はコンサル系企業の採用試験を受けるなど就職活動をしていたが、競技続行の道が開けた。

 社会人1年目。「国内1勝と海外遠征をすることと、サマーグランプリ(GP)に出ること。W杯はGPで権利を取ってと考えてます。W杯でまずは経験を積んで、その次の年でしっかり海外を回れるようになって(ミラノ)オリンピック」と青写真を描いている。

【中村】兄直幹は北京五輪代表、姉安寿は複合日本代表

 高卒ルーキーの中村は日本トップレベルのジャンプ兄弟の1人だ。兄は五輪代表の中村直幹、姉は複合日本代表の中村安寿(23、ショウワ)だ。インターハイは1年時から2連覇。3年時の昨季は3連覇を逃したものの表彰台は死守した。兄は個人でチームを立ち上げたが、本人は名門チーム入り。「楽しみ。世界で活躍している人たちと一緒に練習できるので、吸収しまくって自分も活躍できるようになりたい」と意気込んでいる。

 夏場は、兄は野球だったが中村は札幌宮の森中時代までサッカーに熱中していた。札幌大倉山小1年時から強豪のアンフィニMAKI.FCでプレー。小4からGKとして地区トレセンの常連だったそう。「フィールドの人よりも足が速かったし体力もあった」。今も欧州主要リーグのサッカーをチェックし、「キーパーだったらクルトワ(レアル)」に注目。22年カタールW杯も見ていた。

 北海道コンサドーレ札幌のDF西野奨太(18)とも対戦経験があり、札幌U-18所属で3月27日のルヴァン杯でJデビューを果たしたFW出間思努(17)はアンフィニ時代の後輩だ。もし、サッカーを続けていても大成していたかもしれない。

 高校では国内トップクラスだったが、世界レベルでは実力差を痛感した。23年1月22日のW杯札幌大会(札幌大倉山=ヒルサイズ137メートル)最終日にテストジャンパーを務めた。これまでに経験したこともない、助走速度の出ない2番ゲート。100メートルほどしか飛べず、「これで140メートルを飛ばないとやっていけないんだ」と目指すレベルを肌で感じた。

 1年目の最大目標は世界ジュニア選手権(24年3月、スロベニア・プラニツァ)。これまでに2度出場して23年の35位が最高位だ。「まず世界ジュニアで成績を残さないと、来年以降のジャパン入りが難しくなる」。同世代の世界トップに立ち、シニアでの活躍につなげていく。


【雪印メグミルクスキー部 2023-24】

部 長:太田 喜朗 副部長:坂田浩一郎 アドバイザー:原田 雅彦
総監督:岡部 孝信 監 督:坂野 幸夫 コーチ:伊東 大貴

主将:清水 礼留飛
選手:小林 潤志郎
選手:佐藤 幸椰
選手:佐藤 慧一
選手:工藤 漱太
選手:池田 龍生(新人)
選手:中村 正幹(新人)