阪口楽 復調の裏にあった心の変化「本当に自分の中で変わった」阪神・佐藤輝からの言葉も励みに…
18日の2軍交流試合・BC栃木戦、1番で先発し、1安打だった阪口=撮影・近藤裕介
高卒4年目の長距離砲
日本ハムの阪口楽外野手(22)が復調の兆しを見せ始めた。
今季は開幕から不振にあえぎ、2軍での打率は1割台中盤を行ったり来たり。深い悩みの中で、頭に浮かんだのは、たくさんの支えてくれる人たちだった。「自分のためだけじゃなく、その人たちのために頑張ろう」。考えを変えると、自然と調子が上向いていった。
どん底を味わって原点回帰
昨季は2軍でキャリアハイの11本塁打をマーク。今季はミート率向上をテーマに掲げ、「去年、高めが弱くて、今年は高めも打てるようにと思って、(打席で)上体を上げた」とフォームを変更した。しかし「それが全部、凶と出て。裏目に出て」。気付けば、出口の見えないトンネルに迷い込んでいた。
転機は、シーズンも終盤に入った8月の終わりだった。「もう失うものは何もなかったので、良くなるためにどうしたらいいのかだけ考えた。最終的には、やっぱり一発、長打を求められる選手だと思う。ここに来たら、一発(本塁打を)打つというように、気持ちの持ちようをちょっと変えた」と原点回帰を決断した。

そこからは打ちも打ったり
効果はてきめんだった。今季初の3安打をマークした8月28日の2軍西武戦を皮切りに、同30日の同ヤクルト戦で2安打、9月3日のオイシックス戦で2安打、同6日のDeNA戦で3安打と安打を量産。同14日の同楽天戦では、7月8日(ロッテ戦)以来約2カ月ぶりの4号ソロを含む4安打と爆発し、打率を今季最高の.197まで浮上させた。
「結局、やっぱり自分のポイント、ここは絶対に打つというポイントをもう一回つくろうと、そこに取り組んだら、徐々に良くなってきました。その結果、確率良くポンポンポンってヒットが出るようになっている。継続していこうかなと思ってます」
球界を代表するセ界のスラッガーに師事
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心の支えになったのは、どんな時でも活躍を信じ、手助けしてくれる人たちの存在だ。オフに合同自主トレを行った阪神・佐藤輝も、そのうちの一人。リーグ優勝やタイトル争いの真っ最中でも、常に気にかけて連絡をくれていたという。「分からないことだったり、聞きたいことを聞いたら、すぐ(返事が)来ます。ずっと、僕の打席を見てくれているんです。『最近、ヒット出てきてるやん』って言ってもらって、それはめちゃめちゃうれしかったです」と励まされている。
自主トレで一緒に過ごした時間は、かけがえのない宝物。「もう、全てにおいて勉強でしかなかったです。やっぱり違うなと思ったのは、確率良く、ずっと良い打球を打っていること。僕でいったら5球に1球、バーンって良い当たりが出るところを、輝さんは5球に4球とか。そこが一番シンプルに分かりやすいですけど、一番難しい。もう、そこが全然違う。あとは、めちゃくちゃバット振るし、めちゃくちゃいい人です」と大きな刺激を受けた。

目標は〝師匠〟との真剣勝負
毎日の日課は、佐藤輝の打席をチェックすること。「やっぱり輝さんの打席は毎日、見ています。一緒に自主トレをさせてもらってから、ずっとです」。いつか同じ1軍のグラウンドに立ち、試合で再会することが、モチベーションになっている。「もう僕はそれしか願っていないです」と力を込めた。
結果こそが最高の恩返し
稲葉監督を始め、2軍首脳陣にも常に背中を押してもらっている。18日のBC栃木との交流試合で、七回から「人生で初めて。草野球レベルです」という二塁で起用されたことも、「右も左も分からないですけど、(二塁手が)できて損をすることはない」と前向きに受け止めた。
七回から二塁の守備に就いた阪口
「(稲葉)監督だったり、バッティングコーチだったり、みんなが自分を良くしてくれようとしていることに対して、思うところがあった。ここまでいろんな人が、僕のことを考えて、やってくれていることに最近、気が付いたので。その人たちのために野球をやろうと思い出してから、徐々に(結果も)良くなった。そこが、本当に自分の中で変わった。ダメでも、ふて腐れるんじゃなくて、ちょっとずつ前向きに、取り組めるようになってきている。いろんな人が支えてくれているんだと、気付けた。やっぱり(打てなくて)もう何をやってもダメで、苦しかった時に、それを一番、感じました。だから、どんな形でも良いので、本当に早く結果を残して、その期待に応えたいです」
苦しんだ1年を、決して無駄にはしない。感謝の思いを深く胸に刻み、近い将来、エスコンフィールドで恩返しする。
