大相撲
2021/09/28 13:58

白鵬の引退 旭大星「結婚式の横綱の涙は忘れない」

横綱白鵬を目標の1人にしてきた旭大星。再入幕という名の復活を期している

 大相撲で歴代最多となる45度の優勝を誇る横綱白鵬(36、宮城野)が27日までに、現役引退の意向を固めた。数々の記録を打ち立ててきた大横綱は多くの力士に影響を与えた。元幕内の西十両2枚目・旭大星(31、旭川出身=友綱)もその一人だ。伊勢ケ浜一門の合同稽古では、これまで何度も胸を借り、プライベートでも親交があった。あこがれの大横綱との思い出を振り返りながら、再入幕への決意を新たにした。

 旭大星にとって生涯忘れることのできないエピソードがある。あの時、白鵬が流した涙は目に焼きついている。
 18年6月。旭大星は芳恵夫人と都内で結婚式を挙げた。そこで、亡き母が生前、旭大星に宛ててつづってくれていた手紙が披露された。来賓として出席していた白鵬は起立し、涙を流しながら聞き入っていたという。
 当時を述懐した旭大星は「あの横綱が自分のために泣いてくれた。本当にありがたいことです。一生、忘れません」。興奮気味に振り返った。
 土俵上では鬼だった。伊勢ケ浜一門の合同稽古では積極的に胸を借りた。歯が立たなかった。それでも横綱と肌を合わせることで「自信を持って(本)場所に臨むことができた」。18年5月の夏場所では新入幕ながら2桁10勝を挙げ、敢闘賞も受賞した。
 キャリア晩年、白鵬は満身創痍だった。その姿にも感銘を受けた。旭大星も両膝のけがに何度も苦しめられてきた。「横綱は、けがをしても確実に治して戻って来られた。万全じゃない中でも相撲を取り続けてきた」。今年7月の名古屋場所では45度目の優勝を全勝で飾った。その姿に心が震えた。
 一時代を築いた大横綱が土俵を下りる。「もちろん、寂しさはあります。でも誰もがいつかは現役を終える。自分たちの前から、いなくなるわけじゃない。ただ、お疲れさまでしたとお伝えしたい」と言葉を紡いだ。
 そして気を引き締め直した。旭大星は9月の秋場所で再び左膝を痛め、2勝4敗9休。11月の九州場所では十両下位まで番付が下がる見込みだ。だが、力強く言い切る。「もう一度、幕内に上がる」。“白鵬譲り”の不屈の闘志で復活を期す。(神馬崇司)

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